思い出した話
先刻あんな文章を読んであんな文章を書いたせいで、いろいろなことを思い出してしまったなぁ。
思い返せば、貴女の絶望の一欠片どころか一粒も私のものにはならなかったな。出来なかったし、してくれる人になるには余りにも何もかもが足りな過ぎたのは、分かってるんだけど。あの人の絶望の端っこを覗いた気になって、一喜一憂して、何も晒されてないの気がついたのはお別れして暫くしてから。あぁ、この人の奥の奥の奥にいくら潜り込んでも窒息死してしまうのが関の山だな、と思った。窒息死できたらまだマシなのかもしれない。ちっぽけな理性とか頑固な意地とか、何もかもが私の邪魔をしてくれてしまう。
誰かに依存する、という事の恐ろしさも温もりも等しく知っているからこそ、もう出来ない。したくないとは言わないけれど。当時、彼女に依存することは等しく破滅になるだろうと直感が告げていた。それが、好きだった。好奇心の強い自分が若気の至りで穴に落ちてみる選択をした。いろんな経験をさせてもらったけど、経験よりも、彼女の思考と文章には囚われたまんまなのかもしれない。時折書く文章も詠う短歌も、貴女の名残りだ。呪われたとも思う、感謝もしてる、笑ってしまう。
いつ会っても間延びした声であだ名を呼ぶ貴女はいつまでも誰のものにもならない癖に、誰かの何かだったりして。愛したものを捨てることも拾うこともよくやっていて。貴女の言う愛が好きだった。今は大分萎れた好意。
傲慢にも、他人を信じない人同士が一緒になったらどうなるんだろう、と思ったことがあった。どうにもならないんだろう。平行線が続くだけ、関係性も何もない。信じることと全てを分かつことは別物だし後者は不可能だと、ようやくわかるようになった。
他人はどこまでいっても他人。そんなことを教えてもらった恋。数多ある中の、ひとつ。