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【今更聞けない用語解説】国民総幸福量(GNH:Gross National Happiness)

1. 国民総幸福量(GNH)とは?


国民総幸福量(GNH)という言葉、聞いたことがありますか?


GNHは「Gross National Happiness」の略で、直訳すると「国民の総合的な幸福量」を意味します。


これは、1972年にブータンの第4代国王、ジグミ・シンゲ・ワンチュクが提唱した概念です。


物質的な豊かさだけでなく、精神的な幸福も国家の目標とするべきだという考え方です。


経済的に豊かでも心の豊かさがなければ本当に幸せとは言えませんよね。


ブータンの国王は、このように「経済成長よりも心の幸福」を重視する姿勢を持っていたのです。


彼の考えが現代のブータンの政策全体に深く反映されているというのも興味深い話ですね。


2. GNHの4つの柱


GNHは4つの柱(ピラー)で構成されています。


これらの柱は、ブータンの幸福政策の骨組みを形成する重要な要素です。



持続可能な社会経済開発ブータンでは経済成長を全く無視するわけではありません。



持続可能な形で、社会全体が豊かになることを目指しています。


単に「経済成長すれば良い」というのではなく、「未来に向けても続く成長」を重視しているのです。



環境保護自然環境を大切にすることも幸福の一部と考えられています。


例えば、美しい山々や緑の森林を次の世代に引き継ぐことが、ブータンの大切な目標です。



伝統文化の復興文化は人々のアイデンティティを形成する重要な要素です。


ブータンでは、昔から伝わる伝統や習慣を守ることが、個々人の幸せに繋がるとされています。



④ 善い統治: 良い政治がなければ、人々の幸福も実現しません


透明で公正な政策決定が行われ、国民が信頼できる政府を築くことも、GNHの重要な柱です。



3. GNHの9つの指標

GNHはさらに9つの具体的な指標を持ち、幸福を様々な角度から評価しています。


これらの指標により、生活の質がより具体的に測られるのです。


心理的幸福: これは「心の健康」を意味します。


自分がどれだけ満足しているか、ストレスがないかなど、精神的な側面から幸福を測ります。


時間の使い方とバランス: 仕事とプライベートのバランスは、幸福に大きな影響を与えます。


例えば、働きすぎで家族との時間が取れないと、どれだけお金があっても幸せとは言えません。


文化の多様性と復興: 地域の伝統や文化が大切にされているかどうかも、幸福の一部です。


自分の文化に誇りを持ち、それを次世代に伝えていくことが重要とされています。


地域の活力: 地域社会のつながりが強いほど、人々は安心して暮らせます。


お互いに助け合うコミュニティがあることが、人々の幸福を支える要素となります。


環境の多様性: 自然環境が豊かであることが、人々の生活の質に影響を与えます。


美しい自然の中で暮らすことで、心も癒されます。


良い統治: 政治がどれだけ国民の声に耳を傾け、透明で公正な運営を行っているかを評価します。


健康: 健康であることは、幸せに生きるための基本です。


医療の充実や、健康を維持するための環境が整っているかが評価されます。


教育: 学びの機会があることも幸福の大切な要素です。


知識を得ることで、自分の可能性を広げることができます。


生活水準: 経済的に安定していることも、もちろん大切な要素です。


しかし、GNHではこれを「すべて」ではなく、9つの指標のうちの一つと捉えています。


4. GNHが世界に広がる

GNHはブータンだけのものではなく、世界各国にも影響を与えています。


日本でも、東京都荒川区や浜松市が独自の「幸福度指標」を導入し、地域の幸福を高める取り組みを行っています。


例えば、荒川区の「GAH(Gross Arakawa Happiness)」や浜松市の「GHH(Gross Hamamatsu Happiness)」は、その地域に特化した幸福の指標を設定し、地域住民の生活の質を向上させるための指針となっています。


このように、GNHの考え方は「経済成長だけではない幸福」を追求するモデルとして注目されています。

実際、日本でも少しずつその考えが広まり、地域ごとに幸福を測る動きが進んでいるのです。


5. GNHと仏教の関係

GNHの理念は、ブータンの文化的背景に深く根ざしています。


特に、仏教の哲学や倫理的な考え方がGNHに強く影響を与えています。


仏教では「中道」という考えがあり、物質的な豊かさと精神的な豊かさのバランスを取ることが重要とされています。


GNHもまさにこの「バランス」を重視しており、物質だけでなく、心の豊かさを追求することが国の発展において重要であると考えています。


例えば、ただ経済が成長すれば良いわけではなく、人々の精神的な幸福がともなってこそ、真の発展があるという考え方です。


このような仏教的な価値観が、ブータンの政策に反映され、GNHという形で実現されているのです。


6. まとめ

国民総幸福量(GNH)は、物質的な豊かさだけでなく、精神的な幸福や文化、環境など、さまざまな側面から「真の幸せ」を追求する概念です。


ブータンから始まったこの考え方は、世界中に広がり、日本でもその影響を受けて地域の幸福を高める取り組みが行われています。


私たちも、GNHの考え方を参考にしながら、ただお金を稼ぐだけでなく、自分や周りの人たちの「心の幸福」を大切にすることを考えてみても良いかもしれません。


きゅうさんの本棚:さらにGHNやブータンに興味をお持ちの方へ 

この記事をお読みいただき、さらにGHNやブータンに興味をお持ちになった方は、GHNやブータンに関する本をお近くの書店やオンラインストアでおすすめの本を手に取ってみてください。

きっと理解が一層深まることでしょう。



参考:
在東京ブータン王国名誉総領事館

https://bhutan-hcg.org/about-bhutan/culture/gnh/

幸せ経済社会研究所
https://www.ishes.org/keywords/2013/kwd_id000756.html


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