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専門家の論理的誤謬をどうやって発見するか?

先日、Voicyで研究者のすいさんより、「専門家の論理的誤謬はどう発見すればいいですか?」という質問をいただきました。大学院で学んだことを合わせて、「信頼できるか」を判断する基準としてご紹介します。

1. 筆者の立ち位置や出版社の利害関係を理解する

専門家が提示する情報を正しく評価するためには、まずその筆者がどういう経歴を持ち、どこから資金を得ているのかを確認します。

アカデミックな研究機関に所属しているのか、個人的な研究なのか、研究費がどこから出ているのか。こうした基本情報では、誰がその人に影響を及ぼしているかがわかります。

過去にどのようなコネクションがあり、学会や業界の中でどのような立ち位置にいるのかも要チェックです。政治が絡んでいたり、背景にお菓子メーカーなどがいる場合があります。

学会の「主流派」と完全に同じ意見を述べる専門家がいた場合、単に「多数が言っているから」「権威が認めているから」というだけで主張を正当化していないか注意を払う必要があります。

トレンドに反する研究や意見は批判されがちですが、それでもデータやエビデンスに基づいて主張を続けている専門家は、逆に信頼に値する場合もあります。専門家自身の得になることは何か、どのような利害が絡んでいるかを調べるのは、論理的誤謬を見抜くうえで欠かせないステップです。

場合によっては、社会的・学会的バックラッシュ(反発)を受けている研究者のほうが、慎重な検証を重ねていたり、エビデンスをそろえていたりするケースもあります。

2. よくある論理的な誤りを理解する

科学や技術に関する議論でよく見られる論理的な誤謬には、以下のようなものがあります。これらを把握しておくことで、専門家の主張にも潜む誤りを見抜きやすくなります。

  • 権威への訴え(Argumentum ad Verecundiam)
    証拠を評価せず、「専門家が言ったから真実だ」と安易に考えてしまうこと。

  • 相関関係と因果関係
    2つの事象に相関があっても、それがそのまま因果関係を意味するわけではありません。

  • Cherry Picking(チェリーピッキング)
    矛盾する証拠を無視して、都合のいいデータだけを選び出すこと。

  • Hasty Generalization(性急な一般化)
    限定的または不十分なデータから、広範な結論を導いてしまうこと。

  • Strawman Argument(藁人形の論法)
    相手の立場を誤って単純化し、攻撃しやすい形に変えて批判すること。

誤謬については以前も紹介したエクセシオル大学のコースで一回学んでおくことがおすすめです。無料です。

3. 科学者のバイアスに関する社会学的研究を知っておく

科学者にどういうバイアスがあるのかの研究を知っておくと良いでしょう。

ロバート・マートンの「科学の社会学」

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