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たった1回の「ハグ」がなかったために起きた大スターの悲劇の話
子どもの教育に熱心な人は多いのですが、子どもを愛することに熱心な人は少ないです。
長男に誘われて、エルトン・ジョンの伝記映映画「ロケットマン」を見たのです。
(ネタバレではないですが以下、映画の内容に触れる部分があります)
「父親の愛情に恵まれなかった」ことが起こした悲劇
そもそもどんな話か。
成功物語の裏にある依存症の話で、意外でした。
冒頭、彼が直面しているアルコール依存、薬物依存、買い物依存などーーについて語られます。
しかしなんでこんなことになったのか。
原因は、映画の初期の段階に描かれます。
幼少期に、彼の父親が愛情を示さなかったことーー「一度もハグしてくれなかったこと」なのです。
父親の愛情に恵まれない幼少期を過ごしながらも、ピアノと出会い才能を開花させたエルトンは、作詞家バーニー・トービンとの出会いによって次々とヒットソングを生み出していく。しかし、過度のドラッグやアルコール依存により更生施設での生活を余儀なくされるなど、栄光と挫折を繰り返してきた。
「そんなことが?」と思われましたか?
私も正直、思いました。
父親が登場するその度にエルトンがその態度に傷つくのです。
そしてまた、父親自身が大人になりきれておらず、余裕がないことも映画では示されます。
この映画はエルトン本人が制作総指揮を務めています。
変わっていく「いい親」の定義
エルトンを演じたタロン・エジャトンはインタビューでこう言ってます。
―――今回の作品で気になったのはエルトンと両親の関係でした。彼らの問題行動は「愛しているがゆえ」と表現する人がいるのですが、あなたはどうとらえて演じたのですか?
T:確かなのは、彼らの行動には時代背景が関わっている。当時は感情表現を明確に表に出すことが多くの人にとって、とくに英国では難しかった。これは個人的に思っていることだけど、親に向いている人と向いていない人が実際いる。彼の母親は、父親もそうだけど自分の人生を謳歌したかった人。だからそのチャンスを奪った妊娠・出産、そして子供を一種恨んでいた。愛情はあったと思う。でも、その愛情を的確に子どもに与えてあげることが出来なかたったし、自分が抱える恨みをぶつけずにいられるほどの忍耐力もなかった。いい親とは言えないかもしれないね。
―――この作品で両親とエルトンの関係を見ると、あまりにひどい言葉をぶつけているので、いじめっ子といじめられっ子に見えてしまいました。
T:その意見には一部賛成だね。子どもは親から愛情だけでなく、支えられたり、勇気づけられたりする必要がある。子どもは庇護されてはじめて人間としての存在に自信ができるわけだけれど、その能力自体がない親もいるんだよ。
でも別に、すごく悪い親かと言われると、そうでもないのです。
エルトンが音楽への才能を示すと、音楽教師をつけて、音楽学校に送り出してくれます。教育熱心でご飯もきちんと食べさせています。
インタビュー通り、時代背景があるのだと思う。
しかし、エルトン・ジョンほどの人でも、幼少期の親の愛情が、一生の傷になるのかーーというのはちょっとショックでした。
だからこそ、彼は成功した、とこのインタビューでは語られていて、要するに戻るところがなかったからです。
きっとこれには相性もあって、たまたまエルトンが繊細な感性の持ち主で、相性が悪かった、というのもあるかもしれません。
エルトン自身が「自分のダークな部分を見せていい」といったことで、今回の映画が実現したそうです。
いろいろと考えさせられる映画でした。
それではまた。
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