第6回 夏休み明け、「ここならいてもいいかな」と思える学校とは
1.学校に行きたくなーい!
夏休みが明けてしまいましたね……。
私の所属する横浜市では、8月の最終週から学校が再開されるので、子どもたちが学校に戻ってきてから約3週間が経ちました。真夏のような暑さが続くなか、効きがあまりよくない空調のもとで、子どもたちと楽しく過ごしています。
第6回の今回は、夏休みのことを少し思い出してみようと思います(「今さら」なんて言わずに、どうかお読みください)。
今年度、本校は、7月20日~8月26日まで1ヵ月以上の夏季休業期間がありました。
もちろん教職員は、出勤したり、職場とは別の場所で研修したりといった毎日を過ごします。
全国のみなさんも同じように過ごされていたと思います。
ただ、子どもと毎日を過ごすということを仕事に選んでいるにもかかわらず、子どもが学校に来ない日にホッとした気持ちになるということも正直なところではないでしょうか。
さらに、横浜市では、8月上旬~中旬の約2週間にわたり、「学校閉庁日」を各学校で設定します。この期間は、年末年始のように、平日でも誰も学校で勤務しませんし、公的な研修もありません。
多くの教職員がこの2週間は学校に出勤せずに思い思いの過ごし方をしています(ちなみに出勤しない日は、夏季休暇や年次休暇等の消費となります)。
私も、友人と飲み歩いたり、趣味のゴルフをしたり、高校野球をテレビ観戦したりして過ごしました。恥ずかしい話ですが、教育については何ひとつインプットしませんでした。
こんなふうにダラダラと過ごしているうちに、夏休みはあっという間に終わりを告げます。
人によっては、8月下旬から研修などが始まりますが、本校の教職員が職員室に全員集合するのは、学校再開前日の8月26日(月)でした。
みなさんは、夏休みが終わるとき、どんな気持ちでしょうか。
私が8月26日(月)の朝起きて最初に思ったことは、「行きたくなーい!」です。
さて、今回みなさんと考えたいのはここなんです。
「あんなに楽しかった夏休みが終わってしまう……行きたくない!」
そんなふうに思っている場で、どんなスタートを切ればよいでしょうか。
もう少しくわしく言うと、「行きたくない」と思っている人が、どうすれば「やっぱり、ここならいてもいいかな」と思えるでしょうか。
「明日も行きたくなる学校」といったフレーズを耳にすることもありますが、そこまでハードルを高くせず、「ここならいてもいいかな」と思えるスタートが切れればと考えました(はい、自分のためにもです)。
2.「行きたくない」をまず認め合う
さて、話は夏休み最終日に戻ります。
私は、他校の仲間数名と居酒屋で夏休みの終焉を悲しんでいました。はい、最後の悪あがきです。
仲間たちも、本校と同様に8月26日(月)が教職員全員が集まる日でした。
その一人は、「いきなり朝から会議がびっちりなんだよ……。でも、それくらいしないと体が慣れないから仕方ないかな」と諦め半分モードです。
その話を聞いて、「無理やり動かされるスタートってどうなんだろう」という思いが湧きました。
では、どんなスタートを切ればよいのでしょうか?
みなさんの「自分なら……」というアイディアはぜひコメント欄にお願いします。
私は、「『行きたくない』と思ってしまうこと、『このまま夏休みが続けばよい』と思っていることをまずは認め合い、そこから徐々に始める」ことを考えました。
具体的には、仕事の内容云々の話はまず置いておいて、ゆるやかに同僚とつながり直し、「この職員室っていい人がたくさんいていいよね。過ごしやすいな」と場への安心感を実感するところから始めたいと思いました。
ちなみに、本校はこの日の午前中、教職員全員で打ち合わせを行い、その後、校内授業研究会に向けた指導案検討を行う予定でした。
この打ち合わせは、普段から全教職員で行いますが、連絡事項を共有し、最後に管理職の先生方からの連絡があるもので、10分程度で終わります。
この打ち合わせの時間をいつもよりも長くとり、教職員一人ひとりが1対1でおしゃべりをして、つながりを改めて実感する時間にすることにしました。
プログラムとしては、次のとおりとても簡単なものです。
①私(玉置)より打ち合わせの趣旨説明(3分)
②アイスブレイク「夏休みビンゴ」(25分)
③連絡事項共有(10分)
④管理職の先生方から連絡(5分)
②のアイスブレイクが、一人ひとりがつながり直すためのメインの時間ですが、その前に①でこのような時間をとることがなぜ大切なのかについて、ていねいに趣旨説明をすることにしました。
こんなお話をしました。
「僕は、今朝起きたときに、夏休みが終わってしまうことが悲しくて、本当に悲しかった。それでも、学校に来た自分を褒めてあげたいと思っています。みなさんはどうですか?」
私は、教務主任兼研究主任として同僚の前で話をする機会が多いのですが、今年度一番の大きな頷きをいただけました(笑)。
続けて次のように話しました。
「でも、僕は旭小学校の職員室のみなさんがいい人で、一緒に働けてうれしいなと思っています。だから、まずはみなさんと楽しくおしゃべりして、そうそう!こんな感じの職員室だったと思い出すことから始めたいなと思いました。ということで、みんなでおしゃべりしましょう!」
全教職員が「みんなでおしゃべり」したいと思っているかどうかは分かりませんが、誰が担当しても、なぜ、このような場を開こうとしたのかという「意図を開いて共有する」ことが大切だと思っています。
3.「夏休みビンゴ」
アイスブレイクの「夏休みビンゴ」は、次のように行いました。
①各自が3×3マスに、同僚が夏休みに食べたもの、観たこと、やったこと、飲んだもの……などを予想して書き込みます。
②質問相手を一人見つけます。
③「夏休みに食べたものは何ですか?」と質問をします。このとき、「ビールを飲みましたか?」などと自分の書いたものをあげながら質問するのはNGです。
④質問相手からの回答がビンゴカードに書いている/書いていないにかかわらず、「どこで食べたんですか?」などの質問を一つ重ねます。その質問をきっかけに、キリのよいところまでおしゃべりをします。
⑤おしゃべりがひと段落したら、先ほど質問に答えた人が質問をして、③④をくり返します。
⑥次の質問相手を探し、③~⑤を繰り返します。
約30分行いましたが、④の話が盛り上がり、なかなか次の相手への移動が起きません。
「3人としか話せなかった」という人もいました。
いちおう結果を確認したところ、一列ビンゴを達成した方が一人。ビンゴゲームとしては成立しませんでした(笑)
学校用務員や事務職員、栄養士の方も参加し、全教職員がそれぞれに笑顔で夏休みの思い出をおしゃべりする姿に、「素敵な職員室だな」と感じ入りました。
アイスブレイクの最後に私から次のように話しました。
「朝、集まったときより、この場の空気感が柔らかくなっているような気がしています。
明日から、子どもが登校してきます。僕はこう考えています。
『僕でさえ、行きたくないと思っているわけだから、子どものなかにはもっと来たくないと思っている子もいるんじゃないだろうか。あるいは、来たいと思っていても、久しぶりに友だちと会うことに心配や不安を感じている子がいるんじゃないだろうか。』
幸い、今週1週間は午前授業が続きます。僕は、この1週間を『このクラスって、なんかこんな感じだったな』『やっぱり、このクラスだったら、なんか行ってもいいかもな』と一人ひとりが感じられるような時間にしたいと思っています。
僕たち大人同士でもアイスブレイクをしながら徐々にスタートしています。子どもとはもっと丁寧にかかわる経験を積み重ねながら、場への安心感を取り戻せるようにしていきたいと考えています。いきなり、『背筋をピンと伸ばそう』なんて言わないように気をつけたいと思います(笑)。
みなさんは、どんなことを大切にスタートしようと思いますか。」
4.よい職員室をつくれない人は、よいクラスをつくれない
本校では、4月のはじめから、「よい職員室をつくれない人は、よいクラスをつくれない」を合言葉に教育活動を進めています。教職員が職員室で経験したことが学級経営に生かされるとうれしいと考えています。
この日の午後に廊下ですれ違った養護教諭が、次のように言ってくれました。
「朝はありがとう。私もすごく『行きたくない』と思っていたから、玉置さんの話を聞いて救われたし、ビンゴ楽しかった。」
こういうことを伝えてくれる同僚がいることがうれしくて、泣きそうになります。
そして、こういうふうに感じている子どもも絶対いるだろうなと改めて思いました。
年度のスタートのときに「黄金の3日間」とよく言われます。
もちろん、スタートは大切だと思いますし、スタートダッシュが切れるに越したことはありません。
ただ、スタートの場に集った人たちは、前向きな気持ちでいる人ばかりではありません。
さまざまな心配や不安を抱えていることもあるのではないでしょうか。一人ひとりが、そこに集う人とじっくりと関係性を築きながら場に少しずつなじんでいく……そんな職員室をつくり、それがクラスづくりにも反映していくといいなと 感じた夏休み明けでした。
そして、この原稿を書きながら、夏休み楽しかったなーとスマホの写真を見返してしまいました。
*
さて、みなさんは、夏休み明け、どんなスタートを切りましたか?
私は、人が大好きで、人と楽しくおしゃべりをしていると、『ずっとこの時間が続けばいいのに』と思ってしまう人間です。
お酒を飲んでいると眠気がやってきますが、お酒を飲んでいなければいつまでもしゃべり続ける自信があります。こんな私ですから、「ここならいてもいいかな」と思える場をつくろうとすると、どうしても「人とつながっていること」や「この職場の人たちといるの楽しいな」と感じられる場にしたいと考えてしまいます。
これを読んでくださった皆さんが、どんなことを大切にスタートの場をつくっているかを教えてください!私も考えを広げたり深めたりしていきたいです。
ぜひ、コメントお待ちしています。
次回からは、教務主任としてではなく、研究主任として、校内研究について数回にわたり書いてみたいと思っています。これからもよろしくお願いします。
まだまだ暑さ厳しい日が続きますが、お互いにゆっくりのんびり楽しいを積み重ねていきましょう。
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