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“ルポ&イラストレーター”のしごと。


秋色から冬色に変わるとき。日々、季節の色を確かめるように、仕事場の窓からじっくりと山々を眺めています。ひんやり、しぐれと共に色を深めていく―。

夏越しの祓から、早いもので年の瀬を迎えます。
春には京都に新たな拠点を持ち、滋賀と京都、大阪を往復する日が続いて、せわしないようで、でもしっかり休むときは休んで、湖北の静かな生活にも、ずいぶん癒されました。


気が付けば、“ルポ&イラストレーター”の仕事を始めて10年が経ちました。
きっかけは、巫女を辞めてすぐ、雑誌の編集者である親友が、仕事依頼をくれたことでした。

京都の老舗店を取材し、コミックタッチでコマ割りのあるイラストルポにまとめるといった内容で、イラストレーターとして最初の仕事が、挿絵だけではなく、自ら取材することも付け加えてくれたことに、今では心から感謝しています。

そのおかげで、当初から“取材をする”と“絵を描く”がセットになった「ルポ&イラストレーター」という名刺の肩書を持つことに決めました。

それから、東京の大手出版各社への売り込みへ、その親友のコネクションを駆使して、同行までしてもらい、少しずつですが仕事をもらえるようになりました。

最初のころは、絵にまつわる依頼はすべて断らずお受けしていて「これ出来ますか?」に対して、とにかく何が何でも「出来ます!」で背伸びして受けた仕事がほとんどだったと記憶しています。今では当たり前になった、メールのやり取りや、編集作業など、何もかも未知の世界で、経験しながら学んでいき、その間、わからないことがあると、編集者の彼女にいつもヘルプを投げ続けていました。
いまだに彼女には、今更聞けない困った案件が湧いた時、助け舟を出してもらっています。


その後、滋賀のギャラリーと、京都・松尾大社にて、縁あって、人生初の個展を開催しました。会場となった松尾さんでは、出版社の社長さんと出会い、そこで自著の出版のお話をいただくこととなりました。私の人生において、松尾さんが結んでくださったご縁は、いまも計り知れません。
出版後には、“日本酒ガール”として、図らずもメディアに取り上げられ、人前で話をするお仕事も増えたり、予想もしなかった出会いや体験を色濃く経験させてもらいました。同時にプライベートも転機が重なり、辛いことも、人生のご褒美も、どっといっきに押し寄せたかのようでした。

「やらないで後悔するより、やって後悔するほうがいい」。
今でも身に染みていること。
たまに怖気づいてしまうときもあるけれど、自身の仕事に恥じることなく、驕ることなく、たんたんと歩くように心がけて。いっぱい失敗もしたし、沢山の方々に迷惑をかけてきました。実際は過去に恥じることいっぱい。だからこそ、今一番先の自分には、恥じないこころで進んでいってほしい。

巫女になるなんて思ってもみなかったし、イラストレーターにも、“日本酒ガール”にも、自身が予想だにしなかった肩書を身に付けてきました。
けれど、いつも、強く想い描いたことは必ず叶う経験も、不思議とたくさんあるのです。
そして、だれもかれも、予想だにしないしない人生を歩いていると思うと、なぜかほっとするのです。

そして今日も、初心を忘れず、もっともっと丁寧に絵を描いていきたい―、と切実に、自分に願っています。

静かな仕事場で、たったひとり、筆を走らすことに没頭していると、ふつふつとそんな気持ちが湧いてくるのです。



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