【PREP書評】夜と霧【ヴィクトール・E・フランクル】
読書の世界をもっと楽しみたい、でも何を読めばいいのかわからない――そんなあなたのために、「PREP書評」をご提供します。
この企画では、私が読んで勉強になった本の概要やポイントをわかりやすく紹介し、皆さんの読書、noteやブログの執筆に役立ててもらうことを目指しています。
具体的には、PREP手法(Point(主張)・Reason(理由)・Example(具体例)・Point(再主張))を使って、本の魅力を分かりやすくお伝えします。
今回ご紹介するのは、ヴィクトール・E・フランクルさんの『夜と霧』です。
【Point】
「どんな過酷な状況でも、人間には“生きる意味”を見出す力がある」
フランクルが描く『夜と霧』の最大のポイントは、どんなに苛酷な環境に置かれても、人間には自らの生きる意味や精神的自由を見つけ出す力があるということです。
強制収容所という極限状況を舞台に、理不尽な扱いを受けながらも、そこに「生きる理由」を見いだす人々の姿が、読む者の心を深く揺さぶります。
ときにはガス室という非人道的な行為をも生み出すのが人間です。
しかし同時に、死の間際まで毅然として祈りを捧げることができるのもまた人間。
本書を通じて、その“人間とは何か”という矛盾の真髄を突きつけられることで、私たちも自分自身に問いかけるきっかけを得られるはずです。
【Reason】
「フランクル自身の過酷な体験が、人間の本質を映し出すから」
なぜ、この一冊が「どんな過酷な状況でも、私たちは生きる意味を見いだせる」という主張を強く支持しているのか。
それは、著者であるヴィクトール・E・フランクル自身が、実際に強制収容所での体験を経て生き延びた当事者だからです。
本書の原著が1947年に初版として出版され、日本語版も1956年以降に長く読み継がれてきたのは、その“真実味”にほかありません。
彼は収容所での体験を、精神医学的な視点と自らの感性を交えながら、克明に記録しています。
そこでは、人間が極限にさらされたときに感じる「恩赦妄想」や、生き延びるために一時的に心を凍結させる自己防衛機能、ユーモアで平静を保とうとする心理などが、非常にリアルに描き出されているのです。
だからこそ、読者は「絶望のどん底でも、人間らしさを失わずに生きる方法はあるのだ」という強い説得力を受け取ることができます。
【Example】
「どんな環境でも“どう振る舞うか”は自分次第で決まる」
本書を読んで特に私が印象に残った言葉は、「人は環境によってすべてを決定されてしまうわけではない。どんな状況にあっても、その状況に対してどのように振る舞うかという精神の自由だけは、だれにも奪うことができない」というメッセージです。
これは私の長年の人生経験でも、ものすごく感じるところがあります。
たとえば、同じように恵まれない生い立ちを持った人でも、それをバネにして努力し、成功を収める人がいる一方で、周囲に敵意をむけ、ひねくれた道に進んでしまう人もいます。
私自身も、自分がつらい環境に置かれたとき、「だったら何ができるだろう」「自分はどうありたいのか」を考えることで、ネガティブな気持ちから抜け出せたことが何度もありました。
フランクルが収容所内で見聞きした光景も、まさにそれを象徴しています。
絶対的な苦痛の中で、希望を見失う人と最後まで心のよりどころを持ち続ける人とに分かれていく。
その分かれ目は「誰にも奪えない精神の自由」に気づき、それをどう活かすかだというわけです。
この具体例を知ると、自分も「どんな状況に置かれても、“正しく振る舞う人間”でありたい」と強く思わされます。
本書のエピソードが説得力をもって迫ってくるのは、フランクルが実際に生死の境をさまよいながら、そうした心理を克明に描き出しているからこそなのでしょう。
【Point(再主張)】
「極限下でこそ見えてくる“人間の尊厳”を学び取ろう」
最後にもう一度強調したいのは、『夜と霧』が単なるホロコーストの恐ろしさを伝える本ではない、ということです。
もちろん、収容所で起こった凄惨な出来事は、私たちに歴史の悲惨さを決して忘れてはならないと突きつけてきます。
しかし、この本の核心は「そのような極限下でも、人間はどのように自らの尊厳を守り、どう生きる意味を見出すのか」という問いにこそあります。
自分にとって大切な人の存在や、まだやり遂げていない使命、あるいは美しい自然やユーモアに触れる瞬間など、どれだけ小さく見えるものでもいい。
そこに希望を感じられたとき、人は「生きる意味」を失わずに進んでいけるのだ、とフランクルは伝えてくれます。
それは決して遠い過去の話ではなく、現代を生きる私たちにもじゅうぶん当てはまる教訓ではないでしょうか。
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