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【藤房農園日記】足元から大切にしたい
私は今、30年前に発生した大地震で被害を受け、そこから耕作放棄地になってしまった祖母の畑で農園主になろうと奮闘している。
それなりに青春を過ごし、仕事をし、自分の人生を楽しんできた私が子どもを産み、母になってから農園を継ごうと決意したのは、人生に影響を受けた3人の女性達が居たからである。
1人目は私の祖母
2人目は『地球の秘密』という漫画の著者、坪田愛華さん
3人目は園芸療法士の第一人者である先生
彼女達はみんなもう亡くなっている。
それも、みんな若くして。
祖母は私が幼い頃、鍬の振り方を教えてくれ、土地を大切にし、人を大切にし、自分の信念を大切にすることを教えてくれた。
坪田愛華さんは私が12歳の頃、著書に出会った。
彼女は『地球の秘密』を書き上げた数時間後、12歳という若さで亡くなっている。
著書を知った時、亡くなった彼女と同い年だった私は、環境問題に強く関心を抱いて、それを命をかけて作品に残してくれた彼女に、強く心を惹かれた。
園芸療法士の先生は生前、私を先生のアトリエと農園に招待してくださり、障害を持つ方達との農園作りや、人をサポートする事の楽しさや喜びを軽やかに、それでいて、筋が通った言葉で伝えてくれた。
私は彼女達の様に筋が通った、しなやかで強く優しい人になりたいと思った。
障害を持つ子どもをサポートする仕事に就いている私は、祖母と過ごした大好きな農園で、子ども達や、障害を持つ方々をサポートしながら、農園の環境を守っていきたいと考えるようになった。
その後、昆虫好きのパートナーのおかげで、農園に生息している沢山の昆虫の名前や生態を知ることができ、農園での生活はわくわくしたものになった。
子ども達や、ここを訪れる人達は、みんな想い想いに楽しく過ごし小さな昆虫に目を向け、じっと観察し、実った野菜やお米を食べ、命を身近に感じている。
環境問題というと世界の大きな問題という印象があるが、実は私達の足元に存在する土地、生き物、人、食べ物こそ、この世界を形創っていると日々実感する。祖母、坪田さん、先生からのメッセージはどれも、目の前の環境、人を大切にしてほしいということだった。
彼女達の言葉を胸に、私はこの足元にある環境を未来のためにずっと残していきたい。小さな活動でも、やがて大きな変化をもたらすと信じたい。今を生きる私がこの先に待つ未来のために出来ることを、日々考え続けたいと強く思うのだ。
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