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「ミイラ」とあだ名がついた公務員の話ーー映画「生きる」を見て思ったこと
こんにちは。
先日、家族で黒澤明監督の1952年の作品「生きる」をみました。
1952年の映画です。私は大昔、テレビで見てすごくいい映画だなと思った記憶がありました。
最近リメイクされたので、気になっている人もいるかもですね。
「何もしない」ことが正解という職場の中で
本作では、「ミイラ」とあだ名がついている、やる気のない公務員の中間管理職、渡辺課長が主人公です。
この「ミイラ」の渡辺課長の胃の写真、次のシーンでは、「市民課」で、役所の大量の書類を前に、ハンコを押している姿からスタートします。
最初のナレーション、こんなことを言っているようです。
これがこの物語の主人公である。
しかし今この男について語るのは退屈なだけだ。
何故なら彼は時間を潰しているだけだからだ。彼には生きた時間がない。
つまり彼は生きているとは言えないからである。
なんともパンチの効いたナレーション。
本当にどうでもいい話なのですが・・・。
日本映画のリスニングって難しいです。
正直、最初の30分くらいほぼセリフを聞き取ることができませんでした。字幕がないと、後半もところどころなんと言っているかがわからない。
IELTSのリスニングより難しい!
そしてナレーションはこう続きます。
聞き取ってくれた方のブログを引用します。
だめだ!
これでは話にならない。これでは死骸も同然だ。
いや、実際この男は20年ほど前から死んでしまったのである。
その以前には少しは生きていた。少しは仕事をしようとした事もある。
しかし今やそういう意欲や情熱は少しもない。
そんなものは役所の煩雑すぎる機構と、それが生み出す無意味な忙しさの中で、全く磨り減らしてしまったのである。
このセリフにドキッとした方、いるんではないでしょうか。
生きているようで、生きてない、そんなことをこの映画は思い出させてくれるのです。
官僚的な組織の中では「何もしない」が正解になる
冒頭のナレーションはこう続きます。
忙しい。全く忙しい。
しかしこの男は本当は何もしていない。この椅子を守る事以外は。
そしてこの世界では地位を守るためには何もしないのが一番いいのだ。
しかし一体これでいいのか。。一体これでいいのか!
この男が本気でそれを考え出すためには、この男の胃がもっと悪くなり、
そしてもっと無駄な時間が積み上げられる必要がある。。
渡辺さんのいる役所は縦割り組織がすごくて、何かをしようとすると、他の部署とぶつかってしまったり、煙たがられたりします。
大きすぎる組織や、何かしようとすると邪魔されるような組織では、だんだん人々のやる気が削がれていく。
渡辺課長も、この組織にどっぷり染まっていきます。
ところが渡辺課長は、ある日、自分が胃がんになったことに気づきます。
当時は胃がんは死に結びつく恐ろしい病気だったようで、彼は自分があと数ヶ月しか生きられないと知ります。
そして、「ミイラ」と言われていることを知り、おもちゃ会社で楽しそうに働いている元部下と知り合ったところから、「生き返っていく」のです。
私が若い頃影響を受けた人に千葉敦子さんという方がいます。
彼女も乳がんになったことで「死への準備」を強く意識し、「生きることの意味」を強く問い直した方でした。
ユーモアもある意外に楽しい作品です
黒澤映画というとなんだか難しそうですが、本作は地に足がついた、非常にわかりやすいテーマを、ユーモアを交えて描いていて、スピードも早く飽きません。
また、戦後すぐに撮影されたと思われる、日本の風俗もとても興味深い。
とにかくむちゃくちゃ活気があるのです。
インチキくさい文士みたいな人が登場するのも、洋楽(おそらくマンボやブギウギ)でみんなが踊り狂っているのも、時代だなーと思います。
興味持った方、ぜひレンタルで見てみてください。アマゾンで三百円でした。
ただし、セリフが聞き取りにくいけど。
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