対話 10


やっほっほ。久しぶりだね。

「おー。かなりぶりじゃない?もしかして。知らないうちに歳とってるし、少しいい顔をしている気がする。でも僕を呼んだってことは、あんまり精神状況は芳しくないんだろうね。」

そう。なんかいろんなこと考えちゃってさ、頭がぐるぐるしてどうしようもなくて身体が重かったり軽すぎたり、忙しいの。自分ってなんだっけ、なにがしたいんだっけ。

「それを僕に聞くのは御門違いでしょう。昔より離れてしまった僕らは、もう同じ思いではいられないし、僕のアドバイスはきっと今の君には響かない。…泣かないでよ。僕が、1番、かなしい。」

ごめんね、ごめんね。私が手放したはずの貴方をこんなにも求めている。諦められなかったもの達の集合体としての、貴方。諦める事ばかり上手くなったおかげで、今の人生になっちゃった。

ねぇ、わたし、笑えてる?

「昔から笑顔は素敵だった。僕と一緒だろうが、僕がいなくなろうが。何時だって君は上手く笑えない僕の代わりに笑ってくれていたよ。大人達にそれを見透かされた時も、1番近しい人に見透かしてもらえなかった時も、君は暴れる僕を傷つきながら宥め賺して血塗れで笑っていたさ。だから。」

今度は貴方が、わたしを救うのかしら。わたしは貴方を救ったことなんて、ないよ。貴方にしか救われなかったし、貴方にしかわたしを救えない。だってわたし達は。

「そうだね、そうだった。君は僕で僕は君だ。だから、欲しい言葉を綺麗にラッピングして差し出すよ。受け取らなくてもいい。昔と違って、もうカッターもおくすりも忍ばせないよ。」

は…はは。お互いに随分聞き分けが良くなってしまった。そんなことわかってたのに、貴方を呼び出さなくなってから幾ばくも経たずにこの有様だ。渇いた笑いしか、でない。

また来るね。
わたしの1番の理解者のいる、ここに。


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