痛みの多面性を理解する 〜科学的根拠に基づく痛みの基礎〜
こんにちは、理学療法士の赤羽です。今まで、痛みの定義について(痛みを多角的に捉えるBPSモデルを用いた疼痛の理解 〜科学的根拠に基づく痛みの基礎〜)と、生物心理社会モデルについて解説してきました。今回は、痛みの多面性について詳しく解説していきます。
痛みと一言で言っても、様々な要因が関係しています。私は痛みについて勉強するまでは、痛みは単なる感覚というイメージを持っていました。しかし、痛みは感覚としての側面以外にも、多くの側面があり、多面性を有しています。
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痛みの多面性[/caption]
痛みの多面性には、「感覚的側面」だけでなく、「情動的側面」や「認知的側面」があります。これは、受容器で検出された刺激が複数の痛み関連脳領域に伝えられるためです。つまり、痛みは脳内で処理・構築されていると考えられます。
感覚的側面
「感覚―識別の側面」とも言われます。痛みの局在や強度、持続性などを識別する身体的な感覚のことです。脳領域としては一次体性感覚野や二次体性感覚野が関わります。
情動的側面
「意欲―情動の側面」とも言われます。痛みによって不安、抑うつ、恐怖など不快感が引き起こされます。これらは行動意欲に影響することがあります。脳領域としては島皮質や前帯状回、扁桃体が関わります。
認知的側面
「認知―評価の側面」とも言われます。過去に経験した痛みの記憶、注意、予測などに関連して身体にとっての痛みの意義を評価します。つまり、痛みに対してどの程度注意を向けているか、痛みを予測しているかなどによって痛みの感じ方が変わる可能性があります。脳領域としては前頭前野や頭頂連合野が関わります。
リハビリ職種にとっての意義
これらの側面が痛みに対してどのように関係しているのかを理解することが大切です。例えば、痛みを感じる(感覚的側面)、その後痛みに過剰に注意を向けてしまう(認知的側面)、そして不安感や抑うつが引き起こされる(情動的側面)ことで、疼痛が長引く可能性があります。つまり、それぞれの側面が相互に関係しあっているのです。
リハビリテーション専門職は、痛みの多面性を理解することで、対象者に対してどの側面が強く影響しているのかを評価し、考えることができます。これにより、リハビリ介入の内容もより個別性が高まる可能性があります。また、コミュニケーションにおいても多面性を考慮した対応をすることで、対象者は自分の痛みを理解・共感してくれていると感じ、安心感を得ることができるでしょう。これは信頼関係の構築にもつながり、認知的側面や情動的側面にも良い影響を与える可能性があります。
まとめ
今回のコラムのポイントを3つ挙げてみました。
痛みには多面性があり、感覚的側面・情動的側面・認知的側面があります。
痛みは脳内で処理・構築されている。
痛みの多面性を理解することで、対象者に対する関わり方を見直すきっかけとなる。
みなさんもコラムを読んで、自分なりのポイントを3つ挙げてみてください。
復習問題
問:痛みの多面性に含まれる側面はどれですか
感覚的側面、運動的側面、情動的側面
感覚的側面、情動的側面、認知的側面
感覚的側面、運動的側面、認知的側面
感覚的側面、運動的側面、情動的側面、認知的側面
情動的側面、運動的側面、認知的側面
答え:b) 感覚的側面、情動的側面、認知的側面
疼痛は感覚的側面、情動的側面、認知的側面が相互に関わり合っています。
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