見出し画像

【読書備忘録】「法律時報 2024年96巻12号 通巻1209号」日本評論社 [特集 子の養育をめぐる総合的検討]

「法律時報 2024年96巻12号 通巻1209号」日本評論社 
[特集 子の養育をめぐる総合的検討 4~54頁]


【企画趣旨】4~5頁
◯親の責務が重視されていることがわかる
◯親の責務で、子の意思が尊重されることが前提となっていることがわかる


「本特集は、改正法について本格的に運用が始まる前に、その内容のみならず、改正の経緯で明らかになった子の養育に関する理論的な問題を検討し、理論面・運用面での今後の課題を示すことを目的とする。また、民事法のみならず、関連する法分野、実務の視点からの検討も行うことで、子の養育を巡る問題が多様な法分野において論ぜられること、学説と実務の対話が進む契機となることも目指す」4頁

「改正法は民法817条の12第1項で父母による子の人格の尊重、同2項で父母間の人格の尊重を求める。民法で「人格」に関する規定が設けられるのは、令和4年民法改正における821条の新設に続くものである。池田論文は、それぞれの条文における「人格の尊重」の意味を検討した上で、これらの規定と改正前の諸概念(人格権・人格的利益)や理念(個人としての尊重・個人の尊厳)との関係を論じ、改正法の意義を明らかにしていく。一連の改正で、民法に「人格の尊重」という語が置かれたことの意義は、このように家族法学の枠を越えて、さらに検討が行われていくべきだろう」5頁

「条文において子の意思を尊重を明示することは見送られたが、子の人格を尊重する(改正後民法817条の12・民法821条)際には、子の意思が尊重されることが前提になっていると理解されており、また、子に親権者変更手続の申立権を認める(改正後民法819条6項)など、子の意思の尊重は、民法の中に理念として現れているといえよう」5頁

【親権についての理論的検討 -父母の双方か一方かの決定について-】
6頁~10頁
◯研究者側からしても、「子の利益」があいまいな概念であると認識していることがわかる
◯現行法で類型的に婚姻外は単独親権となっている理由に関して、共通した理解が確立していないことがわかる

「現行法では、類型的に、どのような場合に双方でありどのような場合に一方であるかが法定されていた(注釈:婚姻外は類型的に単独親権であるということを指していると思われる)。双方又は一方の振り分けがどのような根拠によってなされえちたかその趣旨は考えてみなければならないが、少なくとも、関係者や裁判所が双方か一包化を決める余地はなかった。これに対し、改正後は、双方か一方かを決める余地が認められたために、何を基準にどように決めるのかという新たな問題が生じてくる」6頁

「(前略)裁判所は「子の利益のため」に父母の双方か一方かを判断することとされる(改正後819条7項)が、「子の利益」というあいまいな基準を具体化するためには何を明らかにする必要があるのかという問いを立てて、検討する」6頁

「民法は、親権を法定し、これを私人の誰に割り当てるかを規定している。国や地方自治体にではなく私人に割り当てることを前提とし、私人のうちでは、親に割り当てるのであって、親でない私人には割り当てない。親に割り当てられる根拠としては、親は自然的な愛情をもってその子の利益を図る存在であること、子の身近にあって多くの情報に基づいて子の利益を図ることができるのが親であること、それぞれの親に親権を与えることですべての子どもに特定の価値観を植え付けることを避け多様性を確保することといった説明が考えられる。しかし、以上の説明から、親の双方なのか一方なのかという問いへの解を導くことはできない」7頁

「親権者を父母の双方とするか一方とするかについては、父母の協議による決定を認めず、強行的に枠付け、懇親しているか否かという基準により、個別事情を問わずに類型的に父母の双方又は一方に親権を割り当てるというのが、民法の構造であるとまとめられる。(中略)改正法は、このような双方か一方かを婚姻の有無に強行的に結びつけることを止めた」7頁

「消極的子の利益とは、子の利益のための国家介入を根拠づけるものとしての最低基準、限界として機能するものであり、積極的子の利益とは、目標、指針として目指すべきものである」8頁

「(前略)父母が離婚して一方を親権者と定める審判がなされた場合と、離婚していないが父母の一方が親権喪失の審判を受けた場合とでは、どちらも審判の結果父母の一方が親権者である状態となるという点では共通している。しかし、次のような理由から、両者は異なる性質の判断であると考えられる。まず、申立権者に違いがある。双方か一方かを判断する審判の申立権者は父又は母に限られるのに対し(改正後819条5項)、親権喪失は、子、その親族(父母を含む)、検察官等(834条)、さらには児童相談所(児童福祉法33条の7)が申立権を有する。効果についても、一方のみを親権者と定める審判の結果親権者とならなかった他方は親権者の変更の申立権を持つのに対し、親権喪失の審判を受けた父又は母は親権者を変更し自己を親権者にすることを求めて親権者変更の申立をおこなうことは認められないのではないか。これらの違いを踏まえれば、親権喪失は消極的子の利益のための家族に対する国家介入であるのに対し、親権者を双方と一方のいずれにするかの判断は、積極的子の利益の実現方法の仕組みの決定について父母の協議による決定が実現できないときに補完的に決定を行うためのものという性質の違いがあると考えられる」9頁

「(前略)判断基準の具体化が必要となるが、「子の利益」という基準はあいまいである。これを具体化するためには何を明らかにする必要があるだろうか。ひとつには、双方か一方かについての裁判所の判断の性質を吟味する必要があると考えられる。(中略)親権喪失事由に当たる程度の子に対する虐待行為等があると認められなくとも、改正後819条7項後段1号に該当するとして一報を親権者と判断しなければならないことがありうる」9頁

「そもそも現行法において婚姻中か否かによって双方の場合と一方の場合とを類型的に振り分け、個別の事案における父母又は裁判所による判断の余地を一切認めていないことの正当化の根拠又は説明が参照に値するはずであるが、共通した理解が確立してはいないように思われる。一方で、婚姻している父母は双方が親権者となるにもかかわらず離婚した又ははじめから婚姻していない父母は双方が親権者となるにもかかわらず離婚した又ははじめから婚姻していない父母の場合はどうして一方のみになるのかという問い方がありえ、このような問い方は、父母は双方が親権者となるのが原則であるとの考え方に支えられていると考えられる」10頁

【父母による子の監護のあり方】11~16頁
◯監護の分掌に関して、どのように取り扱うべきなのか研究者の中でも定まっていないことがうかがえる
◯親の責務が条文化されたことの重要性に触れられている

「本制度(注釈:父母の意見対立時の親権単独行使等について指摘している)は新設のため、裁判での判断基準のは今後の判断の積み重ねによるが、その際、比較法のほか、従前は親権者・監護者の変更で対応されていた点ではそこでの基準が参考になろう。なお、単独親権の下で共同の監護としたところ、監護事項で意見が衝突した場合は、親権者間の対立でないものの、監護も親権の一部といえるから、本条の適用ないし類推適用を認めるべきであろう」12頁

「改正法は766条1項に「子の監護の分掌」の語句を追加した。これにより、父母は、①監護事項の全部または一部を、②期間を付してまたは付さずに、分担することもできる(部会資料34-1・15-16頁)」13頁

「(前略)766条は監護に関する処分として監護費用・面会交流に関する処分を認めているところ、親権と監護費用負担・面会交流は別の問題と位置づけられているが、交代監護は面会交流の長期版なのか、あるいは親権・監護権の居所指定なのか、検討の余地がある」13頁

「監護者の定めは、当初、離婚後の親権者を原則として父とする明治民法において、乳幼児等を母の監護に委ねる点に意義があった。もっとも、母に寄る子の監護の実現の点は、その後、離婚後の母の単独親権が可能になったため、意義を失った(819条1・2項参照)。そのため、監護者の定めは第三者を監護者とする場合にのみ意義がある、とする主張もあったところである」14頁

「他方で、離婚後の単独親権の下で別途監護者を定める「親権と監護権の分属」には、一定の必要性が認められてきた。これには双方の合意に基づいて父母の共同親権を実質的に継続する場合と、反対に、単独親権の取り合い紛争の暫定的な受皿とする場合がある」14頁

「子の監護に関わる者が複数であることが、監護の適切な実現を阻害することは避けるべきである。監護に係る父母の関与を維持する場合、両者の協力的姿勢は不可欠である。今改正の審議過程ではDV対応事例を中心におよそ協力の前提を欠く事態がたびたび主張されていた。また、2010年代には面会交流の一事をめぐってすら父母の厳しい対立があることが指摘され続けた。以上の状況下、改正法は、父母すなわち親の責務として親権行使にあたっては「互いに人格を尊重し協力」すべきことを明文化している(817の12II)、この抽象度の高い規範がどこまで現実的機能を果たすかには疑問もあるが、父母による子の監護の不可欠の前提であり、訓示にとどまらない重要性を持つことになろう」16頁

【養育費についての理論的検討】17~23頁
◯法定養育費制度、先取り特権制度が行政の立替払い制度につながることが期待されているのがわかる
◯監護の分掌などの場合に養育費がどのようになるのか改めて検討が必要であることに触れられている

「現行法上、親の子に対する扶養義務の根拠は明確ではなく、学説上、877条1項とする説、820条とする説などが対立する状態にある。もっとも、通説(二元説)は、(未成年の)親の子に対する扶養義務を生活保持義務とし、877条に規定する他の親族間の扶養義務(生活扶助義務)とは異なる程度の高い義務として捉えており、実務もこの解釈を前提とした運用をしている」17頁

「成年に達しても高等教育中などの理由で親の扶養を受けている子(未成熟子)の法的地位も検討されていたが、改正には至らなかった」18頁

「(前略)養育費の分担は「子の養育を支えという非常に重要な意義をもっている」こと、「協議ができるのにしないことに対して、空白をもたらすという状態は子の不利益になるので、そのような不利益を子の甘受させることは正当化できない」、こうした理由から法定養育費の意義が語られている」19頁

「(法定養育費制度の権利行使主体が「父母の一方であって子を主に養育する者」ということになったことが前提の上で)改正法では共同親権をとることも認めらており、この場合双方が等しく監護をする可能性も否定できず、監護派の判断基準・要素をどうするのかは、今後より綿密な検討が必要となる」20頁

「今回の改正で浮彫になったより本質的な問題は、「養育費」の請求の権利行使主体が父母であることが維持されたことである。この権利行使が権利濫用となる場合において、法定養育費も先取特権も行使ができないのかという問題が生じる。また、権利行使主体の父母の一方が「権利濫用」とまではいえないが、子の利益にならない権利行使が問題となることもある。このような観点からみたとき、養育費の権利主体は、子であると考え(子の親に対する扶養請求権)、この構成をもとに父母は子の権利を代理して行使すると構成するか(代理権構成)、子の権利を代位して行使すると構成する(代位構成)のを前提とした制度を構築する方(いずれも第一の構成を前提にした二元的な構成となる)が、より子の利益にそった制度となった」23頁

「法定養育費と養育費等の先取特権が機能することで、養育費等の回収率があがるのであれば、行政機関による立替養育費を制度化することもより実現しやすくなる」23頁

「2024年改正に関連して、離婚後等に共同親権を採った場合には監護状況等が養育費の分担額に影響を与える可能性もある。現在実務で活用されている算定方式・算定表の基本概念とともに改めて検討しなければならない課題である」23頁

【子の養育と民事手続法】24~29頁
◯養育費と民事手続法に関して記載されている

【養育費の不払いと刑事罰】30~36頁
◯養育費の不払いと刑事罰に関してドイツ、アメリカの法律が例示されている
◯感想:アメリカ法にある裁判所侮辱罪は、決定した養育費の不払いのみでなく、決定した親子交流の不履行への適用も可能と思われる。本邦への導入も検討されてよいのではと思う

「裁判所侮辱罪は、一般に①裁判所の命令への不服従等の不適切な行為と②故意を容易権とする」34頁

「刑罰の峻厳さに鑑みれば、養育費の不払いに対する刑事罰の導入につき慎重な検討を求める法務省の態度は基本的に妥当である。もっとも、導入の是非を「刑事法の問題」として検討するための資料は必ずしも十分でないように思われる」36頁

【「人格の尊重」の一般性と子の養育における特殊性】37~42頁
◯抽象的概念である「人格の尊重」に関して考察されている
◯感想:「子の最善の利益」に関しては子どもの権利委員会 一般的意見に各定義の記載があるのでそちらを参照しながら論じていただけると子の「人格の尊重」に関しても議論が深まると考える

「(前略)規範の媒体たるテクストが変更されることで、ある内容の規範が裁判規範として存在するのみならず読者に行為規範として伝達されやすくなり、また、裁判規範としての解釈の幅が限定される(本稿の検討対象となる規定について言えば、人格を尊重すべきことを考慮しない解釈を封じることになる)」37頁

「(前略)「『人格の尊重』には子の意見等が適切な形で尊重されるべきとの考え方を含む」というのが、家族法制部会資料における最終的な説明であるが、そこでも「適切な形で」という留保が付されていることが重要であって、上記の趣旨で課されるところの子の人格の尊重は、子の意思の尊重と同義ではないはずである」39頁

「このたび民法典に新設された規定は、とりわけ親子の関係に関する民法817条の12及び民法821条は、子の養育という特定の場面における「人格の尊重」の役割を示すとともに、翻って「人格の尊重」という概念一般を更新する可能性を持つものだと思われる(中略)。「人格の尊重」は、我々の法の、そして社会や政治の、根幹に関わる概念であって、到底論じ尽くすことはできないものであるが、論じ続けなければならない。このたびの民法典の改正は、そのための素材を提供している」42頁

【夫婦間のDVと子の養育】43~48頁
◯DV対応に関して語られている
◯感想:DVをでっちあげることなどの指南があることが国会でも確認されていることから、DVの訴えが真であるかの評価などに関しても触れることでより議論に幅が出ると考える

「(前略)DVの主張がある他方親の同意がない別居については、他方親から子の引き渡しを求められても「急迫の事情」があるとの推定のもと、DVの不存在が証明されない限り親権妨害であるとはされない運用が望まれる」44~45頁

「DV状況があったとしても、その度合いや被害親の回復状況には濃淡がある。また、子も、DV状況下にいた場合であっても、加害親に会いたいと感じる、あるいは愛してほしいとの気持ちを持っていることも珍しくはない。健全な愛が注がれるか否か(中略)との被害親の不安はもっともなことも多いものの、子に決定的な危害が加わるのでなければ、いかにリスクを下げつつ子の意向を実現できるかを検討することが適切であると思われる」47~48頁

「親と子は別人格であり、親の望みが子の望みとは異なることは監護親、非監護親どちらの立場でもある。子の人格を尊重し、子の意向を十分に尊重した運用となることが望まれる」48頁

【子どもの意見表明権】49~54頁
◯子どもの意見表明権に関する説明
◯子どもの手続代理人の活動に関する説明
◯2010年に公表された『子どもにやさしい司法(child-friendly justice)に関する欧州評議会閣僚委員会ガイドライン』に関する説明
◯今回の法改正、特に『親の責務等』で期待されること
◯子どもにやさしい家事司法になるためにどうすべきかなどに言及
◯別席調停により『言いつけあい調停』になっていることを言及
◯感想:現在の弁護士実務が父母間の紛争をあおる形になっていることを指摘し、『子どもにやさしい離婚弁護士』実務が広がることを願っていることに心から共感する。別席調停の問題点なども共感する。研究者が具体的な手立てを総合的に講じていくことで『子どもにやさしい家事司法』が実現するかもしれないと期待できる記載内容。市民としては、『子どもにやさしい家事司法』実現のために情報を仕入れしかるべきところに伝え、変えてていくことが重要と思われる。

「子どもは自分の視点からものを見て、考え、自分なりの意見を持っている。子どもにきちんと耳を傾けることは子どもの人格を尊重するということであり、子どもの人権を保障するということに他ならない」50頁

「(前略)親、とくに同居親による子どもへの説明は、自分に都合よく不正確であることもある。裁判所からの子どもへの説明はなされていない中で、子どもが手続結果を正確に理解できるようにする役割を、子どもの手続代理人が果たそうとしている」51頁

「子どもたちが意見を表明するときに、聴いて欲しい相手は、裁判所というよりも、親たちであることが少なくない。子どもの意見表明が子どもにとって有意義なものになるためには、親たちがそれをどのように受け止め、それに基づいてどのように行動するかが重要な意味を持つ。子どもの意向に即して、親たちが自分の主張を修正したり別の案を真剣に考えたりするようになるかどうかがカギとなる」51頁

「子どもが「言えた、聴いてもらえた」と思えるために、親のサポートにあたる親の代理人弁護士が、重要な役割を担いうる」51頁

「子どもの参加を阻む障壁には、理念的障壁と実務的障壁がある。前者については、家族法専門職や裁判所関係者の子ども保護主義的な思想、子どもの能力を低く見積もる意識、子どもを親の所有物のように見る意識などがある。実務的障壁には、専門職が子を聴くために掛けられる時間の少なさや、聴くためのスキルの不足などがある」52頁

「法制審議会家族法制部会では、この第1項(注釈:改正民法817条の12第1項のこと)に当たる規定に子どもの意見表明という文言を明記すべきかどうかについて活発な議論が行われた。最終的には見送られたものの、子の人格の尊重という文言には「子の意見等が適切な形で尊重されるべきとの考え方」が含まれるという解釈を踏まえて要綱案が決定された。この規定により、子どもをめぐる紛争を取り扱う司法においても、子どもの声を聴く実務につながる運用がいっそう求められるようになったと考えるべきである」52頁

「今般の民法改正を契機に、子どもの人格を尊重する「子どもにやさしい」離婚弁護士の実務が広がることも期待したい。子どもの手続代理人の選任数は非常に少ないのに対し、親に弁護士がつく家事事件は増えており、以前に増して親の弁護士の活動が離婚紛争の帰趨に影響を与えるようになっている」53頁

「子どもにやさしい家事司法の実現には、司法内部の努力が必要であるし、子どもの手続代理人となる弁護士の確保も必要だが、並行して、親の代理人の活動を子どもの権利の観点から見直し、弁護士の側から「子どもにやさしい家事司法」を支えることが、今後の家事司法の発展に大きく寄与すると考えうるのである」53頁

「現状としては親の代理人もいろいろであり、依頼者である親の言う通りに攻撃的な主張をして依頼者を満足させようとする者や、継続的人間関係の要素を含む家事事件の特質を理解せず一般民事事件と同じような党派的弁護活動を行う者も少なくないようである」53頁

「親の代理人として依頼者の利益の実現に注力することは、依頼者への忠誠として、弁護士倫理の観点から正当化されうるものではある。しかしそれが過剰になれば、「過度な党派的弁護」「やりすぎ弁護」の弊害が生じる」53頁

「依頼者である親には、子の人格を尊重する責務があることを前提として、例えば離婚についての子どもへの説明の仕方や子どもの意見の聴き方について親の相談に乗ったり、相談できる専門家を紹介したりするといったことが考えられる」54頁

「他方配偶者の人格の尊重の観点から、弁護士として必要以上に相手方との対立をあおらない姿勢が求められる。両親間の対立をあおると両親が一層激しく傷つけあうこととなり、誹謗中傷やプライバシー侵害、時には暴力などの人権問題も生じうる。両者の紛争対立が激化・長期化すれば、成長発達の途上にある子どもを両親の紛争というストレス状態に長く置くこととなり、子どもの福祉を害するし、親たちの利益にもならない。さらに、父母が激しく争っている中では、子どもの声の抑圧や操作的な利用が生じやすくなるという問題もある」54頁

「裁判所の手続においても、家事調停が別席調停の形で行われることが多い日本では、相手の問題を調停委員会に訴える「言いつけあい」の調停になることが多く、そのような調停実務からの脱皮をはかり、家事調停を実質的な対話の場とすべきことが論じられてきたが、これをさらに子どもの権利保障の観点からも追求していく必要がある」54頁

「裁判所での調停や審判の運営の改善と並行して、弁護士が当事者を適切にナビゲートできるように、家事事件のための弁護士研修を充実させるなど、家事事件実務の質と専門性を高めていくための具体的な手立てを、総合的に講じていくべきである」54頁





いいなと思ったら応援しよう!