賤ヶ岳、天国へと昇るリフト。
GWに、木之本から車で10分ほど、賤ヶ岳を訪れた。
ふもとの駐車場から、リフト乗り場への階段を登るとき、どこからか流れ聞こえてくるノスタルジーな音楽。幻聴かと思うほど、自然にとけこむ導入BGM。そして階段を登り切ったとき、目の前の情景に思わず感嘆の声を上げた。
射干の花畑が一面に広がり、山の上までずっと続いている。その上をゆっくりと流れ来るリフトには、時折運ばれてくる人影が。無事生還を成し遂げた、奇跡を体験した人たちにも見えてきた。
我が家へ遊びに来ていた親族の甥っ子や姪っ子たちも、初めてのリフトにドキドキしながら、ひとりずつ運ばれていった。
清楚な射干の花の香りに包まれて、足に射干の花が触れる感触を確かめながら、空中散歩。心がざわざわする。静かに昇りつめていくリフトの高さにだんだんと怖さも感じつつ、その不安をかきけすように、搭乗中もどこからかノスタルジーなBGMは流れて続けている。記憶のどこかで見たような…不思議な懐かしさを覚え始めた。これは夢?
メルヘンな世界に迷い込んでしまったようだ。
射干の花は、とてもあの世に近い気がしていた。
それがこの日、確信に変わったような。
山頂でリフトを降りて、歩いて頂上へ。道中、かつての合戦で活躍した7人の武将「賤ヶ岳の七本槍」に因んだ顔はめパネルが、ひとりずつ導くようにお出迎え。山頂に居た武将はどこか寂しげ。
七つの顔はめを達成すれば、きっといいことある、かもしれない。
かつての合戦跡と聞いて、山頂から眺める景色は、もはや戦国時代。
水が引かれた田園に、水鏡が光る。
ボランティアガイドのおじいちゃん2人が、ぽつりぽつりとやって来る観光客に、合戦の詳しい経緯を話し伝えていた。
つわものどもが、ゆめのあと。
怖ろしい情景が広がっていたであろう地も、現代はひっそりとした観光地に。
そして全員無事に、この世へと生還。
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