「現場」目線 東南アジア進出で失敗する10の理由
ときどき、東南アジアに進出したい企業から相談を受けます。「日本市場は縮小し限界が見えた、だから東南アジアで新市場を開拓したい」。ポップアップストアをやってみたり、進出してみたりします。しかし、これが結構な確率でうまくいきません。
私は表向きはマレーシアマガジンというメディア編集長ですが、実際には実動部隊として現地で調整をしたり、孫請けとして実動部隊になったり、一方でメディア・インフルエンサーとしてマレーシア側の宣伝したりと、4年ほど、まさに「何でも屋さん」として地を這うような仕事をしています。
正直失敗だらけです。自分でもたくさんの失敗をし、さらに多くの失敗を目にしてきました。まだ「これが正解だ」という道にはたどり着いていません。つくづく思うことは、どれもこれも「口でいうほど簡単ではない」ってコトです。
失敗のうちいくつかは現地と日本企業との悲しいまでの「ズレ」によるものです。今回は、私の経験から東南アジアに進出したい人に失敗談をまとめてご紹介します。
読者対象は、
・失敗談を知った上で、東南アジア進出する上でのヒントとしたい人
・海外との仕事を始めるが、そのヒントが欲しい人
です。ただ、残念ながら、ここには失敗談ばかりで成功談はありません。
それから私はマレーシアしか見ていませんが、マレーシアはムスリムのマレー人、華人、インド人がいるため、テストマーケティングの地として選ばれることが多いです。タイやインドネシアのマーケティング部隊やフィリピン人の友人たちからも似たような話を聞くので、ちょっと強引に「東南アジア」としてまとめてみました。
かなり長文になりました。コメントを空けておきますので、購入者さんからの質問は自由です。分かる範囲でお答えします。本記事はちょっと長文モードの有料記事ですが、同じ値段のメールマガジンに含まれてますので、今月登録するとお得です。試し読みにどうぞ!
1 メイドインジャパンだから売れる、という幻想
まずは、メイドイン・ジャパンだから売れる、という幻想を捨てることです。
20年前、私が初めてマレーシアに来た頃には、本物の日本食を食べられる店は数少なく、「日本人経営の店」というだけで希少性がありました。
ところが、今やマレーシアにメイドインジャパンはあふれています。クアラルンプールには高級寿司店がいくつも出来、日本と同等の味を楽しめます。抹茶カフェなど東京より流行っているのではないでしょうか?
インバウンドも同じで、今や何十という自治体がアピール合戦をしています。マレーシア人には日本旅行のリピーターが多いため、「もう温泉やお城には飽きた。もっと珍しいものは?」という人が増えています。「普通のことをやっていても、アピールできない」のです。
ところが、メイドインジャパンだから売れるでしょう、と気軽に進出して撤退するケース、本当に多いです。日本食のモールなども苦戦が伝えられるところが多いです。
東南アジアでものを売るのは簡単ではないです。
マレーシアのような多様性のある社会ではなおさらで、いくら中間層が膨らんで可処分所得が増えていても、本当に良いと思うものにしか彼らはお金を払いません。
特にマレーシアの人は値段に敏感なので、コストが高い日本の製品はそれだけでもちょっと不利なんですよ。
2 日本と同じPR手法で失敗する
PRの方法も、マレーシアと日本では全く違います。
日本のニュースリリースを翻訳して出しても、まずうまくいきません。
色の好みや写真の置き方、書き方、喋り方、全て違います。
まず文章。要点だけ、簡潔に、です。写真だけで伝えるのも効果的です。
例えば、日本人が大好きな「頑張って書いた長い文章」は、割と、嫌われます。
クレームになることすらあります。
昔、マレーシアのあるテレビ局に数ページある日本流リリースを送ったら、「要点が全くわからない」とクレームが来ました。
例えば、「細かい字がびっしり書いたパンフレット」「凝りに凝ったデザインの読みにくいパンフレット」などは読まれないことも多々あります。
それから、多様な人が住むマレーシアで、マスを動かすのは大変です。
マレーシアの場合、マレー人、華人、インド人と宗教も好みも生活スタイルも全く違う3民族が住んでいます。テレビや新聞は、英語、マレー語、中国語、タミル語と細かく分かれており、それぞれ別の人が読んでいます。
だから日本のように「テレビで宣伝し、国民がワッと全員が飛びつきブームになる」ということがなかなか、起きません。
これは実はマレーシアと日本の違いとともに、今の時代の移り変わりという問題も孕んでいます。マレーシアでも広告はマスからブロガーやインスタグラマーなどの「インフルエンサー」に移行しつつあります。これ、まだ時代的に試行錯誤の段階なのではないでしょうか。
だから、海外にくる日本企業は、「海外である」ことと「PRの方式が変わる」という二つの挑戦をせざるを得ないのです。
現地のインフルエンサーは引っ張りだこで、あちこちの自治体に行っています。「先月は日本だけで三箇所も招待旅行に行った」というインフルエンサーもいました。彼らはさらにスイスに行ったりインドネシアに行ったり韓国に行ったり台湾に行ったりと大忙しです。「日本」だけが特別ではないんです。韓国や台湾、ドイツ、イタリアなどヨーロッパの国々との熾烈な競争(お客さん争い)をしていることを認識した方が良いです。
「日本の良いものをアジアに!」は間違っている(内閣府のイベントでも同じこと言ってます)
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