善とは?悪とは?バビロンに想う。
PSYCHO-PASSを全話、映画まで観終わると、途端に始まるPSYCHO-PASSロス(笑)。
次に何を観よう、とおすすめ見てたら気になって観始めたのが、バビロン。
ネタバレになりますので、未見の方は読まれませぬよう。
強制捜査から始まる物語
いきなり、製薬会社への検察の強制捜査。
薬の関係で不正があったとのこと。
検察が舞台の、事件ものかと思ったら、大間違い。
まさかの、哲学ですよ!!倫理ですよ!!
主人公は正崎善。正義が人間になったような名前に恥じないくらい、やり手の検事。
補佐官は文緒。事務職員だけれど、将来的には検事になりたいと思っている、将来有望な若者。この文緒が可愛くて、推しキャラになるかなあなんて観てたらとんでもない事になってしまった!
1話目に推しキャラが自殺する物語
そんなことってある?
推しキャラにしようと思ってた文緒が自殺してしまった。
しかも、検事を目指すって話した後だよ!!
あり得ない。
だけど、ちゃんとメッセージで正崎に遺書を送って死んでいる。
怪しい女の存在
文緒は、政治家の秘書が、建設業協会のトップにあてがった女を追跡していた。若く、正義感の強い文緒は、若い女性を政治の道具に使われることが許せない。
しかし、正崎は、政治に色はつきものだ、耐えろと指示。彼女の証言が取れれば突破口になるからだ。文緒はその女とコンタクトを取ったと思われた後、自殺していた。
後日、正崎は親友の九字院、半田の協力により、政治家の秘書が連れてきた女が、ゴルフコンペの客の宿泊する部屋へ入るのを確認する。
この女の証言が取れれば…、焦る正崎は、翌日の朝この女に任意同行を求め、事情聴取を図る。
この女は、調書へのサインと引き替えに正崎の話を聴きたいという。
彼女の質問に正崎は戸惑いながら答えていく。
セックスは善いこと?では、避妊は善いこと?
子どもを持つことは善いこと?子どもを持たないのは悪いこと?
じゃあ、人を殺すのは悪いこと?
正気と思えない女の言動に振り回された挙句、事務官を懐柔され、席を外した隙に逃げられてしまう。
新域長選挙で当選した齋が本当に目指したもの。
新しい時代。齋が打ち出したのは、「死」を赦す価値観。
政治や宗教や道徳で、死は怖いもの、いけないこと、悪いこと、そう思わされていた。
死は、怖くない。自分で選択できるものであり、悪くない。
そう価値観を変えること。
自殺した大学教授、因幡が作ろうとしていた薬は、自殺薬だった。
齋は、新域での「自殺法」の成立を宣言する。
新域の庁舎屋上に64人の男女が立っている。
彼らは、喜びを享受するかのように、次々に飛んでいく。
失踪していた事務官の姿もその中にいた。
ズレていた、・・・俺は、ズレていた・・・。
人は皆、死にたくないと思っていた。死にたくないのに、自殺させられたと思っていた。
彼らが、自ら進んで死を選んでいたとしたら・・・・。
女の正体
当選した齋が、連れてきた女。
彼女とひとつの部屋に居れば、男は皆彼女の虜になり、言いなりになってしまうという。
ようやくこの女の正体が掴めた。
女は、複数ではなく、たった1人。
曲世 愛(マガセ アイ)だ。彼女は、洋服を纏うように風貌を変えることができる。
彼女の叔父に話を聞くことができたが、彼女は、その姿と声、仕草だけで見たものの心を奪う、触れることもなく、欲情させられ、その身体に入って来て犯される、とても恐ろしい能力を持つ女だった。
「彼女は悪い人間なのだ。インモラルな。」
自殺とエクスタシー
正崎の友人として、捜査本部に加わっていた九字院。
齋と妻子を別れて保護するため、妻子側に付いていたはずの九字院は、無線を取られ、右足を撃ち抜いた血まみれの姿で正崎の前に立つ。
齋の妻と思われていた女は、曲世愛だった。
九字院も曲世の毒牙にかかってしまったのだ。
九字院の命と引き換えに、ひとつ分かったことがある。曲世に囁かれた人物は、死を迎えることにエクスタシーを感じるらしいということである。
いやこれな、わたしも思ったさ。マジやばいよね。
ありゃ無理でさ。とてもじゃないけど、まともじゃいらんねえ。
「曲世!曲世なのか!?」
たぶんね…。それしか言えないでしょうよ。
「九字院…曲世に何をされた?」
ここをね…。耳元でそっとね…。話すんですよ。
それっきりで…もう…ダメにされちまったみてぇで。正崎さんっ!…
「起きるな、九字院!」
起きますよ…用があってここまで来たんですから…。
無線も取られちまって、何とか正崎さんに伝えなきゃって、脚撃ってまで必死で来たんですからさぁ。
何しろ正崎さんは数少ないあたしの貴重な友達なもんでね…。
逃げるんですよ…。
「何だと…?」
全部中止して、一刻も早くこの場から逃げるんですよ。捕まえようなんて思っちゃいけねぇ。これから二度と関わっちゃいけねぇ…。
ありゃ、人間が相手にできるようなもんじゃねぇですよ。
「何を言っているんだ…お前…。」
わかってくださいよ…正崎さん。あたしとあんたの仲でしょうが。
正崎さんと向こうで会いたくないですからねぇ。
「馬鹿野郎!出血は多くない。脚に一発くらいで死ぬか。
虎尾管理官に報告を。」
正崎さんも…わかるでしょ!男ならさぁ。あの感じですよ…。
セックスの…あの感じ…。
「何を言っている…!」
もっと我慢して…もっと続けて…と思いながら、それとは真逆に…早く…早く出したいっていう…あれ。まさにああいう感じですよ…。
それも…気持ちの良いもんでしょ…。その先に…例の一線があるんです。
そこを超えると…溢れちまうっていう…。最後の防波堤ですよ…。
でも、超えたら…誰でもわかるでしょ。
まだ溢れてなくても…あぁ、もう無理だ…。
こいつはもう出ちまう、なんてわかるでしょ…。
終わったってことだけは、はっきりわかるでしょ。
ほんと…あれ…なんですっ。
「おい!九字院…!!」
正崎さん…。わたしは、伝えましたよ…。(満面の笑みで頭を撃ち抜く)
2人の会話を切り出すとこんな感じなんだけど、正直なところ、男でないわたしにはわかりづらい。しかし、コレ観た時、BLじゃねえよな、でも美味しいよな、(櫻井さんだしな・・・)って一瞬思ってしまった。
男じゃないから…。俺にはわからねえよ!九字院!!(心の叫び)
男のみなさまにはお分かりいただけるのだろうか。
この、曲世愛の禍々しさを。
射精の気持ちよさであの世へ逝ける訳ですよ。知らんけど。
女性の自殺者もいるということは、女性もおんなじ効果があるんだろうな。うまく想像できんけど。
その後、虎尾管理官をはじめとした捜査官全員が、自身の頭を撃ち抜いた死体を見たとき、正崎は悟る。
64人の飛び降りた者達も、通りすがりに曲世に何かを囁かれただけに違いない。曲世・・・許せねえ。
ところが、文緖の後任の事務官の瀬黒がどこにもいないわけですよ。
瀬黒は、曲世にさらわれてしまった。
文字通り最悪の展開に
一旦執務室に戻った正崎に、瀬黒からのメッセージ。
この回、前半が九字院の最期で、後半がこれから始まる最悪な殺人ショーですよ。よく地上波で流れたよ。
メッセージに書いてあるアドレスに繋ぐと、そこには下着姿で目隠しをされて手足を繋がれた瀬黒が。
そして、曲世はマーカーで、瀬黒の身体に点線を書いていく。
この点線は・・・・!
わたし、わかって欲しいんです。正崎さんに。
ねえ、正崎さん。わたしたちってそんなに変わらないわ。
わたしが今やろうとしているコトってとても悪いコトなんです。
だから、正崎さんはきっと止めろと言うんでしょうね。
だって悪いコトだから。
(おいおい、瀬黒の首にも横に点線描かれてるよ!!)
ここで、車に飛び込んで自殺した捜査員のポケットに残された謎の領収書を思い出す正崎。
領収書にあった品物は・・・・・・・斧だ・・・・・・・・・・・・・。
善人の正崎さんなら正しくないことを止めろと仰るわ。
でもわたしもわかってます。正しくないって。
ね?わたしたち思っていることは全く同じなの。
これって正しくないわ。凄くよくないわ。
とってもとっても、悪いことだわ。
だから、わたしと正崎さんが違うのはたったひとつだけ。
もうよせーっ!!やめろッ!!
わたし、悪人なんです。
わたしたちの違いって、本当にそれだけだと思うんですよ。
ねえ正崎さん?犬が好きと言う人と、ネコが好きって言う人は、絶対に相容れないものかしら?わたしはそんなことないと思う。
互いのことを理解し合えば、きっとその魅力は伝わると思うんです。
わたしたちもそうなの。善いことが好きな人と、悪いことが好きな人。
違いはそれだけ。たったそれだけ。だから正崎さん、考えて。
わたしがどうしてこんなコトをしているのか。
正崎さんには、それを考えて欲しい。そして、理解して欲しいの。
悪人がやることだから意味なんてないと思わないで欲しいんです。
まともな人間には到底理解できないと思わないで欲しいんです。
悪には、意味があるわ。
でも、それをすぐに理解して欲しいなんて、わたしのわがままだとは思ってはいるんですよ。
だって正崎さんはこの善い社会で善い人に囲まれて育った、根っからの善人なんですもの。
悪いコトなんて一度も考えたことがないんでしょ?
悪って何なのかを全くご存じないんでしょ?
だから今日、考えてみてください。悪と、生まれて初めて真剣に向き合ってみてください。わたしもできる限りのお手伝いをしますから。
ほら、正崎さん、見てて。これです。これが悪いこと。
何故人を殺すのは悪いことなのかしら?
何故人を生かすのは善いことなのかしら?
それは何故?何故?
さあ、正崎さん考えて?悪いってなあに?悪って何かしら?
大丈夫、きっとわかる。理解できないなんてことは絶対にありません。
だってわたしたち、同じ人間なんですもの。
正崎さん、あなたにもわかるから。きっと、絶対にわかるから。
正崎の願いもむなしく、点線に向けて斧を振り下ろす曲世。
鮮血が曲世の顔に飛び散る。
瀬黒は生きたまま、斧で切断されていく。途中で絶命。
瀬黒以外は、全て自殺として処理される。
そして舞台はサミットへ
自殺薬の詳細が公表され、ジェネリックが各社で作られるようになり、世界中で販売が出来るようになった。
正崎は検察を辞めた。曲世は、世界中で暗躍をしているのか、自殺法を採択する都市が、世界中に増えていく。
日本政府も、アメリカから、自殺法の拡大を呼びかける新域を潰すように圧力をかけられているが、政府は何も出来ないまま時間だけが過ぎていく。
そんな中、正崎は、FBIから、捜査への協力を要請される。
曲世と対峙し、実際の曲世を知る捜査関係者は正崎ひとりに他ならない。
アメリカ大統領のアレックスは元はゲームEOの伝説的なプレイヤー。
彼は、幼い頃の経験から、出来ることはやり続ける、考え続けることを止めないということを信条としている。
そうすることで、大概のことはうまくいく、と。
新域に続き自殺法を導入する都市がカナダ、フランスに出現してきた。
もう自殺法は対岸の火事ではなくなってきたとアメリカは考えている。
動物は自殺しないが、人間は自殺する。生と死は、同じところを拠り所としている。
大統領は自殺法について考えている。だが、なかなか結論を得ることが出来ない間に、アメリカの都市も自殺法を採択する。
その理由は、自殺法にフロンティアスピリットを見たという。
実は、市長は自殺法成立前に、曲世と会話していた。
アメリカは、自然発生ではなく、誰かの操作により性急な導入をしているのではないかと考える。
正崎も、要請を受けてアメリカへ渡る。その間の妻子のみの安全を図るため、妻子は安全な田舎に預けて。
→ここも、エンドロールの後で「!!!!!!」ってなるんだけど。
正崎は大統領に会い、正式にFBIの捜査員に任命される。
そして、銃を支給されるが、大統領に、この銃は正しく使いなさい。必ず、待つ家族の元へ帰るのだ、と諭される。
アメリカではサミットが開催されており、それに併せて自殺サミットが開催される。
そこで、大統領は、公開中継で、自殺希望者を説得して欲しいという齋の提案で、曲世が扮する自殺希望者であろう女性、かなえと会話をすることになってしまう。
自殺が善いことなのか、悪いことなのかの答えが出るまで待ってくれないかなあ。
もし、死ぬことが善いという答えが出たら、その時に死ねばいい。
その時は・・・わたしも一緒に死んであげるよ。
大統領の答えを聞いたかなえは、「もう少し生きろ、ってことですね。」と言い、その場は大統領により上手く収まったかに見えた。が。
・・・・・・・・・・・・違う。正崎は違和感を感じる。
残る。長い。続く。正義とは正しいことは何かを考え続けること。
善い=続くこと。
答えが出て、その答えをかなえに教えようとした大統領だが、直接、かなえに扮する曲世に話しかけられてしまう。
通訳は全員自殺。大統領は、自身の答えは自殺を肯定する者ではなかったのに、自ら死のうとしてしまう。
僕は誘われた。人間は悪を知ってしまった・・・。
大統領は自殺しようと屋上に。正崎は、銃を構えて屋上へ向かう。
善、ごめん。僕、ダメみたい。今ギリギリなんだ。
風船が割れるみたいな。ポップコーンが弾けるみたいな。もう、ダメなんだ。僕は約束したんだ。善いが何かわかったら、かなえに教えるって。
このままでは嘘の答えを教えてしまう。それはダメだ。
ごめん、善。本当にごめん。・・・善。君は善い人だ。
正崎は、大統領を射殺した。大統領の最後の願いを叶えるために。
大統領は、公衆の面前で自殺が善いことだという誤った答えを伝えることを防ぐことが出来た。
正崎は大統領を殺す=悪となることで、大統領が悪影響を与えることを止めたのだ。
最期に曲世が正崎の前に現れる。
正崎さん、悪いんだ~。
正崎さん、善って何ですか?
善とは・・・続くことだ。
正崎さん、悪って何ですか?
悪とは・・・終わることだ。
じゃあ、悪いんですけど・・・・・。バーン!
一発の銃声。死んだのは正崎か?曲世か?
終わること。大統領の命を終わらせた正崎は悪なのだ。
それでも我々は考え続けねばならない
善いこと、悪いこと。
価値観は人それぞれであろう。
でも、それでも。わたしたちの世界は変わっていく。
何が正しくて、何が悪いのか、それは、人それぞれの立ち位置でも変わってしまうものでもある。
だからこそ、わたしたちは考えることを手放してはいけない。
考え続けること。続けること。諦めないこと。
久しぶりに胸糞の悪い終わり方の物語を観てしまったわたしにできることは、自分に問い続けること。善いとは何か?
ぐるぐるぐるぐる、回り続けてる。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?