赤褐色の太陽を見た
赤褐色の太陽を見た
古い血の色をした暗い青空に浮かぶ
而して夜行性動物の瞳を焼く
生まれたばかりの卵黄のような輝き。
地上を追われた
歩くだけしか能のない猿は
空を飛ぶ翼に乗って
終わりのない旅をしている
あのころ青空に輝いていた
白銀色の若い太陽は死に
飛ぶ鳥もいない空に打ち付けられた鈍色が
人工的な彼らの目を焼く
そんな腐った太陽の輝きにも
光は未だ残っているらしく
他に行く場所もしらない雲と地平線が
その暗闇の色で僅かに縁取られている
世界の終わりが近いのだ
猿たちが未来永劫続くと思っていた
楽園の死が。
猿たちは慄いた
その赤褐色の光の下に
新たな生命が宿るのを見た
まるで頭でっかちな
未成熟な赤子が
母親の腕に抱き止められるのを。
猿たちは恐れた
この悠久に続くかと思われた
木と土と草花の楽園は
この大きな頭の生誕を予期して
裏側からひっくり返ってしまったのだと。
理由なき本能の恐れは
本来起きるはずもなかった破滅を
その宿主に見事
もたらした
赤褐色の太陽は
それ以来
恐れた者の内から流れる
無垢な血の海を漂っている