おもいで
なんやかんやで文章を書くのは久しぶりな気がする。
前々日くらいに唐突に聞かれた、土曜日カラオケ行こうよという旨。地球が滅ばない限りは予定を空けるであろう自分に苦笑いをした。当然手拍子で返事をして、いつもの時間いつもの場所で待ち合わせ。「いつもの」という表現が出来るくらいには会っている事実に、幸せと不幸を感じた。本当にどうしようもない、な。
飲み屋を予約してくれたのは彼女で、カラオケを予約したのは私。最近やたら懐いてくれている会社の後輩ともカラオケ行きたいねぇという話をしていた癖に、そんなものはとうに消え去っていた。このご時世で営業してくれているお店で、ピザや軽いおつまみと共に数杯飲む。カラオケは20時からの予約だったから今日は帰ろうかな、なんて思っていた筈なのに。
「どうする?うち泊まる?」
「いいんですか…。泊まります…。」
そんな質問しないで欲しかった。嘘。あぁ、いつまで経っても貴女への恋心がなくならないじゃない。どうせ物理で離れてしまう癖に、どうして。落ち着いたかもと思う度に気のせいであることを思い知らされている。ちょっと雑な性質も、少しだけ柔いメンタルも、寝顔のひとつだって私のものにはならない。仕方ないと割り切っているのに、割り切れない我儘な自分もそこにいる。
見知った家。
見知った道。
見知ってしまった駅。
お風呂の足拭きの場所も、冷蔵庫の配置も、パジャマも、歯ブラシも、電気の消し方も、鍵のかけ方も、全部。ゴミを出して、洗い物をして、コロコロして、掃除機をかけて。
「優しいから頼っちゃう」
馬鹿ね、誰にでもするわけないでしょう。(馬鹿なのはどっちなんだか)
いつも先に目が覚めてしまうせいで、愛しさを募らせている。襲いたいとは思わないけれど、抱き合って眠りたいと思う。でも貴女が寝苦しいのは嫌だから、やっぱり抱き枕くらいでいいんだろうな。
どうしようもなくなったのでおわり。