大阪でバス会社全路線廃止
ついにこの日が来ました。
路線バス会社が、経営できない事態。
路線バスは、ほとんどが赤字で自治体の補助金で運行されているため、赤字でも何とかなります。しかし金剛バスは、運転手不足が全路線廃止の原因になりました。言わば従業員がいなくて経営破綻する労働倒産です。
全国のバス会社は、コロナ禍から、人手不足が深刻化し、運転手のやりくりがつかず減便しています。私の地元、鹿児島でも需要があるのに運転手がいないから半数近い便が減便されたところもあります。北陸鉄道石川線は、赤字ローカル線で廃止したいのに、バスの運転手がいないのでバス転換出来ず、鉄道を存続することになりました。今後運転手不足が原因で、減便や赤字ローカル線を廃止したくても廃止できない問題は全国各地で増えるでしょう。
原因は2つ考えられます。
1つ目は、運転手不足で退職者を再雇用するなどしてきましたが、退職者は既に70歳前後でこれ以上運転手を続けるのは体力や認知機能の低下で難しいと考えられます。下手したら免許返納が推奨される年齢の運転手にも再雇用をお願いしていたのでもう限界になっています。
2つ目は、現行の免許制度で大型2種免許は取得が難しく、費用もかかることです。バス業界の賃金では割に合わず、若い人がバス業界に入ってこないのも当然です。賃金や雇用慣行が他の産業と比べて魅力がないから若い人が入社しません。
1は予め予想出来ていました。従業員の年齢は会社が把握しているので、高齢化した運転手が多ければ若い社員を補充する必要があったはずです。これを放置してきたツケが回ってます。昔は運転手は稼げる仕事でしたが今は平均賃金以下。若者を採用せず、高齢者を雇うのは、年金受給しながら就労なので低賃金で使えるからという経営者もいます。これも年金受給年齢がどんどん引き上げられているので、ビジネスモデルとしては通用しなくなっています。この辺り、経営者が先を見通していないことが原因と考えられます。
背景に、大手企業だと人事異動が頻繁で、任期が短いから、成果を出すために人件費を下げて利益を上げることも考えられます。短い任期内の最大限利益のために長期的に人手不足に陥ることを無視してきたと言えます。
また、大手でも分社化などで度々経営体が変わっています。そのたびに賃金が下げられた運転手もいると聞きます。バス会社の経営のあり方がこれで良かったのか、外部の目で検証する必要があります。
2は、運輸行政、特に免許制度がここ20年くらいで、ころころ変わりすぎた弊害です。
若者が高校卒業と同時に普通免許で乗れる4tトラックなどの運転手になり、街中の配送業務で修業し、3年後に大型免許を取って10t以上のトラックで乗務。2年ほど経験を積んで2種免許を取ってバスの運転手にというキャリアパスは崩れました。トラックで修業してバスに転職は、大型車特有の排気ブレーキに慣れる、荷崩れしない丁寧な運転を身につけることで、乗客を安全に運べるようになるなど、実践的な良い経験でした。免許制度改変で、中型免許ができて。若者はお店に納品するトラックなどに乗れなくなりました。これでは運転手のキャリアパスが描けず、若者が運転手を目指すはずがありません。制度改変で、キャリアパスが描けなくなった、運転免許取得費用が高く、時間がかかるようになった、分社化などで賃金水準が下がった、これでは若者がバスの運転手になるわけがありません。
バス運転手の待遇改善、免許制度改善、免許取得支援制度の拡充を行い、運輸行政、バス会社経営者が目先の事象に囚われず、20年先を見通した経営をしなければ、大都市や大手であってもバスの運転手不足で減便どころか経営ができなくなる事態は今後各地で発生するだろう。
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