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#4:ロンドン・ナショナル・ギャラリーでラファエロをひとり占めする

アムステルダムでの充実の滞在を終えて、今度はロンドンにやってきました。
初めてのロンドンで最も行きたかった場所は、世界有数の美術館であるロンドン・ナショナル・ギャラリーでした。「西洋絵画の教科書」と言われるほど幅広い時代の膨大な有名作品を保有しています。

ゴッホの『ひまわり』、ルノワールの『雨傘』、モネの『テムズ川と国会議事堂』、スーラの『アニエールの水浴』…などなど、印象派、新・印象派の名画が数多く所蔵されています。
それでも、このギャラリーの看板は、やはりレオナルド・ダ・ヴィンチの『岩窟の聖母』でしょう。ダ・ヴィンチ作品はテレビや書籍など目にする機会が多いので既に観た気になっていますが、実物は来日した作品を人でごった返している中、横目でちらっと観たことがあったくらいです。(立ち止まり禁止だったので)

そして忘れてはいけないのが、入場料が無料!
イギリスのほとんどの美術館や博物館が無料で楽しむことができるのです。
ロンドン・ナショナル・ギャラリーでも「市民のための市民の美術館」として、19世紀初頭の設立以来、広く一般市民にも一流の美術作品を触れる機会を提供してきました。
考え方が素晴らしいですよね!もしもロンドンに住んでいたら毎週通うでしょう。
日本で無料が現実的でなくても、この考えは浸透してほしい。美術は感性を鍛えて想像力を豊かにしてくれるので、誰でも気軽に楽しめるのが重要だと思っています。
仕事で煮詰まった時にふらっと立ち寄れたら素敵じゃないですか?

さて、入場料は基本的に無料でも特別展示は有料です。さらに常設展のみの場合でも、待ち時間を節約するため日時の予約をオンラインで済ませておくのをおすすめします。当日入場も可能ですが、私が訪れた当時は長い行列ができていました。2回予約しましたが、運よくどちらも直前でも予約できました。

主な展示は2階に集中していますが、かなり広いです。ダ・ヴィンチや13世紀の絵画の部屋からぐるっと一巡すると時代を追って鑑賞できます。…の、はずですが、それでも観たい絵がなかなか見つからずにずいぶんウロウロしたので、館内地図でお目当ての作品の目星をつけておくと安心です。
各部屋にはRoom番号が割り振られていて、ギャラリーのサイトで作品や画家から検索できます。


印象派作品は、やはり数が多くて堪能しました。特にゴッホ作品を多く鑑賞できた気がします。
ゴッホの代名詞とも言える『ひまわり』。
『ロンドン・ナショナル・ギャラリー 名画でひもとく西洋美術史』によると、ゴッホの7枚あるひまわりのうち、本作は4枚目にあたるもの。友情のあかしとして、アルルに共同生活のためにやってくるゴーギャンを迎える部屋に飾るために描いたようです。
3枚目までは背景は青色で、補色として黄色のひまわりが引き立っていました。それを同系色の黄色に変えたのですが、意外なことにさらにひまわりが引き立って見えます。ゴッホは黄色を幸福な色と考えていたようで、作品全体が明るくなったようです。
ゴーギャンとの楽しい生活を夢見てウキウキと描いたゴッホを想像すると微笑んでしまいます。(後の悲劇はおいておいて)

『ひまわり』はギャラリーの目玉のひとつで、紹介にも力を入れています。
サイトからは、キュレーターがこの作品の制作背景について解説してくれる動画を視聴することができます。



『岩窟の聖母』は、目の前に現れた時、信じられなくて一瞬呆然となってしまいました。長年ファンだったスターについに会えた気分…。
この上がカーブしている作品は、イエス・キリストが洞窟で産まれたという説に基づいて、洞窟を舞台にしていることを表しているようです。
全体的に暗い色調のこの絵を明るい部屋の一角で鑑賞するわけですが、もしも日の光が入ってこない小部屋にこれだけかけて、わずかなライトを上から差し込むように入れたらがぜん洞窟の雰囲気が出そう。

今回面白いなと思ったのが、オーバーツーリズムと言ってもかなり偏りがあること。有名どころに人が殺到する一方で、近い場所でもガラガラという状況が何度もありました。
異なる美術館だけでなく、美術館の中でも同様なのです。
このギャラリーでは、ラファエロの『アレクサンドリアの聖カトレア』が建物の正面の垂れ幕にプリントされていて美術館の顔のように扱われていました。しかし実際に入ってみると、ほとんどの人がダ・ヴィンチやゴッホのひまわりなどに夢中で、ラファエロのRoomはガラガラ!
椅子に腰かけて、ラファエロをほぼ独り占めできてしまいました。訪問した2回とも。
ラファエロのふわっとした柔らかな筆致が大好きで、それを心ゆくまで一人でじっくり眺めていられるなんて予想外の贅沢でした。
知らなかった作品も多く、また小さな絵が多かった印象です。ラファエロの細かな描き込みをじっと見つめていました。

ロンドンのど真ん中で一流の作品の数々を鑑賞できて、夢のような時間を過ごせる美術館です。

・参考資料


記事の内容は旅行当時の2024年4~6月の情報を基にしています。最新情報・正確な情報はご自身でお調べのうえ、ご確認ください。

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