物になる
「これ、元は人間だったの。」
僕は今、とある蒐集家の家に来ている。
殺人鬼の作ったネックレスに、人の髪で作ったヴァイオリンの弦。いわくつきのグローブドマリエ、6本指の手の骨格標本、修道女の首で作ったツァンツァ。
悪趣味かつ美しい。
彼女はそういったいわくつきだだったり珍しいものを蒐集しているという。
ふと彼女の手を見るとこれまた美しく人目を引く、深い青をしたダイアモンドが見えた。
「これも何かいわくつきですか?」
その質問に対しての答えがそれだった。
聞くと、遺骨をダイヤモンドにした、いわゆるアルゴダンザだという。
「数年前に親友が病気で亡くなったの。その彼女の遺言でね。
彼女は私以上の蒐集家だった。というよりも、彼女の影響で蒐集家になったの。ここにあるのも彼女の遺品が大半よ。
しまいには自分がコレクションの一つになるなんて、彼女らしい。」
ふふっと思い出したように笑う。
「それでね、また私が死んだらこの指輪を質に流してくれって言うのよ。
『貴方が持てなくなったなら、私は旅に出る。いろんな人のコレクションになって長い年月過ごして。それでまた、貴方が生まれ変わったりしたら、私を探してまた持って頂戴。なんだかそれって素敵じゃない?』ですって。彼女がこうなった以上、その話にのらない訳にはいかなくなったし。
彼女ほんとに強引よねえ。」
指輪を見ながら呟く。
「でもね、私も死んだら同じように指輪になろうと思うの。彼女のと対にして。それでこの部屋で
二人…二つ並んで置いておくの。この部屋が潰されるまでね。旅はそれからでも遅くないはずよね。」
それってなんだか素敵じゃない?
そう言葉を付けたしこちらを見る。
死ぬと言う言葉とはまだ遠いはずなのに、目には死が映る。
そしてその先の遠い遠い未来を見据え、ある種の高揚、希望が見える。
「楽しみ。」
彼女が微笑む。