恐怖や不安で子どもをコントロールしてはいけない理由
松井博さんのnoteが面白かった。なぜ人は仕事中毒になってしまうのか。
今読んでいる「The Myth of Normal: Trauma, Illness, and Healing in a Toxic Culture」によると、子供の頃に直面した帰属への不安を解消するための行動が、いつの間にか心の奥底にセットされてしまうようです。言ってみれば、子供の頃に腹の中に機械じかけの時計がセットされて、それに従ってチクタク動いているようなものです。僕の場合は父の暴力が直接的な原因だと思いますが、そんなに極端な目に遭わなくても、「いい大学に入らないと、いい会社に入らないと地獄に落ちるよ!」と脅され続けてきた人々も、同じような時計がセットされていそうです。
親から仕組まれた「機械仕掛けの時計」ーー中年になってから苦しむ人が多い、案外大きな問題なのでは、と感じています。
今日のテーマはこれです。
子どもを脅すことで、失われるもの
おおたとしまささんの、「不登校でも学べる」(集英社新書)にも、恐怖に支配された子どもたちの例が出てきます。
恐怖や不安で子どもをコントロールして目先の偏差値を上げたところで、人生においてもっと大切なものを失うことになる事例を嫌というほど見聞きしているからです。実際のところ、そういう大人たちは自分の恐怖や不安を子どもたちに投影しているだけなのですが……。
「不登校でも学べる」
本書によると、今、東京では中学受験で傷ついた子どもたちが多いそうです。
神奈川県の超進学校栄光学園の数学教師だった井本さんは、学校の成績を上げないと最初から宣言する私塾「いもいも」も開くのです。彼はこう言います。
ネットを見ると、小さいときからこんなことをするといいだとか、こういう塾に入れると成績が伸びるとか、勉強だけじゃなくて非認知能力も伸ばすためにこんなことをしたほうがいいとか、いろいろ出てきますけど、そんなことをしているのは世の中のごく一部の親だけなんですよ。
いまだって日本の大学進学率は六割弱です。ということは、大学に行っていないひとが世の中には四割もいます。それでも楽しく幸せに生きているひとたちなんてそこら中にたくさんいるんです。僕のまわりにもたくさんいます。
でも栄光学園のような進学校にいると、大学に行っていないひとと出会うほうが難しい。大学に通わないでも楽しく幸せに生きているひとたちの存在を知らない。だから大学に行かないことが怖い。「不登校でも学べる」
「頑張れ」と親から叱咤激励されて育って、苦しい思いをしながら、新卒で入った会社にしがみついている友人が、私にはたくさんいます。自分はいい大学で優秀だったから、この会社に入れたーーと思ったら動けない。
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