本当のことを書くのは難しい
こんにちは。野本です。
私は編集者なので、仕事柄、他の人の原稿を読むことも多いのですが、なかには、「あなたは本当にそう思っている?」とツッコミたくなる文章があります。
なぜ思考停止になるのか
そういえば、子供が日本の公立小学校からマレーシアのインターナショナル・スクールに来て「初めて作文で本音を書けるようになった」といってました。
日本で「運動会はつまらなかった」と書いたところ、「準備した人の気持ちをちゃんと考えて」と怒られたそうですが、英国式の学校では「つまらなかった」が許される、と。「その代わり、どうしてつまらないと思ったのか、相手を説得できるように文章を組み立ててください」と先生に指導されるそうです。
ツイッターでは「将来の夢はなんですか」と聞かれて「ない」とも言えず困った、と答える人の声も上がりました。
毎回、「運動会、力を合わせて頑張ったので楽しかったです」
などと、心にもないのに書いていたりすると、そのうち自分の気持ちがわかんなくなっちゃうと、私は思うんですよね。
我が家の子供も小さいころ、「保育園が好きじゃないの」と言い出した時期がありました。
「どう好きじゃないの」と聞いたら、「あのね、あのね……」と考えながら「僕は、せいぞろい、が嫌いなの」と言い出して、なるほどーとなった記憶があります。
こうやって気持ちを教えてもらえると、親の方も理解が進みます。ああ、この子は集団行動が嫌なのだな、と察します。ここで集団行動に反抗している事実に親ががっかりして「みんなと一緒を楽しまなきゃダメでしょ」と言うと、それは正論かもしれないけれど、子供の心を萎縮させてしまう。多分子供はそれ以上、言葉を紡ぐことをやめてしまうと思います。
小さい子でもそうなのですから、大きい子なら、もっと複雑なことを考えているケースが多いんじゃないかな。
夢が「ある」のが正解、運動会が「楽しかった」が正解、としている限り、本人オリジナルの複雑な思考が閉じられてしまい、「力を合わせて頑張った」風の思考停止に陥ってしまう。
私たち大人もそうで、読む相手の気持ちに配慮するあまり、何を言いたいのかわからない文章になってしまうことが多々あります。私だってそうです。
せめて親としては、感じたままを書いた子供に対し、肯定的に捉えていきたいと思っています。