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「親ガチャ」は気にしなくていい? 英才教育や読み聞かせーー早期教育の影響はなぜ限定的なのか
子どもにできるだけのものを与えてあげたい、という親心がなぜ空回りするのか。
日本で加熱する早期教育・早期お受験が必ずしもうまく行かないのはなぜなのか。
そんな話は、私のnoteでもいくつか紹介しました。
昨日もnoteでちょっと紹介した橘玲さんと安藤寿康さんの「運は遺伝する 行動遺伝学が教える「成功法則」」(NHK出版)にもこの話が出てきます。
安藤寿康さんは日本の心理学者、行動遺伝学者、慶應義塾大学名誉教授。
教育界ではおそらくタブーとなっている?遺伝子の話です。
早期教育で伸びたように見える子が、後から追い付かれる理由
都内の有名塾トップクラスの指導をされていたTaku先生と最近Voicyでよく話すのですが、「受験に向いているお子さんは少ない」とよくおっしゃっています。
この本で強調されるのは、才能には遺伝の影響が大きいこと。環境の影響は実は非常に少ない、という身もふたもない事実です。
本書では就学前教育で被験者グループのIQや学力が一時的に伸びるものの、8歳前後でグループとの差がほぼなくなった、という話を紹介しています。
橘 幼児期は遺伝より環境の影響のほうが大きいから、親の努力が結果に結びついて報われやすい。ところが思春期を過ぎると、本来の遺伝的な資質で成績が決まり、子育ての努力は報われなくなる。
安藤 おっしゃるとおりです。ですから早期教育とか英才教育に親が過熱することを非常に危惧しています。鉄は熱いうちに打てといいますが、相手は打ったとおりの形になる鉄ではなく、形状記憶合金のように、遺伝子の導く形にだんだんと近づいていくんです。
つまり、早期教育はそれなりに効果があるように「見える」。しかし、その効果が続くのは早期だけである。
多くの識者が指摘されることでもあります。
安藤 もちろん子どもの頃からよい文化に触れさせることの重要性は強調してもしすぎることはありません。しかし他の子より一足早く学ばせて優位なポジションに行かせようとか、あるいは他の子より出遅れるとかわいそうだから早くから学ばせようという趣旨だとすると、必ずしも報われないことがあることは覚悟しておく必要があるでしょうね。そういった個人差の半分は環境ではなく遺伝も関わっているわけですから。
橘 もともと共有環境の影響は大きくないのに、そのうちの半分くらいは、じつは遺伝で説明できるかもしれない。日本でも親の収入が子どもの人生に決定的な影響を与えるとされ、〝親ガチャ〟などといわれますが、その影響がかなり限定的だというのは、貧しい家に生まれた子どもにとっては勇気づけられる結果ですね。
なお、ここでは環境を選ぶのもまた、遺伝子の力であることが紹介されています。
「読み聞かせで言語能力は伸びない?」
日本でよく言われる「読み聞かせ」ですが、これでも実は言語能力は伸びないという話も出てきます。(こちらについては、反対の論文も読んだことがありますが)
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