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2025年問題とAI:作業療法士が活躍するための新しい戦略 〜デイサービスにおける療法士の役割〜

皆さんこんにちは。作業療法士の内山です。今回は、デイサービスにおける作業療法の現在と、特に生成AIとの協働による新しい可能性について考えていきたいと思います。よろしくお願いします。


デイサービスを取り巻く環境の変化

2025年を迎え、介護業界は大きな転換点を迎えています。予測されていた通り、団塊の世代が後期高齢者となり、介護需要は急増しています。また、深刻な介護人材不足も現実のものとなり、ICTやAIの活用は、もはや選択肢ではなく必須となっています。

コロナ禍を経て定着したオンラインサービスは、今では当たり前のものとなり、それに加えて生成AIの活用も日常的なものとなってきました。私たち作業療法士に求められる役割も、単なる「機能訓練」の提供者から、AIと協働しながら科学的な介入を実践する「生活の再構築のスペシャリスト」へと進化しています。


進化するデイサービスの形

従来のデイサービスでは、作業療法士の経験と勘に基づいて個別機能訓練のプログラムを立案することが一般的でした。しかし、生成AIの登場により、より科学的で個別性の高いアプローチが可能になってきています。

例えば、利用者さんの基本情報(年齢、疾患名、ADLレベル、目標など)をAIに入力することで、過去の介入データに基づいた最適なプログラムの提案を受けることができます。これにより、経験の浅い作業療法士でも、ある程度の質の高いプログラム立案が可能になってきているのです。


テクノロジーと人との融合がもたらすもの

ただし、テクノロジーの導入は手段であって目的ではありません。重要なのは、それを通じて利用者さんの生活がより豊かになることです。

例えば、私たちの施設では、生成AIを活用した個別機能訓練プログラムの作成を試験的に始めています。生成AIに利用者さんの基本情報を入力すると、その方に適した運動プログラムや認知課題が提案されます。

実際の活用例を紹介します。左片麻痺の利用者さんの場合、生成AIが提案した「立位での役割活動と認知課題の組み合わせ」というプログラムを基に、実践的な介入を行いました。具体的には、立位で行う食器拭きの作業に、色や形の認識課題を組み合わせるというものです。

このプログラムの実施結果と利用者さんの反応をAIに入力すると、次のステップとして「立位時間の延長」や「二重課題の追加」といった提案が得られます。また、これまでの介入データから、3ヶ月後の予測されるADLレベルも示されます。

私たち作業療法士は、このAIの提案を参考にしながら、利用者さんの状態や反応を見て、よりその方に適したプログラムへと調整していきます。例えば、「立位での作業は15分が限度」「午前中の方が集中力が高い」といった、実践から得られる具体的な情報をAIにフィードバックすることで、次のプログラム提案の精度が上がっていくのです。


これからのOTに求められる専門性

このような変化に対応するため、私たち作業療法士には新しいスキルが求められます。特に以下の3つの能力が重要になってきています:


  1. AIリテラシー:生成AIの特性を理解し、適切な情報を入力して、有用な提案を引き出す力

  2. 臨床推論力:AIの提案を批判的に検討し、利用者さんの個別性に合わせて修正できる力

  3. データサイエンス:介入結果のデータを適切に記録・分析し、AIの学習に活かせる力

これらは、従来の作業療法の専門性に加えて求められる、新しい時代の必須スキルとなっています。


未来のデイサービスで実現したいこと

特に興味深いのは、AIが示す予後予測と実際の経過を比較検討できる点です。「なぜこの利用者さんは予測を上回る改善を示したのか」「どのような要因が目標達成を促進したのか」といった討論を、多職種で行えるようになりました。これにより、より効果的な介入方法の発見につながっています。

私が描く更なる未来のデイサービス像は、「AIと人の専門性が最適に融合する場所」です。AIが日々の記録や予後予測を支援し、私たち作業療法士はその時間を、より質の高い利用者さんとの関わりに使うことができます。科学的な介入と温かい人間関係の両立。それこそが、これからのデイサービスの目指すべき姿ではないでしょうか。


まとめ

  1. 生成AIとの協働により、より科学的で個別性の高い介入が可能になっている

  2. AIは「パートナー」であり、最終的な判断は作業療法士の専門性に基づいて行う

  3. これからのデイサービスでは、テクノロジーと人間性の最適な融合が求められる

私たち作業療法士は、新しい技術を積極的に活用し、利用者さんの生活をより豊かにする方法を探求し続けています。AIという新しい仲間を得て、私たちの可能性は更に広がっていくはずです。その未来に向けて、共に歩んでいきましょう。​​​​​​​​​​​​​​​​


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大塚久
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