改正民法817条12-2「子の利益のための父母間の人格尊重・協力義務」に関して
2024年5月17日に共同親権制含む民法等の一部を改正する法律が成立し、同月24日に公布されました。施行は公布から2年以内となっています。
改正民法817条12-2に「父母は、婚姻関係の有無にかかわらず、子に関する権利の行使又は義務の履行に関し、その子の利益のため、互いに人格を尊重し協力しなければならない。」という条文があります。
要約すると「子の利益のための父母間の人格尊重・協力義務」ということです。この条文は今後の家裁実務を変える鍵になると考えています。
まず、改正民法817条12-2違反は親権者変更や親権制限(親権剥奪、親権停止)の考慮要素になり得ることが国会審議で明示されました。民法改正後の親権者変更は一方から双方つまり単独から共同への変更もあり得ます。
改正民法817条12-2違反が親権者変更や親権制限の考慮要素になり得ることは何度も国会審議で明示されましたが、その一例を記載します。
R6年4月2日 衆議院法務委員会 発言No 198
(日本維新の会 池下卓先生の質疑に対する小泉龍司法務大臣の答弁)
「あくまで一般論でございますけれども、父母の一方が父母相互の人格尊重義務や協力義務等に違反した場合、親権者の指定、変更の審判や親権喪失、親権停止の審判等において、その違反の内容が考慮される可能性があると考えられます。」
次に、改正民法817条12-2違反の例示が国会審議で次々と明らかになりましたが、この中には「子の意思に反した交流制限」や「いわゆる連れ去り行為のあとの親子断絶」なども含まれています。
これらがうまく働けば、不当な親子断絶や交流制限は理屈上はできなくなります。この条文があることで、自身の親権を失いたくなければ「子の利益のための父母間の人格尊重・協力義務」を守る必要が出てきます。双方がこの義務を守れば双方が親権を維持することになる。つまり共同親権となります。単回の義務違反で今後義務違反はしないと評価されたらその場合も共同親権になるのではないでしょうか。
これらは条文にしっかりと記載されているわけではなく、国会審議での法務省からの返答でかつ「あり得る」という答え方なので家庭裁判所の運用次第になってしまいますが。。。
この条文は理念法なので法施行前でも効力を発し得ます。
法施行前にこの条文が効力を発するためには、この条文違反が親権者変更・親権制限の考慮要素になり得ることと、この条文違反の例示を裁判官や弁護士等の法曹界の方々に知っていただく必要があります。
そのために、各当事者が個人単位でできることは調停・裁判等で主張する際にこの改正条文を用いることと考えます。
この条文違反の例示を箇条書きにいたしますのでよろしければ各々の個人案件等でご使用ください。当該質疑答弁の国会審議の日付と、質疑された国会議員の先生の名称を記載しています。使用の際には該当日の国会審議を調べていただけますと幸甚です。
【改正民法817条12-2「子の利益のための父母間の人格尊重・協力義務」違反の例示】
(第213回 国会 衆参 法務委員会より)
1, 父母の一方が、特段の理由なく親子交流に関する協議を拒む場合(4月5日 衆議院 自民党 三谷英弘先生)
2, 父母の一方が、親子交流について取り決められたものの、特段の理由なくその履行を拒む場合(4月2日/4月9日 衆議院 日本維新の会 池下卓先生、4月5日 衆議院 自民党 三谷英弘先生、4月5日 衆議院 自民党 谷川とむ先生、5月9日 参議院 国民民主党 川合孝典先生)
3, DV・虐待からの避難などの急迫な事情がないのに、無断で子を転居させ特段の理由なく子と他方親とを一切交流させない場合(4月5日 衆議院 自民党 三谷英弘先生、4月5日 衆議院 自民党 谷川とむ先生、4月5日 衆議院 立憲民主党 米山隆一先生)
4, 理由なく急迫の事情もないのに他方親に無断で子の居所を変更する行為(5月14日 参議院 自民党 古庄玄知先生)
5, 濫訴つまり不当な目的でなされた乱用的な訴え(4月2日 衆議院 立憲民主党 道下大樹先生)
6, 合理的理由のない子の意思に反した他方親の学校行事参加への拒否行為(5月14日 参議院 日本維新の会 音喜多駿先生)
7, 別居親から子へのプレゼントを他方親が子の意思に反して捨てる行為(5月14日 参議院 日本維新の会 音喜多駿先生)
8, 他方親への悪口等で子がもう片方の親に疎外的な態度をとるようになったことが明らかな場合(5月14日 参議院 日本維新の会 音喜多駿先生)
9, 合理的な理由なく、例えば月1回数時間の日帰り交流が一般的だという理由で、子の意思に反して、子と他方親との交流制限を行っている場合(5月16日 参議院 日本維新の会 清水貴之先生)
【改正民法817条12-2 国会審議詳細】
原文ママ(衆議院は「委員」、参議院は「君」と呼称が変わるようです)
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1, 「父母の一方が、特段の理由なく親子交流に関する協議を拒む場合」
(4月5日 衆議院 自民党 三谷英弘先生)
発言No 033
○三谷委員
ありがとうございます。
続いて、養育費と親子交流についてお伺いします。
両親から愛情を持って育てられることは子の利益に資するものでありまして、それを形にするのが養育費の支払い、そして親子交流だと考えています。これらは車の両輪であるということを前提に、以下の質問をいたします。 今回の改正では、養育費の支払いにつきましては、履行確保の観点から先取特権を認める内容が入っております。他方で、親子交流については履行確保の手段というものが特段入っておらず、しっかりと親子交流の履行を確保することについては別途考えなければなりません。
その中で、特段の理由なく親子交流を拒む場合、親権者の変更を求める、あるいは居所指定権者の指定を求めて子供の居所を変更する、つまり、それまでの別居親の側に子供を移すことも可能だという理解でよいか、お答えください。
発言No 034
○竹内政府参考人
お答えいたします。
本改正案では、親権の有無や婚姻関係の有無にかかわらず、父母は子の人格を尊重してその子を養育しなければならないこと、また、父母は子の利益のため互いに人格を尊重し協力しなければならないことを明確化することとしております。 父母の一方が特段の理由なく親子交流に関する協議を拒んだり、親子交流について取り決められたものの特段の理由なくその履行を拒む場合、個別具体的な事情によりましては、父母相互の人格尊重義務や協力義務に違反すると評価される場合があると考えております。
そして、あくまで一般論としてお答えをいたしますと、父母の一方が父母相互の人格尊重義務や協力義務等に違反した場合には、親権者の指定、変更の審判や子の居所の指定に関する親権行使者の指定の審判等において、その違反の内容が考慮される可能性がございます。
その上で、本改正案では、裁判所は、親権者の指定、変更の申立てや親権行使者の指定の申立てにおいて、別居親からの申立てに理由があると判断する場合には、当事者、同居親に対して、他方の当事者、別居親に子を引き渡すことを命ずることもできることとしております。
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2, 「父母の一方が、親子交流について取り決められたものの、特段の理由なくその履行を拒む場合」
(4月2日/4月9日 衆議院 日本維新の会 池下卓先生、4月5日 衆議院 自民党 三谷英弘先生、4月5日 衆議院 自民党 谷川とむ先生、5月9日 参議院 国民民主党 川合孝典先生)
[4月2日 衆議院 日本維新の会 池下卓先生]
発言No 199
○池下委員 じゃ、確認なんですけれども、家裁が認めた親子交流を一方的に実施しなかった場合、親権変更の申立てにもなる、また、共同親権、婚姻時は共に親権を持っていますよという状況の中で、裁判所が離婚時に判断しますよ、家裁で判断しますよというときに、別居時に連れ去って会わせないとかというケースがあるかと思うんですけれども、そういうときに、片一方の親権、単独親権にする場合でもマイナス要素になるのかどうか、ちょっとお伺いしたいと思います。
発言No 200
○竹内政府参考人 お答えいたします。 本改正案によりますれば、親権者変更の申立ては、子の利益のため必要がある場合に認められることになります。また、裁判所がその判断をするに当たっては、子の利益のため、父母と子との関係や父と母との関係その他一切の事情を考慮しなければならないこととされております。 これらを踏まえまして、あくまでも一般論としてお答えをいたしますと、親権者変更の判断においては、父母の一方が子の養育に関する責任をこれまで十分に果たしてきたかや父母相互の人格尊重義務や協力義務を遵守してきたかも考慮要素の一つであると考えられます。
[4月9日 衆議院 日本維新の会 池下卓先生]
発言No 160
○池下委員 今後、調査研究というお言葉も出たんですけれども、今回は非常に大きな改正になります。ただ、当然、初めて単独親権から共同親権に変わる大きな改正になりますので、何年かたったら、やはり知見というのもどんどんどんどん積み重なってきて、いずれまた新しい改正ということになってくる可能性もあるかと思います。 そういうときに、今、今後研究ということで言われていたと思うんですけれども、そういうところも、まだ全然早い話なんですけれども、次の改正のときにしっかりと反映できるような形で調査研究の方を是非していただきたいという具合に思います。 ちょっと関連でお伺いをしたいと思うんですが、子の利益ということでお話もちょっと今あったんですけれども、では、実際、これは家庭裁判所で調停とか審判が下ったときに、先ほどもお手紙のお話をさせていただいたんですけれども、守られていないケースというのが本当にたくさんあるんです。法改正した後、どのように裁判所の決定やら審判やらが守られていくのか。ちょっと改めて大臣に、関連なのでお尋ねしたいと思います。
発言No 161
○竹内政府参考人 お答えいたします。 家庭裁判所において定められました、例えば親子交流等の条件でございますが、こういったものについては、家庭裁判所で定められた条件の内容が具体的に特定されていれば、間接強制というような手段もございますし、今回の改正におきましても、そもそも、親子交流の頻度や方法を定めるに当たっては子の利益を最も考慮しなければならないというような規律にもしているところでございますので、こういった規律を通じて守られていくものと考えております。
発言No 162
○池下委員 この間も私は同じような質問をしたんですけれども、間接強制ということで、罰金的なものが積み立ったとしても、履行勧告をして、勧告ですから促すだけですので、結局守られていないというところになって落ち着いちゃっているのか、そういうケースがたくさんあるよということを今日御紹介させていただいたんですけれども、もう一回ちょっとお答え願いたいと思います。
発言No 162
○竹内政府参考人 お答えいたします。 本改正案におきましては、親権の有無や婚姻関係の有無にかかわらず、父母は子の人格を尊重してその子を養育しなければならないことですとか、あるいは、父母は子の利益のため互いに人格を尊重し協力しなければならないことを明確化することとしております。 家庭裁判所が親子交流についての定めをしたものの、父母の一方がこれを履行しない場合、個別具体的な事情によりましては、先ほど申し上げました、父母相互の人格尊重義務や協力義務に違反すると評価される場合があると考えておりますし、あくまで一般論としてお答えをいたしますと、夫婦の一方が父母相互の人格尊重義務や協力義務等に違反した場合、親権者指定あるいは変更の審判や親権喪失、親権停止の審判等において、その違反の内容が考慮される可能性があると考えております。
[4月5日 衆議院 自民党 三谷英弘先生]
1, 「父母の一方が、特段の理由なく親子交流に関する協議を拒む場合」の竹内民事局長の答弁内に記載あり(発言No 199-200)
[4月5日 衆議院 自民党 谷川とむ先生]
発言No 060
○谷川委員 ありがとうございます。 また、親子交流を取り決めたにもかかわらず、同居親がその履行を不当に拒絶しているケースの場合、その後の親権停止、親権者変更の申立てがされたときに、その事情が同居親に不利益に考慮されるべきではないかと考えていますが、いかがですか。
発言No 061
○竹内政府参考人 お答えいたします。 本改正案では、親権の有無や婚姻関係の有無にかかわらず、父母は子の人格を尊重してその子を養育しなければならないこと、父母は子の利益のため互いに人格を尊重し協力しなければならないことを明確化することとしております。 親子交流について取り決められたものの、父母の一方がこれを履行しない場合、個別具体的な事情によりましては、父母相互の人格尊重義務や協力義務に違反すると評価される場合があると考えております。 そして、あくまで一般論としてお答えいたしますと、父母の一方が父母相互の人格尊重義務や協力義務等に違反した場合、親権者の指定、変更の審判や親権喪失、親権停止の審判等において、その違反の内容が考慮される可能性があると考えております。
[5月9日 参議院 国民民主党 川合孝典先生]
発言No 073
○川合孝典君 もちろんそういった取組は是非進めていただきたいんですけれども、様々なケースがあるがゆえに、それぞれのケースにどういうことが考えられるのかということについて考慮要素を明示化するということは私は必要だと思います。それが全くない状態で裁判所の判断に委ねてしまうということになるがゆえに、一体何でこういう判断になったのかということについて双方当事者が不満をお持ちになる、どちらの当事者も不満をお持ちになるということになれば、裁判所の信頼がむしろ失われることにもつながるということになるわけでありますから。 私は、この話をすると必ず、法務省さんと裁判所の方とで、それは司法の司法権の独立の問題ですからといったような話で、深入りした議論を避ける傾向がありますけれども、要は、指針を提示するということ自体について、そのことが即司法権の独立を侵害することには私はならないと思います。法律を改正して、それを運用していく上でどういう基準に基づいて物事を判断していくのかということを、そのことを一定部分提示した上で、それを参考に司法が判断を行う、裁定を行うということをすればいいと思いますので、しつこいようですけど、このことは何度でも私、指摘させていただきたいと思います。
次の質問に移りたいと思います。 裁判所が一定の裁定をして、例えば親子交流を認めたような事例があったとして、その親子交流が長年にわたって拒否されているような事例は今回の法改正によってどう変わるのかということ、ビフォー、アフター、どうなるのかということについて御説明をいただきたいと思います。
発言No 074
○政府参考人(竹内努君) お答えいたします。
本改正案では、親権や婚姻関係の有無にかかわらず、父母は子の人格を尊重してその子を養育しなければならないこと、父母は子の利益のため互いに人格を尊重し協力しなければならないことを明確化することとしております。 委員御指摘のような親子交流を含めまして、父母の一方が子の監護に関する裁判所の判断に従わない場合には、個別具体的な事情によってはこの義務に違反すると評価される場合があると考えておりまして、親権者の指定、変更の審判や親権喪失、親権停止の審判等においてそのことが考慮される可能性があると考えております。
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3, 「DV・虐待からの避難などの急迫な事情がないのに、無断で子を転居させ特段の理由なく子と他方親とを一切交流させない場合」
(4月5日 衆議院 自民党 三谷英弘先生、4月5日 衆議院 自民党 谷川とむ先生、4月5日 衆議院 立憲民主党 米山隆一先生)
[4月5日 衆議院 自民党 三谷英弘先生]
発言No 025
○三谷委員 ありがとうございます。 そして、もう一つ加えてお伺いします。特段の理由なく子供を連れ去って相手方に会わせないということ、これ自体は、引き離された側に対する精神的なDVに該当するというふうに理解をしておりますが、それでよいのか、お伺いします。 それからもう一つ。子供を理由なく引き離して相手方に会わせないということが仮にDVに該当するということであれば、親権者を決定するという判断において極めて不利益に考慮される事情となるというふうに承知をしておりますが、その点についてお答えいただきたいです。
発言No 026
○竹内政府参考人 お答えいたします。 まず、お尋ねの前段の部分でございますが、無断で子供を転居させ、特段の理由なく別居親と一切交流させないというような場合は、個別の事情にもよるものの、これにより心身に有害な影響を及ぼしたと認められる場合にはDVに該当する可能性もあり得ると考えられます。 後段についてですが、本改正案では、先ほど申し上げましたような夫婦相互の人格尊重義務や協力義務を規定しているところでございまして、お尋ねのような行為は、個別の具体的な事情によりましては、この義務に違反すると評価される場合があるものと考えられます。 また、本改正案によれば、親権者の指定の裁判においては、子の利益のため、父母と子との関係や父と母との関係その他一切の事情を考慮しなければならないとされておりまして、これらを踏まえ、あくまで一般論としてお答えをいたしますと、親権者の判断におきましては、父母の一方が子の養育に関する責任をこれまで十分に果たしてきたかや夫婦相互の人格尊重義務や協力義務を遵守してきたかも考慮要素の一つであると考えられます。
[4月5日 衆議院 自民党 谷川とむ先生]
発言No 054
○谷川委員 ありがとうございます。 警察においても、検察においても、引き続きこの問題に関しては周知徹底をしていただきまして、できるだけ子の連れ去りがないようにしていただきたいというふうに思っています。 本改正によって子の連れ去りが起こりにくくなるのか、御答弁をいただきたいというふうに思います。
発言No 055
○竹内政府参考人 お答えいたします。 現行民法では、どのような事情があれば父母の一方が子の居所の変更を含めた親権行使を単独で行うことができるのかが不明確であり、また、親権行使について、父母の意見対立を調整するための手続を設けていないといった指摘がされております。 これに対し、本改正案では、父母の離婚後もその双方を親権者とすることができることとしたほか、父母双方が親権者である場合は、子の居所の変更を含めて親権は父母が共同して行うとした上で、急迫の事情があるときは父母の一方が親権を単独で行うことが可能であるとし、父母の意見対立を調整するための裁判手続を新設することで、親権行使のルールを整理しております。 また、本改正案では、子に関する権利の行使に関しまして、父母が互いに人格を尊重し協力しなければならないとしており、父母の一方が何ら理由なく他方に無断で子の居所を変更する行為は、個別の事情によりましては、この規定の趣旨にも反すると評価され得ると考えております。 これらのことから、本改正案は、委員御指摘の子の連れ去りの問題の改善にも資すると考えております。
[4月5日 衆議院 立憲民主党 米山隆一先生]
発言No 208
○米山委員 安心いたしました。これは当然だと思うんですけれども。 次に、今度は、また似たようなお話で恐縮なんですが、これは、でも、議論の中の一つだと思うんですが、私、午前の三谷委員、谷川とむ委員の質問についてはちょっと違和感をやはり感じざるを得ないということで、通告していないんですけれども、同内容の中で質問させていただきたいと思います。 まず最初、三谷委員の質問に対する答弁で、連れ去りは親権の取得にとってマイナスという御答弁がございました。極論的に言うなら、それはそれであると思うんですよ。それは、本当に何の瑕疵もないというか、昨日まで仲がよかったのに、突然いなくなっちゃって、しかも連れ去っていったというなら、それは問題があると思うんですけれども、しかし、そうじゃないものってすごくいっぱいあると思うんです。だから、単にこの言葉が独り歩きするのは、本当にたった今、離婚やDVで苦しんでいる方々にとって非常にマイナスだと思いますので、それを質問させていただきたいと思います。 そもそもなんですが、先ほど来、特に自民党の委員の方々から、連れ去りという言葉が非常に、何かカジュアルに出されていることに私は本当に違和感を感じております。しかも、DVだったらそれはしようがないんだみたいな言い方をしますけれども、しかし、DVじゃなくたって、そういう場面はそれなりにありませんかだと思うんです。それがDVなのか、また、夫が、仮にしているのが夫側だとして、している側がそれを認識しているかどうかはともかくとして、されている側、ここでは仮に妻としますけれども、妻側は、DVとまでいくかいかないか分からないけれども、当面、夫の顔を見たくない、だから家を出ていく、それはあるわけですよ、別に。 私、本当に、冗談を言いたいわけでも何でもないんですけれども、うちの妻なんか、しょっちゅう家出するわけなんですよ。しかも、愛が足りないみたいな、そういう理由で家出するわけなんです。うちは未成年の子供はいませんから、妻は一人で出ていきますけれども、仮に未成年の子供がいたら、あの妻ですから、もう成人した子供はいるんですよ、子供に対する愛の深さを見ると、それは間違いなく連れていくだろうなと思うんです。私は特段非がないと思っているんですけれども。 でも、さらに、世の中によくある話として、ちょっと非のある夫がいる、ちょっと申し訳なかったということをして、そして家に帰ったら、もう実家に行きましたと妻が書いて、しかも子供も一緒に実家に連れていったなんというのは、巷間、正直よくあることじゃないですか。妻の側だって、けんかして、家を出たいことだってあるでしょう。家を出るんだったら、その旦那さんがまさか全部できるわけじゃなし、それは子供を連れていくでしょう。それをそこまで、何か連れ去りだの未成年者略取誘拐だのと言うのは、それは違うと思うんですよ。 しかも、最初はそんなつもりもなかった、ほとぼりを、冷めるつもりだと思ったけれども、どんどんこじれていって、実家に行ったまま離婚したという例だって、それはあると思うんです。それをそんなふうに悪く言うのって、かえって、妻にとってみたら、じゃ、ずっと我慢しなきゃいけないのか、むしろ、そんなのちょっと行った方がいいじゃないかと。行った結果、駄目なときは駄目であるけれども、それは冷却期間を置いたっていいじゃないかということだってあると思うんですね。 ですので、ちょっともう一度お聞かせいただきたいんですけれども、先ほど竹内民事局長は、子の連れ去りは人格尊重義務に反し、親権取得についてマイナスになる、またDVになることもあるとおっしゃられましたけれども、それはあくまで極端な例であって、例えば、今ほど申しました、奥さんとけんかしたり、それは夫とは限らないですよ、片方の配偶者に一定の非があって、でも、そんなひどいことをしようと思ったんじゃなくて、子供を連れて実家に帰りました、そういうような世の中によくあるような事案は、それはそんな、人格尊重義務に反するとか、親権の取得にマイナスになるとか、DVになるとかということはないということを確認させていただきたいと思います。
発言No 209
○竹内政府参考人 お答えいたします。 午前中の私の答弁でございますが、無断で子供を転居させ、特段の理由なく別居親と一切交流させないというような場合は、個別の事情にもよるものの、これにより心身に有害な影響を及ぼしたものと認めるときにはDVに該当する可能性があり得、個別具体的な事情によっては、父母相互の人格尊重義務や協力義務に違反すると評価されることもあり得るという趣旨のものでございます。 このように、あくまでも個別具体的な事情の下で判断されるものであるため、委員御指摘の、今挙げられたような、どのようなケースであればDVに当たるか否か、あるいは父母相互の人格尊重義務や協力義務に違反すると評価されるか否かについて、一概に申し上げることはなかなか困難なところでございます。
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4, 理由なく急迫の事情もないのに他方親に無断で子の居所を変更する行為(5月14日 参議院 自民党 古庄玄知先生)
発言No 037
○古庄玄知君 夫婦が別居するとき、子供さんが一人いらっしゃるときに、子供を置いたまま自分一人で家を飛び出すということは余り考えにくいと、やはり母親の方が小さい子供さんを置きっ放しにして出るということは考えにくいので、いわゆる子連れ別居というのが大半であろうと思うんです。この場合に、相手方、旦那さんなら旦那さんの承諾がないのが一般的です。 こういうふうな相手方の承諾なくして子供を連れて別居に至った場合、その子供を連れて外に出た母親というのは何らかの不利益を被るのか、そして、親権者を決するときにそれは不利益に考慮されるのか、それから、子供を連れずに一人だけで出ていくことは子供の利益に合致するのか。ちょっと質問の数、多いんですけれども、局長の方にお願いしたいと思います。
発言No 038
○政府参考人(竹内努君) お答えいたします。 委員お尋ねのような、夫婦の一方が相手方の承諾なく子を連れて別居するケースは現行の法の下でも生じ得るところでございますが、本改正案では、婚姻中を含め、父母双方が親権者である場合は、子の居所の変更を含めて親権は父母が共同して行うとした上で、急迫の事情があるときは父母の一方が親権を単独で行うことができるとし、父母の意見対立を調整するための裁判手続を新設することで親権行使のルールを整理しているところでございます。
また、本改正案では、子に関する権利の行使に関し、父母が互いに人格を尊重し協力しなければならないとしており、あくまで一般論としてお答えをいたしますと、父母の一方が何ら理由なく、すなわち急迫の事情もないのに他方に無断で子の居所を変更するなどの行為は、個別の事情によってはこの規定の趣旨にも反すると評価され得ると考えております。
そして、これもあくまで一般論としてお答えをいたしますと、父母の一方が父母相互の人格尊重義務や協力義務等に違反した場合、親権者の指定、変更の審判において、その違反の内容が考慮される可能性があると考えております。 他方で、別居の際に子供を連れずに一人だけで出ていくことが子の利益となるのかという委員のお尋ねにつきましては、個別具体的な事情によるため一概にお答えすることは困難ではございますが、あくまで一般論としてお答えをいたしますと、DVや虐待の場合はもちろん、子の年齢が低いような場合において、父母の一方がこれまで子の監護を行っており、他の一方がこれに関わっていなかったようなときは、監護を行っていた父母の一方が子を置いて別居することが子の利益を害することはあり得ると考えております。
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5, 濫訴つまり不当な目的でなされた乱用的な訴え
(4月2日 衆議院 立憲民主党 道下大樹先生)
発言No 146
○道下委員 ありがとうございます。 今、政府参考人の方に御答弁いただきましたとおり、この点については、我々国会議員がしっかりと認識して今後の法案の議論をしなきゃいけないと思いますし、国民の皆様にもこの点は多く知っていただきたいというふうに思っております。 それでは、外務省の参考人の方々、御退席いただいて結構です。 それでは、次に、親の責務等について伺いたいと思います。 改正案八百十七条の十二の二項でございますが、父母は、婚姻関係の有無にかかわらず、子に関する権利の行使又は義務の履行に関し、その子の利益のため、互いに人格を尊重し協力しなければならないというふうになっております。 この互いに人格を尊重し協力しなければならないということなんですが、これは婚姻中は当然だと思いますが、別居や離婚後にこれらがしっかりと尊重し協力されるのかということが、今問題となっているわけであります。 別居、離婚後に行われる、そうしたコミュニケーションが取れない以上に、暴力や暴言、濫訴などの行為、これは片仮名でポスト・セパレーション・アビューズといいますけれども、このポスト・セパレーション・アビューズは、互いに人格を尊重し協力しなければならないとの趣旨に反するという認識でよろしいか、大臣に伺いたいと思います。
発言No 147
○小泉国務大臣 御指摘のとおり、本改正案では、親権の有無や婚姻関係の有無にかかわらず、父母は、子の養育に関し、子の利益のため、互いに人格を尊重し協力しなければならないとされております。 どのような場合にこの義務に違反したと評価されることになるかは、個別具体的な事情に即して判断されるべきであるとは考えますが、あくまで一般論として申し上げれば、暴力、暴言、濫訴等は、この義務違反と評価される場合があると考えております。
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6, 合理的理由のない子の意思に反した他方親の学校行事参加への拒否行為(5月14日 参議院 日本維新の会 音喜多駿先生)
7, 別居親から子へのプレゼントを他方親が子の意思に反して捨てる行為
(5月14日 参議院 日本維新の会 音喜多駿先生)
8, 他方親への悪口等で子がもう片方の親に疎外的な態度をとるようになったことが明らかな場合(5月14日 参議院 日本維新の会 音喜多駿先生)
発言No 146
○音喜多駿君 今、法務大臣の御答弁いただいたとおりだと思います。やはりこれは、我々、国内法であるといっても、これは日本人の行動変容というのも期待されるものだと思いますし、ポジティブな効果があると思いますので、その点もしっかりと政府として私は発信していくべきだというふうに思いますので、よろしくお願いを申し上げます。 次に、まさに今御答弁もありました、子の利益に関する父母間の人格尊重、協力義務について伺います。 新条文の民法第八百十七条の十二第二項は、父母は、婚姻関係の有無にかかわらず、子に関する権利の行使又は義務の履行に関し、その子の利益のため互いに人格を尊重し協力しなければならないものとすることとあり、これが今回新設された、いわゆる子の利益に関する父母間の人格尊重、協力義務という、これは極めて重要なものであります。 裁判所が本改正後に親権選定をする際、この義務違反があったかなかったかも考慮要素の一つとなるということが、これまで衆参の委員会で法務省からも説明、答弁がなされてきました。ですが、当然、この義務は本改正で新設をされたものですから、これまで判例でこの義務について争われたケースはもちろんありません。そのため、裁判所は、今国会での議論も踏まえて事例ごとにこの義務違反かどうかを判断していくことになります。 そこで、少し細かいのですが、有識者や当事者が懸念している典型的なケースをここでは三つほど挙げて、義務違反に当たるのかどうか、当たらないのか、これを伺いたいと思います。
第一に、入学式や卒業式、運動会などといった学校行事参加に関して、同居親が合理的な理由なく、例えば顔を合わせるのが嫌だからといった理由で別居親の参加を拒否をしている場合。
第二に、別居親から子にあげたプレゼントを子に渡さない、子の意思に反して捨ててしまうなどの行為を同居親が行った場合。
第三に、片方の親の影響を受けて、例えば悪口を言い聞かせるなどで子がもう一方の片方の親に対して拒否的な感情を抱くに至った場合。
これらの場合について、新設される子の利益に関する父母間の人格尊重、協力義務を違反したことになるでしょうか。また、そのような行為をしている場合は親権選定のマイナスの考慮要素となるんでしょうか。できる限り具体的な答弁をいただければ幸いですが、法務省に伺います。
発言No 147
○政府参考人(竹内努君) お答えいたします。 本改正案では、委員御指摘のとおり、親権や婚姻関係の有無にかかわらず、父母は子の人格を尊重してその子を養育しなければならないこと、父母は、子に関する権利の行使又は義務の履行に関し、子の利益のため互いに人格を尊重し協力しなければならないことを明確化することとしております。 お尋ねのようなケースも含め、どのような場合に子に関する権利の行使又は義務の履行に関する父母相互の人格尊重義務や協力義務に違反すると評価されるかは個別具体的な事情に即して判断されるべきことでありまして、一概にお答えすることは困難なところではございます。 その上で、一般論として申し上げますと、父母の一方が合理的な理由がないのに子の利益に反する形で他方の親と子との交流を妨げたり、これは委員御指摘のAやBの事案に当たることがあるのかと思いますが、また、子の面前で他方の親の誹謗中傷をするなどの行為、これは委員御指摘のCの行為に当たるものと思います、このような場合には、これらの義務に違反したと評価される可能性があると認識をしております。
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9, 合理的な理由なく、例えば月1回数時間の日帰り交流が一般的だという理由で、子の意思に反して、子と他方親との交流制限を行っている場合(5月16日 参議院 日本維新の会 清水貴之先生)
発言No 142
○清水貴之君 一つ飛ばして、次、三の三の頻度や時間のところなんですけれども、おととい、これも音喜多議員が、子の利益に関する父母間の人格尊重、協力義務違反の具体例に関する質疑をしまして、民事局長は、一般的には、合理的な理由がないにもかかわらず親子の交流を妨げたりすることは条文に違反する可能性があるというふうな答弁をされています。 そこで、重ねて、加えて伺いたいんですけれども、子と別居親、別居の親が頻繁な交流を望んでいると、同居親じゃなくて別居の方、親がですね。ただ、その同居している側が、合理的な理由がなく、例えば、今は月一回、大体数時間ぐらいが、日帰りの交流がもう一般的ですよみたいな形で、子は願っているんだけど、子の意思に反して一緒に過ごしている親の方が交流の制限を行っている場合、これは子供の利益のためのこの人格尊重、努力義務に違反したというふうに判定されることもあり得るんでしょうか。
発言No 143
○政府参考人(竹内努君) お答えいたします。 委員お尋ねのようなケースも含めまして、どのような場合に子に関する権利の行使又は義務の履行に関する父母相互の人格尊重義務や協力義務に違反すると評価されるかは、個別具体的な事情に即して判断されるべきものでありまして一概にお答えをすることは困難ではございますが、一般論として申し上げれば、親子交流の頻度、内容等については子の利益を最も優先して考慮して定められるべきでありまして、同居親が合理的な理由なく子の利益に反する形で別居親と子との交流の頻度を制限する行為は、これらの義務に違反したと評価される可能性があると認識をしております。
【上記国会審議の議事録】
第213回国会
○令和6年4月2日 衆議院
○令和6年4月5日 衆議院
○令和6年4月9日 衆議院
◯令和6年4月25日 参議院
◯令和6年5月9日 参議院
◯令和6年5月14日 参議院
◯令和6年5月16日 参議院