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第5回 職員会議、どうしていますか?(2)――勤務時間内にざっくばらんに話せる場へ

今回は、前回に引き続き、日本全国のほとんどの学校で行われているであろう職員会議について、お話したいと思います。

1.職員会議、ワクワクしますか?

前回は、現任校で3校目の私が、これまでにどのような職員会議を経験し、どのようなモヤモヤを感じてきたのか、そしてそれらを踏まえたうえで、どのような職員会議を目指していきたいのかということについてお話ししました。

さて、みなさんは、「今日の放課後、職員会議があるよー」と言われると、ワクワクしますか?

(そもそも職員会議以前に、「職員室でワクワクすることなんてない」という方もいらっしゃるかもしれませんが……。でもそういう方のためにこそ、本連載を書いていきたいと思っています。)

私は、職員会議をどうせやるなら、「集まってよかった!」「なんか楽しかったね」と思えるものにしたいのです。

現在、本校ではどんな職員会議を行っているのか、簡単に言いますと、実は職員会議の日までに、議案の検討をオンライン上で終えています。そして、職員会議当日は、議案を検討するために全教職員が集まっていた時間を、対話の時間に当てています。

今回は、具体的にどう行っているのかについてお話ししていきます。

2.職員会議が教職員のモチベーションを下げる一つの原因に……

職員会議については、法律に規定があります。

学校教育法施行規則
48条 小学校には、設置者の定めるところにより、校長の職務の円滑な執行に資するため、職員会議を置くことができる。
2 職員会議は、校長が主宰する。

https://laws.e-gov.go.jp/law/322M40000080011/20221001_504M60000080034

つまり、職員会議は、教職員で何かを決めることができる場所ではありません。あくまで教育活動の決定権は校長にあります。

ですが、校長が職員会議で私たち教職員が議論している様子を見ることによって、校長の判断に大きな影響を与えることができる場でもあります。

実際に、私が参加してきた職員会議をふり返ると、基本的には学校の全職員で取り組む学校行事や諸教育活動について、担当者や担当チームが起案した内容を全教職員で検討する場となっていました。

そして、教職員間で合意が得られた内容について、その議論を見守っていた校長が承認するというケースが多かったように思います。

その一方で、学校行事や取り組みを起案している担当者が、「新しいことをやりたいと思っても、実施する以前の段階で周りから『それはむずかしいんじゃないか』と言われ、チャレンジできなくなってしまう」と感じている姿を見たり、私も担当者としてそのように感じたりすることが何度もありました。

このような経験から、職員会議が教職員のモチベーションを下げる一つの原因になっているのではないか、何とかよりよいものにできないかという思いを持つようになりました。

また、ちょうどその頃、私には、学校は今のままでよいのだろうかという問題意識がありました。

さらに、「新しいことにどんどん挑戦していくような職員室をつくりたい」という思いも重なった結果、「担当者や担当チームの思いを尊重しながら、改善案も含めて真摯にフィードバックを行う」職員会議をめざして、行い方についての試行錯誤を重ね、現在のあり方に至りました。

ここに至るまでに約2年間をかけて学校の仕組みを変えてきています。

この2年間の歩みについては前回の記事をぜひ、ご覧ください。

第4回 「職員会議」、どうしてますか?

3.職員会議までに議案の検討を終えておく

くり返しになりますが、本校の職員会議は、「担当者や担当チームの思いを尊重しながら、実践後に厳しくフィードバックを行う」というあり方を最も大切にしています。このあり方は、4月のはじめに、全教職員で確認しています。

そして、そのあり方を具現化するために、「職員会議当日までにすべての議案の検討を終えている」ことを目指しています。基本的には、担当者や担当チームが起案するまでに学校長の学校運営方針を踏まえながら、何度も検討を重ね、起案しているものは「とりあえず、やってみよう!」というマインドを大切にしたいからです。

そんなことを言ったら、「職員会議を行う日」を設定する意味がないんじゃないか、という声が聞こえてきそうですが、その意味は最後にお伝えしますので、もう少しおつき合いください。

さて、本校の職員会議は、毎月1回行われます。

これまでの職員会議は、各月の職員会議が終了すると、翌月と翌々月の職員会議で予定されている検討内容が共有され、その内容について担当者や担当チームが起案し、全教職員で翌月の職員会議当日に検討するという流れでした。

それを次のように変更しました。

旭小学校の職員会議までの流れ

大きく変更した点は2つです。

まず、起案をする前に、必ず校長、副校長、主幹教諭を中心とした運営会議で、校長の方針を確認するということです。前々回の記事でお伝えした、せっかく考えたことが校長の運営方針と合わず、実践できないということがないように、事前に方針を確認しておくということです。

第3回 そろえるのではなく、「違い」を受け止め、尊重する

ただ、本校の益子照正校長先生は、「人権上、そして安全面で問題がなければ、基本的に任せる」という方針ですので、細かいことはおっしゃいません。

昨年度までの反省内容が踏まえられているかを確認されたり、校長に届いている地域・保護者の方の声を伝えてくださったりすることはあります。

ただ、そうは言っても、運営会議の場で伝えることができず、起案が始まっているときに伝えたいことが出てくることもあります。ただ、それをそのときに伝えると、起案している人が混乱する可能性があるので、それらについては実践が終わった後のフィードバックでお伝えいただく、という約束をしていただいています。

次に、職員会議の2週間前までに起案を完成させて、職員室内のみで活用している校内電子掲示板上で共有します。

そして、その共有された内容について、各学年で職員会議1週間前までに内容を確認・検討し、承認できるかどうかを校内電子掲示板上でコメントします。承認できない場合は、質問や代案を記します。それについて、できり限り提案者からコメントを返し、やりとりを重ねるなかで、職員会議当日までに承認が得られるように目指します。

校内電子掲示板で提案内容の確認・検討

今年度4月からこの行い方で職員会議をしていますが、「担当者や担当チームの思いを尊重しながら、改善案も含めて真摯にフィードバックを行う」というあり方を最初に確認しているので、質問は多く出されますが、起案について否定的なコメントは出ていません。

前回の記事でもお伝えしましたが、本校は校務分掌を3つのチームに分けており、起案の担当者は、その3つのチームのどこかに所属して、そこで考えを練り、起案するという流れになっています。

本校は各学年が3~4学級あるので、その規模を生かして、3つのチームに各学年1名以上が所属しています。自分の学年に担当者がいなくても、起案を練るプロセスに参加している教職員が1名以上、必ずいるので、担当者と同じチームのメンバーが、起案内容について口頭で必ず説明するようにしています。

この職員会議の行い方のポイントは、担当者が自分の学年にいなくても、同じチームのメンバーが口頭で説明できるようになっているということです。

私がこれまで働いてきて3校のすべてで、学校行事のように、全校で何かを取り組む際に、担当者任せになってしまっているなと思うことが多々ありました。

たとえば、私が体育主任を担当していたときの話です。

運動会について起案し、職員会議での検討を終え、全教職員で確認したはずなのに、後でちょっとした疑問が出てくると、「玉置さん、〇〇のことなんですけど……」「それは、職員会議の提案にも書いているんですけど…」などというやりとりをすることが多々ありました。

他方で私が担当ではないとき、担当者に質問して、「それは職員会議の提案にも書いていますが……」と言われてしまうことも多々ありました。

このやりとり、提案者からすると、「あんなに一生懸命起案したのにな……」と悲しい思いをします。

ですので、提案者以外の職員にも当事者意識をもって起案にかかわってほしいという願いも込めて、提案者でなくても、同じチームなら自分の学年のメンバーに起案内容について口頭説明をするという場面を意図的に設定しました。

各学年で起案について検討している際にも、提案者ではない同じチームのメンバーが、学年の人の質問に答えたり、不安を解消するような説明をしたりする姿が見られています。

このように行い方を変えることで、「担当者や担当チームの思いを尊重しながら、改善案も含めて真摯にフィードバックを行う」というあり方を具現化しようとしています。

4.勤務時間内にコミュニケーションをとれる場として

それでは、職員会議当日は、何をしているのでしょうか?

今、この45~60分を、全教職員での対話の時間としています。

この対話の時間のねらいは、「学校教育目標の理解を全教職員で深める」ということです。

みなさんもご経験があるでしょうが、学校教育目標について、ただ誰かの話を聞くだけだったり、研修を受けたりしても、それほど理解は深まりません。

第1回の記事でも書きましたが、組織をつくるために大切な3要素のうちの1つである「コミュニケーション」を促進する場にしたいと考えました。
第1回 職員室をみんなでつくろう

コミュニケーションを促進しようと考えた理由は、
①コミュニケーションが促進されていけば、同僚のことをくわしく知り、なかよくなれる
②なかよくなれば、そのチームへの貢献意欲もわいてくる
③貢献意欲がわいてくれば、おのずと学校教育目標の具現化に向けてどうすればよいかを話す機会も増えてくる
④学校教育目標の具現化にみんなで向かうことができれば、職員会議本来の目的である、校長の職務の円滑な執行に資することにつながる
と希望的観測をもったからです。

少し話がそれるかもしれませんが、コロナ禍以降、「職場の飲み会がなくなり、同僚とざっくばらんな話をすることが少なくなった」という声を管理職や僕のようなミドル層の年代からよく聞くようになりました。

また、「若い人を飲みに誘いたいけど、〇〇ハラスメントのようになるかもしれないから誘いづらい……」という声もよく聞こえます。

私は、若いころから先輩に、お酒のある席にたくさん連れていっていただきました(もちろん勤務時間です!)。

私の「知識」と「脂肪」は、先輩や同じ世代の仲間たちと居酒屋で培ったと言っても過言ではありません。

ですから私も、当初は「コロナ禍以降、飲み会が減った」ことを嘆く声に共感していたのですが、あるとき、そもそもコロナ禍以前から、子育てやさまざまな事情で飲み会に参加できない人はたくさんいたのではないか」という疑問が浮かんできました。

そう気づいたときに、勤務時間外の場にコミュニケーションを頼っていたというのは、そもそも組織のあり方として大間違いだったのではないか、勤務時間のなかに「飲み会のようなざっくばらんに話せる場」をつくるべきではないかと考えるようになりました(もちろんお酒は抜きです!)。

ただ、つくるといっても、こんなに忙しい放課後を過ごしているなかで「おしゃべりだけする場」を「さらに」増やされたら負担感しかありません。

それなら、今、ある時間でなんとかできないか? そうだ! 職員会議の起案を検討する時間なんかなくしちゃえ!という感じで、今の職員会議のあり方を始めたのです。

5.日頃話す機会の少ない人とこそ話すように

今年度、すでにこのやり方で、5月~7月までの3回、職員会議を行いました。

基本的には、
①アイスブレイク
②ペアやグループでのテーマトーク
と2つのことを行っているだけです。

アイスブレイクは、みんなで楽しく遊ぶことと、教室でも使えるヒントになればと私が教室で行っている活動を体験してもらっています。

テーマトークは、毎月私がテーマを設定しています。

●「4月1日に『こんな職員室にしたい!』と書いた『全体性のたまご』を見てどう思う?」(5月)

●「あなたのイメージする職員室(クラス)になっていますか?」(6月)

●「今、職員室やクラスを思い浮かべると、あなたが4月に書いた『全体性のたまご』に100点満点中何点をつけますか? それをよりよくするために、あなたはどんなことをしますか? 私たちにできることは何ですか?」(7月)

一見、同じようなトークテーマに感じるかもしれません。

私は、日々の忙しさに追われるなかで、年度当初に描いた「全体性のたまご」(第2回参照)を思い出し、自分がこの1年間、働くうえで大切にしたいと考えたことを見つめ直したり、修正したりとメンテナンスをすることで、教職員一人ひとりが「自分のために働いている」ということを常に感じ続けてほしいと考えています。

「全体性のたまご」をもとに対話する

私なりにいろいろと考えて取り組んでいるつもりではありますが、何よりも「この時間、みんなで遊んで楽しかった」「自分の話を聞いてもらえてうれしかった」「同僚の話を聞きやすくなった、自分でも話しやすくなった」といった思いが生まれる時間にしたいと考えています。

わざわざ勤務時間外に飲み会なんか開かなくても、勤務時間内にざっくばらんに話せる場がある。

それが大切なことだと考えています。

職員会議を行っている学校図書館には、6人がけのテーブルがいくつかあるのですが、1つのテーブルに同じ学年の人が座らないようにお願いをしています。

そのねらいは、みなさん言わなくてもおわかりでしょうけど、日頃話す機会の少ない人と話をしてほしいからです。

本校は、50名近くの教職員がおり、机の配置は学年ごとに固まっているので、日常的に話す人がどうしても固定しがちです。ですので、職員会議は、あえて日頃話す機会の少ない人とかかわってほしいのです。


学年バラバラに座って

先日、職員会議ではない研修で学校図書館に集まった際に、早めに来た教職員から「今日も学年バラバラで座りますよね?」と質問されました。

研修の本来の目的とは別に、こういう機会でいろいろな人と関係を広げようとすることが当たり前になってきているのかなと、うれしく感じる場面でした。

このやり方がよいかどうかはまだ分かりませんが、職員会議のように、学校に当たり前にあるものについても、今の組織にとって必要なのか、そうでないなら、どのようにすればよりよいものにできるのか(無くすことも含めて)と考え続けることを大切にしていきたいと思っています。

 (了)

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