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#9:ロンドンで『オペラ座の怪人』を観て、パリのオペラ・ガルニエを訪れる(と、帰国後のエトセトラ)

今回の旅行で、ロンドンでは『オペラ座の怪人』の舞台を鑑賞し、その後パリで実際にオペラ座を訪れました。
有料になっているのは帰国後の『オペラ座の怪人』鑑賞の感想パートです。


ロンドンの『オペラ座の怪人』

自分の中ではそんなに経っていなかったはずなのですが、実際は今は昔と言えるくらい前に、映画アンドリュー・ロイド・ウェーバー版『オペラ座の怪人』を映画館で観ました。
そしてかなりハマりました。

当時、自由になるお金はほとんど無く、昨今のような「推し」文化も無くて本当に良かったと思います。あったらきっと大変なことになっていました(笑)。

とはいえ、ここ10年以上は映画を観ることも無かったのですが、生の公演を観てみたいとは長く思っていました。
いつかブロードウェイの舞台と観たいと。

しかし…「いつか」は結局やってこないのです。ブロードウェイでは公演が無くなってしまいました。

今回ロンドンへ旅行するにあたって色々調べていくうち、どうやらロンドンではまだ『オペラ座の怪人』の公演を定期的に観られるらしいということが分かりました。
考えてみればアンドリュー・ロイド・ウェーバーはイギリスの人だし、始まったのがロンドン公演だから、ロンドンが本場かもしれない。
よし、せっかくの機会だし、観に行こう!

という訳で、かつて大好きだった『オペラ座の怪人』をついに生で鑑賞することになりました。
現地の事情通の方によるおすすめの座席を目を皿のようにして読みこみ、席番を決定。(詳細な情報、ありがとうございます)

この『オペラ座の怪人』は、劇場が集まるウェストエンドにあるHis Majesty’s Theatreヒズ・マジェスティーズ・シアターという、外観からして立派な劇場で上演されています。
エリザベス女王の崩御に伴ってHerがHisに変わりました。

入る前からドキドキです。
ドレスコードは特になく、スニーカーなどカジュアルな人も多かったです。
ただ個人的になんとなく敬意を表して少しマシな恰好で観劇したいなと思い、靴を履き替えたりしました。(この時のパンプスはこの一度しか履かなかったです(笑))
劇場内は割とこぢんまりとしていて、ステージが近くに感じました。ちなみに2階席です。

席に落ち着く前に、プログラムとビジュアル集の販売の声を掛けられました。
野球場のビールではありませんが、その場で現物を購入するようです。(後からもショップで買えます)
それを即購入!
シャーロック・ホームズ博物館ではテディベアを買うのにさんざん悩んだくせに、今回は一瞬で決めてしまいました。

プログラムとビジュアル集

前日の『ねずみとり』が初めてなくらい舞台鑑賞が初心者なので、こんなことを言うのは本当に初心者丸出しなんですが、ステージはひとつしか無いんですよね。
くどいですがこぢんまりとした劇場で、ステージも奥行きは横幅と同じくらいあるのかもしれないけれど、それでも横幅だって大した広さではないです。
小学校の体育館の隅にあったステージ…といっても分からないと思うんですが(笑)、つまりあんまり広くないなぁと思うくらいのサイズです。

にもかかわらず、このオペラ座の怪人のために隅々まで設計されているようで、さまざまな仕掛けが施されていて、ステージがあると思しき場所をフルに使った演出を観ることができました。
もちろんこの舞台を映画化したわけですが、私は映画が先だったので「映画のあの場面がそのまんま再現されている!」と興奮しきりでした。
特にあの有名な、ファントムがクリスティーヌを船で湖に連れていくときに水面にろうそくが浮き上がってくるところ。さっきまで床があったのに!
本当にステージはひとつしかないの?と思わずにはいられませんでした。

それに俳優たちの歌唱力の素晴らしいこと!

少し話が逸れますが、ウェストエンドを歩いているとストリートミュージシャンをよく見かけました。彼らのパフォーマンスのレベルがものすごく高いのです。さすがウェストエンド!と感動しました。

そしてこちらは劇場で歌うプロです。感動しないわけがありません。
この水準の歌声を本番一発勝負できめて、それを毎日!
すごいな、舞台俳優って!

あの"The Music Of The Night"では映画と違って、気絶したクリスティーヌをお姫様抱っこしなかったのですが、「あ、そうよね、毎日だから腰やっちゃったら困るものね」と勝手に納得していました(笑)。

またキャストが良くて、後からパンフレットで確認した情報を合わせると、クリスティーヌがロンドン公演では初のフランス人、ラウルが黒人男性、メグ・ジリーがMaiya Hikasaさんという親しみを感じる名前の方と、「さすがロンドン!」と配役でも感動しました。
クリスティーヌの歌声はドラマチックで素晴らしいし、ラウルもかっこよくて声が渋いし、なによりものすごく運動神経が良さそうでした。(2階の高さから地下まで飛び降りてたけど、あれ毎日やるの?)
さらに、支配人たちはコメディ的な役割も担っていますが、それを知っている観客を実際に笑わせられるというのはさすがの演技力です。

とにかく最初から最後まで大興奮の大満足でした。

舞台下のオーケストラ
ファントムテディベアもあります


帰国後に知ったのですが、West End LIVEという、ウエスト・エンドで上演中の人気ミュージカルのナンバーを出演者たちがトラファルガー広場で歌ってくれるイベントが6月にあったらしく、その動画が見られます!
私がロンドン・ナショナル・ギャラリーを訪れた時、目の前のトラファルガー広場はずっと封鎖されていたのですが、この設営のためだったのですね。

ファントム以外のキャストはおそらく舞台と一緒です!嬉しい!

ファントムは…もう少しシュッとしていたような…と思ったら、主演二人の"The Phantom Of The Opera"を披露する動画も見つかりました。
ファントムを演じていたジョン・ロビンスは、なんと今年のお正月に来日してニューイヤー・ミュージカル・コンサート2025というのに出演していたようです。


長年の夢だった観劇ができて幸せでした。ロンドンに来てよかった。

すっかり『オペラ座の怪人』熱が再燃してしまって、アマプラで舞台版の映像を購入して旅行中に繰り返し観ていました(笑)。



パリのオペラ・ガルニエ

『オペラ座の怪人』を鑑賞した翌朝、ロンドンを出発して今度はパリへ向かいました。

この日のパリ観光は特に何も予定していなかったのですが、前日の興奮が覚めやらぬ中だったので『オペラ座の怪人』の舞台、パリ・オペラ座(オペラ・ガルニエ)を見学することにしました。なんて贅沢!

少々ややこしいのですが、オペラ座と言ってたいていの人が思い浮かべるのが、1875年に完成した伝統的な建造物のガルニエ宮だと思います。公式サイトを見ると「パレ・ガルニエ」が正式なフランス語の名称のようです。
他に1989年に建てられたオペラ・バスティーユという新オペラ座があり、現在は基本的にオペラはこちらで公演されています。

また、今年2025年はガルニエ宮が150周年を迎えるため、色々と催しが開かれるようです。

オペラ通りを歩いていくと、ガルニエ宮に突き当ります。

大きな看板がかかっているので、こっちは裏側なのかな?と思ったら表側。どうやら改修中らしいです。今回の旅行中、有名な建造物から小道まで改修中の現場にずいぶん出くわしました。観光客が多いと傷むのも早いのでしょう。
フランスやイタリアはおしゃれで、工事のカバーにその建物の柄を入れて、せめて雰囲気だけでも味わわせてくれる場所が多かったです。
このオペラ座は格好の宣伝場所になっていましたが。(広告費高そう)

実際に中へ入ろうとすると、この左手に回る必要があります。

かなり混雑していたものの、その場でチケットを購入し入場することができました。現在公式サイトを見ると、人数が多いので事前予約で入場が保証されると書かれていました。やはり予約をしておくと安心かもしれません。

また個人で行かれる方は、マルチメディアタブレットサービスというiPad miniのオーディオガイドを借りるのを強くお勧めします。
美術館や博物館などでオーディオガイドを借りる機会は数多くありましたが、このガルニエ宮のガイドがダントツで充実していて面白かったです。

もちろんバレエやオペラを鑑賞しにガルニエ宮を訪れるのは間違いなく忘れられない経験になると思います。けれど、何しろこの歌劇場そのものが美しくて歴史的にも面白いので、内部を見学するだけでも十二分に楽しめます。

建てられた当時の様子もタブレットのガイドが視覚的に紹介してくれます。

中でも印象的なのが1964年にシャガールが手掛けた天井画『夢の花束』。
色合いがまさに花束で、さすがは「色彩の魔術師」です。
ただ、この絵を観た当初は「この絵でよかったのか?」と言うのが正直な感想でした。ガルニエ宮のような歴史ある建造物にふさわしい、重厚で伝統的な宗教画とか歴史画でなくてよかったのかと。

のびやかだけど、荘厳な建物の中にしてはのびやかすぎやしない?と

実際、シャガールの前は歴史画で有名なジュール=ウジェーヌ・ルヌヴーの『昼と夜のミューズと時間』が、1872年から1964年まで描かれていました。
しかし1960年、当時の文化大臣アンドレ・マルローがこの天井画を時代遅れのアカデミック絵画と認識して、シャガールに新しい絵を依頼したというのです。

https://www.musee-orsay.fr/fr/oeuvres/les-muses-et-les-heures-du-jour-et-de-la-nuit-20447

このアンドレ・マルローは、私の無知ゆえによく知らなかったのですが、日本文化の造詣も深く何度か来日をしていて、日本人にも有名だったようですね。
なかなかぶっ飛んだ人物で、『人間の条件』などを書いた作家でもあり冒険家でもあり…と、やると言ったら押しの一手でやってのけそうなタイプです。
シャガールによる新しい天井画は依頼が公表された時も実際に絵が公開された時も非難ごうごうだったらしいのですが、結局はその価値が認められ現在に至るわけです。

私のような素人から見てもはっきり分かるのは、ルヌヴーの絵からシャガールに変えたことによって確実に明るくなったでしょうね。
重厚で緻密な、ともすれば息苦しさを覚える歴史ある建物の中で、これだけは軽やか。観る側にとって「一分の隙」になってホッとできるような。

オーディオガイドの言葉を借りると、「この絵がオペラ座に新しい時代の風を吹き込んだのです」。
歴史的な歌劇場の中で、ここが外界と風通しできる場所なのかも。

もしかしたら、あと50年くらいしたら、今度はこのシャガールの絵を時代遅れと考えた影響力のある人がまた、その時代に合った天井画に変えるかもしれません。

そして取り換えられてしまった『昼と夜のミューズと時間』は、シャガールの絵が不評だった時のために取り換えられるよう保管され、オルセー美術館が保有しているということですが、私が訪れた時は同じオペラ座館内で観ることができました。

どうでもいいのですが、オペラ座ではシャガールに少々批判的だった私も、最近日本の美術館で鑑賞してからシャガールの良さにようやく気づき、今年のカレンダーはシャガールです(笑)。


そして、ありました!お待ちかねの…

ファントム専用の「2階5番ボックス席」です!

ちゃんと確保されています。
ボックス席は階段を上がってからぐるっと円形状になった場所から入るようになっています。ボックスごとに入り口のドアがあり、順番に見ていけます。
そしてこのファントムがリクエストした5番は奥まった場所にあたります。誰にも見られずこっそりと入るのにちょうどいい席なんですね。

奥の人だかりになっているところ
穴からのぞけます
のぞいたところ。けっこう広いです。

そしてマスカレードが歌われた大階段(グラン・エスカリエ)です。
人でごった返していましたが、この見覚えのある美しい造り。自分が舞台の中に入っているようでドキドキしました。

順路では始めの方で見られます。

しかし…こんな素敵な場所でも、早速「これがパリ!」を実感することになりました。悪い意味で。

ガルニエ宮の中で訪れた場所はどこもかしこも美しいのですが…トイレは除きます。オランダもロンドンもほとんど美術館などのトイレに立ち寄って問題なく過ごしていました。しかしパリは…ここに限らず他の美術館でもトイレはアレなことが多く、ある程度の覚悟が要求されます。

入るときも「Oh…」と思いながら入ったのですが、問題は出るときです。
というか、出られない!
鍵が回らなくなって開けられません。押したり引いたりしてガチャガチャガチャガチャするも、開かない…!閉じ込められた!

「そんな…ここから出られなかったら、こっちが怪人になるわ!」(必死)
と、大いに焦りながらガチャガチャ。

どうしたものか…と一瞬諦めかけたとき、カチャッと音がして鍵が回り、無事に脱出することができました。あー、びっくりした。


いつか実際に舞台も観てみたいです


このガルニエ宮は豪華絢爛で、しかも細部ひとつひとつにまで物語があり、いつまで説明を聞いていても飽きません。
見学は大満足でした。(トイレ以外)
日本なら蛍の光のような音楽が流れるのを耳にしながら、閉館ギリギリまでオーディオガイドの解説を聴いていました。
『オペラ座の怪人』ファンの方ならきっと楽しめると思います。


・参考資料



記事の内容は旅行当時の2024年4~6月の情報を基にしています。最新情報・正確な情報はご自身でお調べのうえ、ご確認ください。


さて、一連の観光としてはここまでなのですが、再燃してしまったオペラ座熱のために、帰国後に『オペラ座の怪人』をこれでもか!というくらい観まくりました。ちょうどよく映画の20周年記念の再上映や劇団四季上演があったりして、世間的にも2024年はオペラ座の怪人イヤーだったようです。
以下はそれらの感想です。

20年前のことを思い出したり、初の劇団四季を観劇したり、アマプラで観られる映画を全部観たり。その中で感じたり調べたりしたことを画像やYouTube動画を引用してつらつらとまとめました。
単なるミーハーの所感なので全公開するのは少々恥ずかしいなと思ったので有料にしました。

ご興味のある方だけ、リラックスした雰囲気でどうぞ。


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