窓辺の悪魔の囁きはラテンみが強かった
いきなり本題で恐縮だが、「3拍・3拍・2拍」のパターンのことをトレシージョと呼ぶそうである。
そこでこのTeaserである。
エレキギターが透明な音色で紡ぐメロディは「タララ・タララ・タラ」と区切られるため「3・3・2」と捉えることができる。Teaserとは言わば決
意表明。「今回はラテンで行きます!」とこの時点でお伝えしてくれていたのだ。
何をどうラテンに感じるのか曲ごとに少し考えてみた。
Devil by the window
ラテンから遠く離れた曲調に油断していると、悪魔は囁きかけてくる。「オーワッチャドゥ-イッ? ユーガッサムタィムトゥデイ?」と。「time・today・休符(3・3・2)」。なぜか悪魔、突然ノリが良くなる。ラテンを聴くとうずうずするニンゲンならそのままfly in the crimson sky、セイユラブミーを口ずさみながらいつの間にか悪魔の家のこたつに入っていることだろう。
Sugar Rush Ride
まずこの出だしのメロディ、とてもユニークである。
16分音符3つがくっついているので1小節目の始まりこそ「3・3・2」に聴こえるのだが「3・3・2、3・3・2…」とは続かない。「2」が次の16分音符とくっついているので「3・3・3・3・3・3・3・3・2」のようになっている。面白いのがボムギュは1拍目から歌い始めているのに対し、テヒョンは1拍目を半分休んでから歌っているのでズレが生じ、「3・3・2」が3回登場する(楽譜左下あたり)。
この曲の要である「シュガラッシャ シュガラッシャ シュガラッシャ シュガラッシャッシャ-ッ」であるが、「シュガラッシャ」は8分音符3つ分として数えられるため、「3・3・3・3・2」となり、冒頭のメロディと統一感ある。シュガラッシャすごすぎんか?
Happy Fools (feat. Coi Leray)
ラテン音楽はブラジル系とキューバ系に大別されるらしい。「3・3・2」はキューバ系の基本であったが、ボサノヴァはブラジル音楽の一形態。ラテンといえばボサノヴァのリズムを思い浮かべる方も多いのではないか。イントロからしてHappyな香りが漂ってくるこの曲は、ヨンジュンがETERNITY期に作曲した歌メロを用いている。「いつか個人活動に活かせたらいいね」という話だったそうだが、Slow Rabbitさんが今回のラテンコンセプトに似合う楽しげなメロディであることを見出し、ボサノヴァと融合してくださったのだろう。きっと。大感謝。
Tinnitus
曲の冒頭から「タンッタタンタン タンッタタンタン タンッタタンタン タンッタタンタン」とゼロバイ進研ゼミで馴染み深いハバネラのリズムが刻まれる。「3・3・2」のマリンバ(だよね?)が最後まで貫かれていて心地よい。心地よすぎて眠りに就きそうでさえある「3・3・2」とハバネラが同時に奏でられる面白さもある。
Farewell, Neverland
Album Previewでも存分にラテンを聴かせてくれていたがフルはそれどころではなかった。世にも美しいブリッジも、「Ooh-ooh-ooh, ooh-ooh」「Falling, falling」の掛け合いも、ずっと「3・3・2」のドラムに支えられている。そもそもこの掛け合い自体が「ウ〜(3)ウ〜(3)ウ(2) 休符・ウ(3)ウ〜(3)ウ〜(2)」「フォ〜(3)リ〜(3)ン(2) フォ〜(3)リ〜(3)ン(2)」となっている。目を閉じると映画のエンドロールが流れてくるようなこの掛け合いに私は魅了され、これを歌いながらインドネシアへと船出したくなった。私は「Falling, falling」を担当したいので、「Ooh-ooh-ooh, ooh-ooh」を歌ってくれる人を募集している。
こちらの方がnoteに書かれているように、トレシージョはポピュラー音楽にもしばしば登場する。
硝子の少年のイントロは「ターンターンタン ターンターンタン ターンターンタン ターンターンタン」と「3・3・2」を繰り返すのが印象的だし、永遠に光れでは「なんど〜も、な〜んど〜も」と歌っている間にドラムは何度も何度も「3・3・2」を刻んでいる。もはや「3・3・2」は特別な存在ではなく我々の音楽の基盤にあるものなのだろう。
MV再生5000万回&ダブルミリオン&MCOUNTDOWN1位&ウプズハート、おめでとうございます。毎日祭りです。今回のアルバム、彼らのボーカルの素晴らしさだとか音楽の好きポイントだとか語りたいことに溢れすぎて今回の記事ではあえて触れなかったので機を改めさせていただきます。