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『轍』Lev.3 「地下鉄7号線(SR)延伸問題の深層」 Vol.1 2つのさいたま(西側編)


県鳥・しらこばとのオブジェ
(さいたま市緑区 2024年2月17日撮影)

「さいたま新都心」構想がもたらした浦和の分断

埼玉県の県庁所在地はさいたま市。
国道17号「新大宮バイパス」を起点から走ると、やがて首都高与野出入口が出現する。

首都高・与野出入口
(さいたま市中央区 2023年11月3日撮影)
新大宮バイパス上尾方面を眺める
(さいたま市中央区 2023年11月3日撮影)

現段階では埼玉大宮線(S5)の暫定終点となっていて、将来的には上尾道路の高速部として圏央道とつながる構想がある。

与野”出入口や埼玉“大宮”線の地名は与野市、大宮市から引き継いだもの。大宮は「さいたま市大宮区」として大宮駅周辺の地名として残るが、与野に関しては残らなかった
2001年5月に与野市、大宮市、浦和市の3市の合併で誕生したさいたま市だが、特に「浦和」に関しては若干特別な場所なのだ。

今も昔も県庁所在地の浦和

埼玉県庁の所在地は「埼玉県さいたま市浦和区高砂町」。最寄り駅はJR浦和駅で、上野東京ラインで東京駅から30分、湘南新宿ラインで池袋から20分と交通の便は良い。

首都高の下を通る新大宮バイパスに対し、県庁のある浦和市街地は本線(中仙道)沿い。嘗ては板橋宿(東京都板橋区)から船で荒川を渡り、蕨宿、浦和宿、大宮宿と中仙道を北上していた。
そんな時代から早1世紀以上が経つが、県庁所在地としての浦和の歴史は同じくらい古い

新都心とは“新しい都心”のことw

首都高・新都心入口
(さいたま市中央区 2023年11月3日撮影)
首都高入口近くに残る道界標
(さいたま市中央区 2023年11月3日撮影)

首都高は与野JCTで進路を東に変え、大宮方面へと向く。イベント会場で有名な「さいたまスーパーアリーナ」の搬入口目の前に、首都高新都心線の新都心入口がある。
新幹線高架にくっつくように佇むその姿からは、都市高速そのものの良さが滲み出る。

入口から程近くに埋まる道界標には「与野市」とあった。さいたま市中央区は旧与野市域に該当し、「新都心」も含まれるのだ。
さいたま市役所は浦和県庁も浦和と“中央”と呼ぶにはもの足りないが、旧与野市域はさいたま市の中心に位置するのだ。

「新大宮バイパス」白看板と旧式おにぎり
(さいたま市中央区 2023年11月3日撮影)

さいたま新都心構想は、東京一極集中問題の打開策として、23区の外に大規模な都市機能を作ろうという構想の一つ。
高度経済成長期にピークとなった集中傾向も、1960年代後半から80年まで落ち着いていたが、バブル期に再度増加傾向になった。

大都市圏への転入&転出グラフ
(国土交通白書2020 こちら

集中傾向が再び増加傾向に向いていたバブル真っ只中の1986年に出されたのが、「第4次首都圏基本計画」。
東京のベッドタウンとしての埼玉」だけではなく、県内で都心に変わりうる首都機能を構築する場に選ばれたのが、東京に程近い旧浦和市と大宮市だった。

『操車場の記憶』碑とさいたまスーパーアリーナ
(さいたま市中央区 2024年3月9日撮影)
碑の説明文
さいたま新都心街開きと同じ2000年に設置された
(さいたま市中央区 2024年3月9日撮影)

その2年前の1984年に業務縮小で閉鎖されていた旧国鉄の大宮操車場の跡地部分を利用する計画が出され、街づくりが行われた。

現在さいたま市の市役所がある浦和だが、2031年度に新都心へ移転することが決定。(機能的に)中央じゃない中央区が変わるきっかけになる。

それでも「さいたま」は車社会だと思う

東京一極集中の打開策として建設された新都心だったが、周辺の利便性はどうなのか。
自動車の所有において重要な駐車場の相場は中仙道沿いの地区で約11000円/月。
国土交通省の駐車場設置基準では普通乗用車で1台あたり約4坪が必要となる。

新都心のある中央区や付近の浦和区や大宮区の駅近エリアでは100万円/坪が平均で、駐車場料金は必然的に高くなる。
先程も申し上げたように、中仙道沿いはJRの移動が非常に便利な点で車社会かと言われると疑問符がつく。

しかし、さいたま市の交通は事実上「分断状態」にある。新都心のある中央区と市の東部を直接結ぶ鉄道路線は武蔵野線しかなく、他はバス路線に頼っている状態。

今回取り上げる市東部と川口、赤羽を結ぶ南北路線「埼玉高速鉄道(=SR)」は、東京メトロ線と直通運転する形で都心へ直結する。
中仙道(=国道17号)に対して、東側は岩槻街道(=国道122号)と東北道がメイン街道となる。

東北道・浦和ICは国道122号に出入口がある
(さいたま市緑区 2024年2月17日撮影)
埼玉高速鉄道・浦和美園駅
(さいたま市緑区 2024年2月17日撮影)

埼玉高速鉄道は街道に並行するように延びているが、東武アーバンパークライン・岩槻駅まであと僅かという所にある「浦和美園駅」で終点となる。

市役所が新都心へ移る以上、各方面からの交通機関は充実しているべきであろう。
大宮駅を通る東武線とつながれば、利便性は相当向上するはずだが…。

                 つづく


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