生まれてこの方
稲刈りの終わった
秋の畦道に
祝福の満ちた
その畦道を
紺色のセーラー服の
深く涙を染み込ませた影
とぼとぼと歩いて行く
深く暴力的な
夏の緑が
暗く焼き付く
夏の緑が
あらゆる歓声を吸い込んで
うるさいほどの沈黙で応える
天まで届くその青に
おしまいだけがこだましている
全ての生命が
終わりを始める春
全ての生命が喚呼して
終わりを始める春に
山門をくぐる母と娘、その幻
祭囃子から逃げ回っていた、その幻
親を亡くした哀れさに
後を続いた寂しい狐のこと
全ての悲劇が始まった
あれ一度きりの冬のこと
全てのひもじさが生まれた
あれひとたびの冬のこと
しもやけという名の
かさぶたという名の
生まれついての地獄が始まった冬のこと
今なお続く穏やかな
地獄の生まれた日の凍晴れ。