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【私小説47】流転

問題は、小学校を卒業する事そのものにあった。
信じてもらえないかもしれないけど、私は小学生の頃、自分は小学校は卒業しないと思っていた。ただ何となくじゃなくて、きちんと考えたうえで6年なんていう永遠にも匹敵するような月日が自分に流れるわけがない、と確信していた。
だから卒業式の練習が始まった時は心底驚いた。
誰の葬式で、どの死体を見た時よりも強く、私の人生もいつか必ず終わる事を感じた。
 
今思えば6年なんてっボーっとしていようがほおっておけば流れているような、寒いからストーブのスイッチを入れるような、そんな無意識に過ぎてしまう時間だけど、子供の頃の私には6年は受け入れられなかった。
 
まあでもその日はやってきた。なんの努力もしなくてもその日はやってきた。
何故だろう、小学校の卒業式に中学校の制服を着ていくの。
私はかっこつけて光沢のある黒い生地のスーツを着ていきました。

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