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中之島美術館に行きました


 昼休みに会社を抜け出して、中之島美術館に行った。
 納期だの、PDCAだのといったゴチャゴチした単語から離れて、薄暗い美術館にいるのは心地よかった。
 観光客の外国人と老人だけの中を歩く。
 数年前から私服での出社が認められるようになったから、パッと見は私も観光客のように見えたかもしれない。 

 中之島美術館は、大阪のオフィス街に突然現れる巨大な直方体の建物だ。
 黒い顔料を混ぜ込んだ凹凸のある外壁なので、直線的なつくりなのにどこか柔らかな印象をしている。

 目当ての展示を観るために、五階のフロアまで吹き抜けのエレベーターを螺旋に上がっていく。
 前に立つ年配の夫婦の潜めた話し声が、サワサワと耳をくすぐる。
 直線的な造りをした美術館の内部と、小さく柔らかく動く来館者たちが心地よく対比していた。

 五階の展示会場の入り口には、「塩田千春 つながる私」という朱色の案内パネルが掛けられていた。
 最初の展示は、真っ白な糸を天井から縦横無尽に張り巡らせた広い空間の真ん中に、水が張られているというものだった。
 展示名はもう忘れた。
 神経細胞を意識した作品だと書いてあったはずだ。

 その後も、人と人との関係を輪で表した作品や、天井から垂れた無数の赤い糸の中に紙が舞っている作品なんかがあったけど、正直意味はあまりわからなかった。

 現代アートなんて心の底から理解したことは一度もない。
 でも、わからないながらでも、一流とされている人たちの作品に耳を傾けている時間が好きだ。

 二十分ほど現実から離れた後に、また喧騒の中に戻っていった。

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