北海道鉄道貨物は連絡船復活がベスト
北海道の鉄道貨物が危機に瀕している。
青函トンネルの新幹線専用化は、札幌延伸で避けられない。新幹線高速化で低速の貨物列車が足枷になる以上に、札幌延伸で並行在来線の存廃も不透明だ。一応JR、自治体は新函館北斗~長万部間の函館本線を、貨物専用線として残すとしている。しかし、JR北海道の財務状況によっては、いずれ札幌近郊以外の鉄道が廃止になる可能性は高い。これにより、函館から先の北海道各地の在来線は分断されることが考えられる。
実際新幹線開業後は、函館~新函館北斗間、小樽~札幌は在来線存続が決まっているが、新函館北斗~小樽のうち、後志ブロックの長万部~小樽間は廃止の方向だ。渡島ブロックの新函館北斗~長万部間は、貨物専用鉄道として存続する方針となったが、JR、自治体で議論が紛糾する要素が多数あり、不透明である。仮に2030年頃の札幌延伸時は残っても2050年に残っている可能性は分からないし、個人的には2070年には維持出来ず廃線になる可能性も高いと見ている。実際自治体も存続に消極的である。何しろ地元の人はほとんど鉄道を使わない。実際札幌から函館への特急利用者を除くと、利用者は1日200人もおらず、昨今廃止された留萌線よりも利用者が少ない。北海道全体の貨物のために鉄道を残すのは、地元自治体負担で在来線を維持するという今のやり方では維持できない。何しろ沿線自治体は非常に人口が少なく、当然税収も低い。鉄道を維持する財力もない。赤字は年間27億円程度と推定される。規模の小さな自治体には重すぎる負担だ。北海道は鉄道維持に消極的で、常に費用負担は避けようとしている。国や北海道が国営、道営などで残さない限り廃止以外の選択肢はないだろう。それを考えると、新函館北斗~長万部間の在来線は、開業後の維持が非常に困難と言える。
私は代替案として青函連絡船の復活を提案する。いや、私が提案する前に、既に函館本線廃止を視野に入れて準備していると考えられる。
JR貨物は、来年から貨物船を保有する。これは青函連絡船運行のノウハウを蓄積するとも考えられる。存廃問題が不透明な中、JR貨物は、在来線が廃止されても北海道から本州へ貨物を運ぶあらゆる選択肢を用意しなければならないからだ。第二青函トンネルを掘るという話もあるが、その先の在来線が廃止されれば使えない。報道で、貨物も新幹線に移行するとされる、貨物新幹線も課題山積みで、とても札幌延伸に間に合うとは思えない。鉄道業界は、新しい技術の導入には慎重で、確立した技術しか使わない。現実は連絡船だろう。
既に青森、函館の両駅は、連絡船廃止から40年間近く経ち、連絡船の発着が出来る構造になっていない。連絡船を復活させるなら別の港が必要だ。特に北海道は、長万部より札幌寄りにしなければ道内と本州がつながらない。私は青森側を蟹田、北海道側を苫小牧が最適だと考える。
蟹田は、現在の蟹田港の北側に作る。津軽線を西から市街地外周を回り込むように線路を引ける。これにより津軽線蟹田以南を残すことが出来る。
北海道は、津軽海峡フェリーが就航する室蘭も良いと思った。複線の室蘭本線をそのまま
使える。しかし青森からは、亀田半島と絵鞆半島を避けてS字型に迂回する。蟹田から室蘭まで航路で約200km。現在国土交通省の補助金で標準的に作られるフェリーなら、5時間程度。苫小牧なら亀田半島から直線で航路を取れる。蟹田から苫小牧まで航路約210km。これも5時間程度。苫小牧の方が75km札幌に近いから、航路の時間が同じなら、陸路を走行する距離が短くなる分、1時間ほど時間短縮できる。苫小牧港の東の奥にある、沼ノ端駅付近に着岸すれば、そのまま東に線路を敷設して千歳線植苗駅付近で合流出来る。おそらく現時点で苫小牧で連絡船のターミナルを作れるのはここだろう。
船は、北海道と本州を結ぶ長距離フェリーで使われているものに準じれば良い。これらのフェリーは、九州航路と合わせて、国土交通省の補助で似たような形状、性能の船が運航されている。すでに規格が出来上がっていていて、安く作れるようになっているのだろう。国鉄時代の青函連絡船は、5000トン程度だったが、今の長距離フェリーは1万から1万5000トンと大型化している。揺れも少なく安定運航しやすい。速度も30ノット程度まで出せる高性能である。
列車の積み込みも、フェリーの主要顧客である大型トレーラー、特にコンテナを積んだトラックと在来線鉄道車両は大きさが近い。車両積み込み口を改造するだけで積み込みできる。中古船の改造でも対応出来るだろう。
旧国鉄の青函連絡船と比べて多くの車両が積めるようになるが、これだけ大型化するならトラックも積み込みたい。特にトラックは、2024年からドライバーの労務管理上、フェリーで運ぶことが必須となる。この時間を休憩時間として、北海道、本州の運転距離を短くすればドライバー不足問題の解決策になる。
また、フェリーは、基本的にトラックの輸送だけで黒字になるように設定されている。道路の主役は物流トラックである。それくらい航路におけるトラックの数は多い。青函連絡船も、トラックを中心に、貨物列車も運べば収益が安定する。旅客は最初から考えず、乗ってくれたら運が良かった程度に考えれば良い。
いずれにせよ、札幌延伸まで時間はあるようで無い。連絡船復活に向けて動き出すべきだ。在来線が廃止されてからでは遅い。