歩かせないエスカレーターのデザイン
デザイナーのきよそね(@kysn_rm)です。
エスカレーターは片側を空けて歩かせるよりも、両側に立たせた方が輸送効率が高いというシミュレーションがあります。
The simulation that proves standing only escalators work on the Tube
この事の真偽はともかく、エスカレーターはそもそも歩行を前提にしておらず、基本的にはエスカレーターでの歩行は禁止されている事がほとんどです。
でも歩く。何故でしょうか。
何故エスカレーターで歩くのか
急いでいるだとかの個々人の事情は別にして、端的に言うと「階段の形状が歩くことをアフォードする(与える)から」です。
ノブのないドアについた金属板はドアを押すことをアフォードします。
椅子は座ることをアフォードします。
程よい高さと幅の連続した段差はそこを歩いて登る(降りる)ことをアフォードします。
つまりエスカレーターで歩くことは椅子に座ることと同程度に自然なこととも言えます。これを「歩くとあぶない」だとかのポスターだけで阻止することは難しいでしょう。
※この文脈におけるアフォード、アフォーダンスは「知覚されたアフォーダンス」を指します。詳しくは「誰のためのデザイン?」を読みましょう。
立ち止まらせる
解決方法は大きく分けて2つ考えられます。
1つ目は歩くことの逆。つまり立ち止まるというアフォーダンス、シグニファイア(手がかり)を持たせるというものです。
たまに足跡がプリントされたエスカレーターがありますが、これは正に立ち止まって欲しいというシグニファイアです。
反アフォーダンス
もう1つは歩かせないことです。同じようですが違います。
例えば一段あたりの高さを今の倍にしたら、そこを歩こうとする人はいなくなるでしょう。高すぎる段差の連続は歩くことを阻止します。これが反アフォーダンスです。
つま先が引っかかるベルトを設置するだとか、前進できないように1段ごとに仕切りを設けるだとか色々と思いつきはしますが、あまり安全性は確保できなさそうです。
まとめ
・エスカレーターで歩いてしまうのはある程度仕方がない
・啓蒙ポスターではなく、エスカレーター自体に効果的なアフォーダンス、シグニファイアを持たせることで解決できるかもしれない
勉強していて思いついたことをつらつらと書きましたが、このあたりの用語の使い分けとんでもなく難しいですね。ミスのご指摘、その他のアイデアなどございましたら是非ご教示ください。