破綻している

あの人と過ごした日々を思い出せなくなっている。この間まで記憶が、すぐ隣にあった。あの人に与えられたものがたくさんあった。それは間違いなくわたしの人生を豊かにしてくれた。出会いは軽蔑でしかなかったけど、でもちゃんと数十年生き延びてきた人間として中身はあった。
あの人はスポーツ全般が好きだった。わたしはそれらにまるで興味が無く、面白さがわからなかった。けれど一緒に観て、隣で選手のことやルールなど、ずっと解説してくれたから、面白さがわかって楽しめるようになった。好きな選手もできて、応援するのが楽しかった。
あの人がいたお陰で、たまたま就いた仕事にちゃんと行けた。慣れない早起きや、毎日風呂に入ることが、一人では苦痛すぎてできなかったのに、あの人がいたお陰で頑張れた。あの人がいたから頑張れていた。
毎朝、帰りにも送迎してくれた。
でもそれは、恋の力だった。結局最後には無理していた。
あの人がいたから、地元のお祭りにも、行ったことのない夏のフェスにも、花火大会にも、行けた。旅行にも行った。車の乗り方も教えてくれた。あの人に教わった駐車のコツはとても役に立っている。
すぐ抱きしめてくれる人が側にいた。それだけで、孤独は紛れた。安心できた。幸せだった。
あの人がいてくれたお陰で、晴れの日が嬉しかった。まだ一緒にしたいことがたくさんあった。
でもあいつは頑張っている普通の子が好き。今の私は、あいつと別れた虚しさで仕事に行けなくなり休職している。あいつは自分も無職のくせに、頑張れない私などもう好きにはならない。キモい。

あいつじゃなくても、私を抱きしめてくれる人がいれば、この寂しさは紛れるだろう。必死に恋人探しをするか。笑える。あいつと毎日共に暮らしていて、歳が離れすぎていたけど、でも大好きになっていたし結婚したかった。わたしのなかで結婚は身近なものに見えていた。
でも今は、とても遠くに見える。
結婚なんてできないんじゃないかと思う。相手いないし。
あいつのお陰で、陽の暖かさを思い出した。太陽を愛せるようになった。まだ色んなことを教えてほしかった。一緒に暮らしてほしかった。あいつの不在がとても悲しい。
何も無い私を埋めてくれたね、お前の色で
私は趣味への関心も薄まり、ただただ呆けているよ
お前と一緒にまた、ハマスタに行きたかったな。
こんなに愛してしまったあとで捨てたお前が、なくなればいいのにと思うよ
私のこの感情はどこに置けばいい
お前にぶつけても、もうなにも返ってはこないだろう。抱きしめてなんかくれないだろう。
私は他の誰かに代わりを求めて、虚しいな。
以前と比べて、友達と遊ぶ機会が増えた。会社の人も話を聞いてくれる。こんなにありがたいのに、私はお前の不在ばかりに囚われて、なんも満たされない。
愛しているのに。どうすればいい。死んで欲しいのに愛している。声を聞かせておくれよ。電話をくれよ。今更、ふざけないでくれとも思う。
でもすごく寂しい。毎日が

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