おかえり。

あら、これはこれは。知ってる顔だねぇ。すっかり忘れかけていたんだけど、会うと意外と思い出してしまうもので。どこ行ってたの?こっちは相変わらずだよ。変わったことといえば髪の毛の色と生活リズム、そのくらいのもんさ。

「そっちが捨てたんでしょ」

…?あぁ、そうかそうか。そうだったかもしれない。言われてみればそんな気もしてきたね。名誉のために言っておくけど、捨てたわけじゃないからね。終わった、それだけの話だ。不思議なもんでね、昔と同じキミのはずなのにまるで違う心持ちだよ。昔聞いていたけどめっきり聞かなくなってしまった音楽のような、親しみ易いのに受け入れることは難い…嫌いになったわけではもちろんないんだけれど。

「で?なんでまた呼び戻してきたわけ?」

うーん、なんでだろう。おっとそんなに怒らないでくれよ。都合のいい話かな、キミからしたら。いろんな偶然だとか距離だとか、まぁ要はタイミングが噛み合ってしまったらしい。最後にキミを感じたのは半年以上前か…意外と最近だな…?私個人としてもこんなに早く呼び戻す可能性があるとは思っていなかったんだけど、自分の性質を少し軽視しすぎていたらしい。まだまだ自己分析が足りてないな。

「反省はいいのよ。どうすんの?ワタシのこと」

いつまでもドアの前に立たせているだけでは確かにお互いいい気分ではないし、決めなきゃいけないな。…でももう少し時間をくれないか…?まだ、ドアを開けるにも突き返すにも難しいんだ。ごめんなぁ。我儘なのは百も二百も承知だよ。

「いいよ、待ってあげる。どうせ待ちくたびれた頃にはわたしもいなくなっているんだろうし。それで?『いつ』の『だれ』なのかしら?」

さて、消えたと思っていたら恋心を思い出すまで、あと幾日でしょうか。

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