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腹直筋の解剖と機能を徹底解説! 〜学生・新人理学療法士、作業療法士のためのスキルアップガイド〜

こんにちは、内川です。皆さんは腹直筋についてどのくらい知っていますか?

腹直筋は「シックスパック」として知られる体幹の中心に位置する筋肉で、姿勢保持や体幹の安定化に非常に重要な役割を果たしています。

日常生活では、前屈や起き上がり動作、物を持ち上げる際に活躍しますが、腹直筋が弱くなると腰痛や姿勢の崩れを引き起こしやすくなります。

腹直筋は、腹横筋、内腹斜筋、外腹斜筋とある腹筋群の中でも表層から見て何番目に位置しているかご存じですか?興味を持って調べるまで私はずっと間違えた階層で覚えていました。こちらも簡単に解説していきます。

今回は、腹直筋の解剖や作用、評価方法、そしてアプローチの方法までを詳しく見ていきましょう!

目次

  1. 腹直筋の解剖と作用

  2. 腹直筋の評価

  3. 腹直筋のアプローチ

  4. 筋力低下と影響

  5. 臨床ちょこっとメモ

  6. まとめ

  7. 参考文献

1. 腹直筋の解剖と作用

  • 起始:恥骨稜、恥骨結合

  • 停止:第5~第7肋軟骨、剣状突起

腹筋群の階層としては、外腹斜筋が一番表層になります。その深層に内腹斜筋、腹直筋、腹横筋の順で付着します。腹直筋の筋腹が表層に見えやすいのは、腹直筋の上にある腹斜筋は筋腹ではなく腹直筋鞘となる為です。

  • 支配神経:肋間神経(T7~T11)、腸骨下腹神経(T12、L1)

  • 作用

    • 脊柱の屈曲

    • 骨盤の後傾

    • 腹圧の上昇

    • 体幹の安定化

※胸郭が固定された状態では骨盤は後傾し、骨盤が固定された状態では胸郭を引き下げ脊柱を屈曲します。

2. 腹直筋の評価

触診:

腹部の中心を縦に走る筋腹を触診し、筋緊張や圧痛を確認します。

MMT(徒手筋力テスト):脊柱屈曲

測定肢位:

5.4.3は両膝を伸ばした背臥位

段階5の手順:

  1. 両手の指先を頭の側面につける

  2. 肩甲骨下角が浮くまで体幹の屈曲を行う

段階4の手順:

  1. 両腕を胸の前でクロスする

  2. 肩甲骨下角が浮くまで体幹の屈曲を行う

段階3の手順:

  1. 両腕をからだの前で伸ばす

  2. 肩甲骨下角が浮くまで体幹の屈曲を行う

判断基準:

3:それぞれの肢位で肩甲骨の下角が浮く所まで体幹を持ち上げられる

測定肢位:2.1.0は膝屈曲位での背臥位

段階2、1、0の手順:操作1

  1. 上肢を体の体側におく

  2. 白線の上に両手の4本指を置き腹筋を触知する

  3. 頭を上げるようする

段階2、1、0の手順:操作2、3

  1. 上肢を体の体側におく

  2. 白線の上に片手の4本指を置き腹筋を触知し、もう一方で頭を支える

  3. 頭を上げるようにし、胸郭の凹みがある

  4. 咳をしてもらい収縮を確認する(操作3)

判断基準

  • 2:頭が上がる。胸郭の凹みが起きる。咳が出せる。

  • 1:筋肉の触知のみができる

  • 0:筋収縮が触知できない

3. 腹直筋のアプローチ

ストレッチ:

腹直筋の柔軟性を高めるためには、脊柱の伸展(反る動き)を行うストレッチが有効です。

腹臥位で肘を立て、徐々に手掌での支持に変え肘を伸ばします。腰部痛に留意し、気持ちがいいところまで腹部の伸張を感じましょう。

筋力強化:

基本的にMMTの結果にそって、上肢の位置を変えて上体起こしトレーニングを行いましょう。

4. 筋力低下と影響

腹直筋の筋力低下は、体幹の安定性が損なわれ、反り腰等姿勢の崩れにつながります。デスクワークやテレビを見ている際の円背姿勢により、腹直筋が常に短縮位となり硬くなる原因となります。

5. 臨床ちょこっとメモ

  • 腹直筋が過度に緊張すると、骨盤の後傾が強まり、腰椎の前弯が減少します。

  • 腹直筋の過度な緊張により脊柱の生理的な弯曲が少なくなり、椎間板に部分的な負荷がかかりやすくなります。

  • 腹直筋が弱化すると、腰椎が前弯しやすくなり、腰方形筋や多裂筋、脊柱起立筋が緊張しやすくなります。

  • 腹直筋は咳とも関連し、腹腔内圧と胸腔内圧を高めることで力強い咳を行うのをサポートします。

  • 痰の貯留や誤嚥による肺疾患の予防に、腹直筋は重要な役割を果たします。

6. まとめ

① 解剖と機能

腹直筋は、体幹の中央に位置し、主に脊柱の屈曲や骨盤の後傾、腹圧の上昇、体幹の安定化に関与する筋肉です。起始は恥骨、停止は第5~第7肋軟骨と剣状突起に付着しています。腹筋群の中では、外腹斜筋、内腹斜筋、そして腹直筋の順で表層に位置し、表層に現れるのは腹直筋鞘のためです。脊柱を前に曲げる役割があり、姿勢保持や体幹の安定に重要です。

② 評価とアプローチ

評価には触診やMMT(徒手筋力テスト)が用いられ、体幹を屈曲させて筋力を確認します。MMTでは、腕の位置を変えて段階別に評価し、肩甲骨の下角が浮くかどうかで筋力を測定します。
アプローチとしては、ストレッチで腹直筋の柔軟性を高める方法があり、反る動きで筋肉を伸ばすことが推奨されます。また、筋力強化では、MMTの結果に基づいて上体起こしトレーニングを実施します。

③ 筋力低下の影響

腹直筋の筋力が低下すると、体幹の安定が損なわれ、反り腰等姿勢の崩れが生じやすくなります。日常的なデスクワークや円背姿勢により筋肉が短縮し、腰痛の原因となることがあります。腹直筋の弱化は腰椎の前弯を強調し、他の筋肉に過度な負担をかけることもあります。

今回記載したものはあくまでも筋単体のことです。実際の治療においては、他の体幹筋との協調や姿勢全体を考慮することが大切です。皆さんも一緒に解剖と評価を学び、患者さんや利用者さんの生活を支えましょう!

より詳しく実践的に学びたい方はこちら ↓

【解剖が苦手な方限定】 実践!! 身体で学ぶ解剖学(筋肉編)

7. 参考文献

  • 新・徒手筋力検査法 原著第10版

  • プロメテウス解剖学アトラス 解剖学総論運動器系 第3版

  • 脊柱理学療法マネジメント

  • 基礎運動学 第6版補訂


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大塚久
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