【今更聞けない用語解説】人間の安全保障(Human security)
1. 人間の安全保障とは?
人間の安全保障とは、どのようなものなのでしょうか。
伝統的に「安全保障」といえば、国と国の戦いから自分の国家を守ることが中心でした。
しかし、冷戦の終結を機に、国家間だけでなく、そのほかの主体の安全を考える必要性が高まってきました。
そこで登場したのが「人間の安全保障」という考え方です。
この概念は、国連開発計画(UNDP)が1993年に発行した「人間開発報告書」で初めて提唱されたものです。
具体的には、貧困や感染症、自然災害など、国家の枠組みだけでは対応しきれない問題に取り組むことを目指しています。
2. 新しい脅威
冷戦の終結後、ルワンダ、カンボジアなどで起こった内戦や人道危機に人々の関心が集まりました。
例えば、ルワンダではジェノサイド(大量虐殺)により国家が崩壊しました。
こうした状況の中で、「国家が国民を守れない時、誰が守るのか?」という問いが生まれ、人間の安全保障という考え方が必要とされたのです。
これにより、国家だけでなく、地域社会や個人レベルでも安全を確保する重要性が強調されました。
3. 人間の安全保障の特徴
人間の安全保障の最大の特徴は、「国家以外の主体の安全」を重視している点です。
これまでの伝統的な安全保障は、国の領土や国境を守ることが中心でした。
しかし、「人間の安全保障」では、国民、社会、個人など「非国家主体」と呼ばれるものに焦点を当てています。
例えば、貧困や感染症(コロナなど)、環境問題、人権侵害など、国家だけでは解決が難しい脅威にも対応することが求められます。
「恐怖と欠乏からの自由」や「尊厳を持って生きる自由」といった基本的人権を確保することが非常に重要です。
これらの脅威に対処することで、人々がより安心して暮らせる社会を築くことが目的となります。
4. 人間の安全保障の具体例
ここで、具体的な例をいくつか紹介します。
例えば、新型コロナウイルスのパンデミックは、国家だけで解決できる問題ではありませんでした。
コロナウイルスを防ぐためには、国が単独で取り組むだけでなく、国際的な協力が欠かせませんよね。
各国は情報を共有し、医療資源を分かち合い、ワクチンの開発と配布において協力しました。このような連携がなければ、パンデミックの収束はさらに困難だったでしょう。
また、難民問題も同様です。
紛争や迫害から逃れてきた人々を受け入れるには、受け入れ国だけでなく国際社会全体の協力が必要です。
難民の保護や支援は、一国の努力だけでは限界があります。国際的な支援と連携がなければ、難民の基本的人権や生活環境を確保することが難しくなります。
このように、人間の安全保障は私たち一人ひとりの生活に深く関わっているのです。
5. 人間の安全保障の未来
今後、人間の安全保障の考え方はますます重要性を増すでしょう。
地球温暖化による自然災害の頻発や、経済格差の拡大など、私たちの生活に影響を与える脅威は増え続けています。
これらの問題に取り組むためには、国際的な協力だけでなく、地域社会や個人のレベルでも積極的に行動することが求められます。
例えば、災害時に地域住民同士で助け合ったり、経済的に困っている人々を支援する取り組みが、人間の安全保障の実現に繋がります。
このように、一人ひとりが「誰かの安全を守る」という意識を持つことが、より良い社会を築く鍵となります。
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