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ストレスと疼痛の密接な関係 〜科学的根拠に基づく痛みの基礎〜
こんにちは、理学療法士の赤羽です。疼痛について解説するシリーズの第15回目です。今回は、臨床で重要となるストレスと疼痛の関係性について詳しく解説していきます。
はじめに
リハビリテーション現場では、明確な原因が特定できない疼痛や、症状が長期化するケースに遭遇することがあります。そういったケースでは、ストレスが大きく影響していることが少なくありません。
ストレスと疼痛の関連性とは?
ストレスと疼痛には密接な関連があることが研究で明らかになっています。興味深いことに、急性のストレスは「ストレス誘発性鎮痛」という現象により一時的に痛みを軽減させます。一方で、慢性的なストレスは疼痛を増悪させる傾向があります。
リハビリ現場で考慮すべき3つのストレス
心理的ストレス
不安や抑うつ
社会的プレッシャー
人間関係の問題
生理的ストレス
睡眠不足
過労
不適切な食事
運動不足
環境的ストレス
気温や湿度の変化
騒音
職場・家庭環境
これらは患者さんの身体と心に負荷をかけ、疼痛の感受性を高める可能性があります
ストレスが疼痛に影響を与えるメカニズム
1. 神経系の過敏化(中枢感作)
ストレスが持続すると、交感神経系とHPA軸(視床下部-下垂体-副腎系)が過剰に活性化されます。これによりコルチゾールやアドレナリンの分泌が増加し、痛みを伝達する神経回路が過敏化して痛みの閾値が低下する可能性があります。
2. 炎症の増加
ストレスは炎症性サイトカイン(IL-6、TNF-α)の産生を促進し、末梢神経や中枢神経における炎症を引き起こします。これにより疼痛の感受性が高まります。
3. 筋肉の緊張
ストレスによる筋緊張は、筋内の血流低下や代謝産物の蓄積を引き起こします。これが肩こりや緊張型頭痛などの筋骨格系の疼痛につながります。
リハビリテーション現場でのアプローチ法
1. 身体的アプローチ
リラクゼーション法の指導
呼吸法
漸進的筋弛緩法
姿勢・動作指導
負担の少ない動作パターンの習得
適切な姿勢の維持方法
2. 心理的サポート
傾聴と共感的コミュニケーション
患者さんの話に耳を傾ける
共感的な態度で接する
「理解されている」と感じることで心理的負担が軽減します。
教育的アプローチ
ストレスと疼痛の関係性の説明
セルフケアの方法指導
3. 環境調整
個々の患者さんに合わせたリハビリペースの設定
リラックスできる環境づくり
必要に応じた他職種連携
まとめ
ストレスと疼痛の関係を理解し、適切に介入することは、リハビリテーションの質を高めるだけでなく、患者さんの生活の質向上にもつながります。今回のポイントを3つにまとめてみました。
疼痛とストレスは関係しており慢性的なストレスは疼痛を増悪させる可能性がある
生理学的には中枢感作や炎症、筋緊張が疼痛に影響する。
他職種連携しつつ身体的アプローチや心理的アプローチ・環境調整を行いリハビリテーションの側面から患者さんのストレス軽減を図る。
確認問題
以下の問題で理解度を確認してみましょう:
Q1: ストレスと疼痛の関係について、正しいものはどれですか?
急性ストレスは必ず疼痛を増悪させる
慢性的なストレスは疼痛を軽減する
急性ストレスには一時的な鎮痛効果がある
ストレスと疼痛には全く関連性がない
正解:c)
解説:急性ストレスには「ストレス誘発性鎮痛」という現象があり、一時的に痛みを軽減させる効果があります。
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慢性疼痛に対する痛み・神経の科学的根拠をもとにした末梢神経への徒手介入法 〜DNM(Dermo Neuro Modulating)〜 BASICコース
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