消費生活相談員資格試験にチャレンジ2023(6)
2022年度 消費生活相談員資格試験(独立行政法人国民生活センター実施)の問題・正解に簡単な解説等を付した記事シリーズ第六弾、第8問と第9問です。
8.次の文章のうち、下線部が2ヵ所とも正しい場合は○を、下線部のうち誤っている箇所がある場合は、誤っている箇所(1ヵ所)の記号を解答用紙の解答欄に記入(マーク)しなさい。
※誤っている箇所がある場合は、1ヵ所である。
① 製造物責任法において、「製造物」とは、製造又は加工された動産をいう。例えば、喫茶店で販売されている自家製ケーキは、㋐製造物に該当する。建物のエスカレーターは、㋑製造業者から引き渡される時点で動産であることから製造物に該当する。
正解:○
〔参照URL〕【国民生活センター】国民生活 2022年4月号(No.116)
【改めて学ぶ製造物責任法(PL法)】第8回 製造物と部品・原材料
https://www.kokusen.go.jp/wko/pdf/wko-202204_14.pdf
② 製造物責任法では、欠陥製品に起因する事故における㋐生命、身体又は財産に対する損害を賠償の対象としている。製造物の欠陥を原因とする火災により自宅が半焼した場合、欠陥のある当該製造物自体に生じた損害は、製造物責任法に基づく賠償の対象に㋑含まれない。
正解:㋑
〔コメント〕製造物責任法第3条ただし書きでは、「その損害が当該製造物についてのみ生じたときは、この限りでない」(=製造物責任による賠償責任を負わない)と規定しているが、問題文の事例では当該製造物のみに損害が生じているわけではないので、当該規定の適用はない(=製造物責任による賠償責任を負う)。
なお、「損害が当該製造物についてのみ生じたとき」は、製造物責任法ではなく、民法に基づく不法行為責任、契約不適合責任、債務不履行責任等を追及していくこととなる。
〔参照条文〕製造物責任法
(製造物責任)
第三条 製造業者等は、その製造、加工、輸入又は前条第三項第二号若しくは第三号の氏名等の表示をした製造物であって、その引き渡したものの欠陥により他人の生命、身体又は財産を侵害したときは、これによって生じた損害を賠償する責めに任ずる。ただし、その損害が当該製造物についてのみ生じたときは、この限りでない。
③ 「医薬品副作用被害救済制度」とは、医薬品等を㋐適正に使用し副作用で健康被害を受けた場合の被害救済制度である。この制度には、㋑対象外の医薬品がある。
正解:○
〔参照URL〕(独行)医薬品医療機器総合機構/医薬品副作用被害救済制度に関するQ&A
④ 消費生活用製品安全法によれば、「特定保守製品」の製造又は㋐販売の事業を行う者は、特定保守製品の点検その他の保守に関する情報の提供や、点検その他の保守の体制の整備を行わなければならない。特定保守製品の㋑所有者や賃貸業者は、特定保守製品の保守に関する情報を収集するとともに、点検期間に点検を行うなど保守に努めなければならない。
正解:㋐
〔コメント〕「販売」でなく、「輸入」の事業を行う者が対象。(消費生活用製品安全法第32条の2ほか)
⑤ 消費生活用製品が滅失又はき損した事故で、一般消費者の生命又は身体に対する危害が発生するおそれのないものは、消費生活用製品安全法の「製品事故」に㋐該当しない。消費生活用製品が滅失又はき損したが、一般消費者の生命又は身体に対する危害は実際に発生していない事故で、消防署が火災と判断したものは、「重大製品事故」に㋑該当する。
正解:○
〔参照条文〕消費生活用製品安全法
(定義)
第二条 この法律において「消費生活用製品」とは、主として一般消費者の生活の用に供される製品(別表に掲げるものを除く。)をいう。
2~4 (省略)
5 この法律において「製品事故」とは、消費生活用製品の使用に伴い生じた事故のうち、次のいずれかに該当するものであつて、消費生活用製品の欠陥によつて生じたものでないことが明らかな事故以外のもの(他の法律の規定によつて危害の発生及び拡大を防止することができると認められる事故として政令で定めるものを除く。)をいう。
一 一般消費者の生命又は身体に対する危害が発生した事故
二 消費生活用製品が滅失し、又はき損した事故であつて、一般消費者の生命又は身体に対する危害が発生するおそれのあるもの
6 この法律において「重大製品事故」とは、製品事故のうち、発生し、又は発生するおそれがある危害が重大であるものとして、当該危害の内容又は事故の態様に関し政令で定める要件に該当するものをいう。
消費生活用製品安全法施行令
(重大製品事故の要件)
第五条 法第二条第六項の政令で定める要件は、次のいずれかとする。
一 一般消費者の生命又は身体に対し、次のいずれかの危害が発生したこと。
イ 死亡
ロ 負傷又は疾病であつて、これらの治療に要する期間が三十日以上であるもの又はこれらが治つたとき(その症状が固定したときを含む。)において内閣府令で定める身体の障害が存するもの
ハ 一酸化炭素による中毒
二 火災が発生したこと。
⑥ SGマークは、製品安全協会が定めた認定基準に合格した生活用品に付されるものである。SGマーク賠償制度とは、SGマーク付き製品の欠陥による事故を原因とした㋐治療費等の人的損害を賠償する制度をいう。損害賠償の対象は、日本国内で発生した事故に㋑限られる。
正解:○
〔参照URL〕一般財団法人製品安全協会/よくある質問(FAQ)
⑦ 電気用品安全法では、㋐「電気用品」の製造又は輸入の事業を行う者は、事業届出義務や基準適合義務を負う。モバイルバッテリーは、㋑PSE マーク及び届出事業者の名称等を表示した製品でなければ、国内で販売することができない。
正解:○
〔参照条文〕電気用品安全法
(事業の届出)
第三条 電気用品の製造又は輸入の事業を行う者は、経済産業省令で定める電気用品の区分に従い、事業開始の日から三十日以内に、次の事項を経済産業大臣に届け出なければならない。
一~三 (省略)
〔参照URL〕【経済産業省】電気用品安全法/モバイルバッテリーに関するFAQ
⑧ ガス事業法において、「特定ガス用品」とは、㋐構造、使用条件等からみて特にガスによる災害の発生のおそれが多いと認められるガス用品であって政令で定めるものをいう。特定ガス用品は、原則として、㋑PSTGマークを付さなければ販売できない。
正解:○
〔参照条文〕ガス事業法
第百三十七条 1(省略)
2 この法律において「特定ガス用品」とは、構造、使用条件、使用状況等からみて特にガスによる災害の発生のおそれが多いと認められるガス用品であつて、政令で定めるものをいう。
〔参照URL〕【経済産業省】ガス事業法/ガス事業法の概要
⑨ 道路運送車両法によれば、自動車の製作者等は、リコールの際、国土交通大臣に対して事前に届け出る義務がある。この義務に違反した場合、刑事罰の㋐対象となる。後付装置であるチャイルドシートは、リコール制度の㋑対象でない。
正解:㋑
〔コメント〕チャイルドシートも、平成16年から特定後付装置としてリコール対象となった。
〔参照URL〕【国土交通省】自動車のリコール・不具合情報/よくあるお問い合わせ
【国土交通省】~後付装置リコール制度が施行されました~
9.次の文章のうち、下線部が2ヵ所とも正しい場合は○を、下線部のうち誤っている箇所がある場合は、誤っている箇所(1ヵ所)の記号を解答用紙の解答欄に記入(マーク)しなさい。
※誤っている箇所がある場合は、1ヵ所である。
① 人が契約などの法律行為をするには、行為の結果を判断するに足るだけの能力を有していなければならないとされており、これを㋐責任能力という。そのような能力を欠く者の法律行為は、㋑無効とされる。
正解:㋐
〔コメント〕㋐は「意思能力」が正しい。
〔参照条文〕民法
第三条の二 法律行為の当事者が意思表示をした時に意思能力を有しなかったときは、その法律行為は、無効とする。
② シロアリが発生しており駆除の必要があると考えて契約をしたが、実際には発生していなかった場合のように、契約の基礎とした事情について表意者の認識が真実に反する錯誤については、その契約の基礎とした事情が契約の目的及び取引上の社会通念に照らして重要なものであって㋐表示されていたときに限り、意思表示を取り消すことができる。表意者が㋑重過失により錯誤に陥っていた場合には、原則として取り消すことができない。
正解:○
〔参照条文〕民法
(錯誤)
第九十五条 意思表示は、次に掲げる錯誤に基づくものであって、その錯誤が法律行為の目的及び取引上の社会通念に照らして重要なものであるときは、取り消すことができる。
一 意思表示に対応する意思を欠く錯誤
二 表意者が法律行為の基礎とした事情についてのその認識が真実に反する錯誤
2 前項第二号の規定による意思表示の取消しは、その事情が法律行為の基礎とされていることが表示されていたときに限り、することができる。
3 錯誤が表意者の重大な過失によるものであった場合には、次に掲げる場合を除き、第一項の規定による意思表示の取消しをすることができない。
一 相手方が表意者に錯誤があることを知り、又は重大な過失によって知らなかったとき。
二 相手方が表意者と同一の錯誤に陥っていたとき。
4 (省略)
③ 未成年者が親権者など法定代理人の同意を得ないで売買契約などの法律行為をした場合、未成年者自身が㋐単独で取り消すことができる。例えば、未成年者が化粧品を購入して、一部を費消した場合、当該売買契約を取り消すことができるが、この場合、未成年者は㋑費消した化粧品を現状のままで返還すればよい。
正解:○
〔参照URL〕【東京都】未成年者契約の取消し
④ 未成年者Aが、親権者に内緒で美容医療契約を締結した。Aが成年になった後、契約相手の事業者Bが1ヵ月以上の期間を定めて取り消すかどうか回答するよう催告をして、期間内に回答がないときは、Aは美容医療契約を㋐追認したことになる。BからAへの催告に対する回答期間を1ヵ月とした場合、1ヵ月の期間の計算については、Aがその催告を受け取った日を㋑1日目として算入しない。
正解:○
〔参照条文〕民法
(制限行為能力者の相手方の催告権)
第二十条 制限行為能力者の相手方は、その制限行為能力者が行為能力者(行為能力の制限を受けない者をいう。以下同じ。)となった後、その者に対し、一箇月以上の期間を定めて、その期間内にその取り消すことができる行為を追認するかどうかを確答すべき旨の催告をすることができる。この場合において、その者がその期間内に確答を発しないときは、その行為を追認したものとみなす。
2~4 (省略)
第百四十条 日、週、月又は年によって期間を定めたときは、期間の初日は、算入しない。ただし、その期間が午前零時から始まるときは、この限りでない。
⑤ 金銭消費貸借契約において、貸主が権利を行使することができることを知った時から㋐5年間、又は権利を行使することができる時から10 年間権利を行使しないときは、借主が時効の効力による債権の消滅を主張することにより、貸主は返済を求めることができなくなる。借主は、時効完成による債権消滅の利益を契約締結時に放棄する旨の意思表示をしていた場合、時効の効力を㋑主張することができない。
正解:㋑
〔参照条文〕民法
(債権等の消滅時効)
第百六十六条 債権は、次に掲げる場合には、時効によって消滅する。
一 債権者が権利を行使することができることを知った時から五年間行使しないとき。
二 権利を行使することができる時から十年間行使しないとき。
2~3 (省略)
(時効の利益の放棄)
第百四十六条 時効の利益は、あらかじめ放棄することができない。
⑥ ある時計について無権利のAからその時計を購入したBが、平穏に、かつ、公然と時計を利用するようになった場合、Bは、Aの無権利について㋐善意であり、かつ、善意であることについて過失がないときは、即時にその時計の権利を取得する。これを即時取得という。即時取得は、㋑不動産取引においても認められる。
正解:㋑
〔コメント〕即時取得は、「動産」についての規定。
〔参照条文〕民法
(即時取得)
第百九十二条 取引行為によって、平穏に、かつ、公然と動産の占有を始めた者は、善意であり、かつ、過失がないときは、即時にその動産について行使する権利を取得する。
⑦ 2022(令和4)年5月1日に締結した売買契約において代金の支払いが遅れ、買主が遅延損害金の支払義務を負う場合、遅延損害金についての特約がなければ、買主は、㋐年5%の法定利率に基づく遅延損害金を支払わなければならない。地震などの不可抗力によって代金の支払いが遅れた場合、買主は遅延損害金の支払義務を㋑負う。
正解:㋐
〔コメント〕令和2年4月1日から令和8年3月31日までの法定利率は、年3%。
〔参照URL〕【法務省】令和5年4月1日以降の法定利率について
https://www.moj.go.jp/MINJI/minji07_00317.html
⑧ 契約の解除は相手方に対する意思表示によることとされており、当該意思表示は㋐撤回することができない。また、骨董品の売買契約を締結した後に、骨董品が割れてしまって引渡しができなくなってしまったという場合、履行不能となるが、履行不能を理由とする解除の場合、㋑催告は不要である。
正解:○
〔参照条文〕民法
(解除権の行使)
第五百四十条 契約又は法律の規定により当事者の一方が解除権を有するときは、その解除は、相手方に対する意思表示によってする。
2 前項の意思表示は、撤回することができない。
(催告によらない解除)
第五百四十二条 次に掲げる場合には、債権者は、前条の催告をすることなく、直ちに契約の解除をすることができる。
一 債務の全部の履行が不能であるとき。
二 債務者がその債務の全部の履行を拒絶する意思を明確に表示したとき。
三 債務の一部の履行が不能である場合又は債務者がその債務の一部の履行を拒絶する意思を明確に表示した場合において、残存する部分のみでは契約をした目的を達することができないとき。
四 契約の性質又は当事者の意思表示により、特定の日時又は一定の期間内に履行をしなければ契約をした目的を達することができない場合において、債務者が履行をしないでその時期を経過したとき。
五 前各号に掲げる場合のほか、債務者がその債務の履行をせず、債権者が前条の催告をしても契約をした目的を達するのに足りる履行がされる見込みがないことが明らかであるとき。
2 (省略)
⑨ 購入したものと違う種類の商品が引き渡された場合、引き渡された商品が契約で予定していた品質より劣っていた場合、あるいは、引き渡された商品の数量が不足している場合には、買主は、売主に対して、追完請求として㋐代替物の引渡し、目的物の修補又は不足分の引渡しを求めることができる。追完請求が認められた場合、㋑代金の減額を請求することができる。
正解:㋑
〔コメント〕代金の減額請求ができるのは、追完請求しても履行されなかった場合。
⑩ 金銭消費貸借契約において借用書を作成した場合、借主は、㋐金銭を受け取る前であれば契約を解除することができる。当事者間において返還時期の定めを設けなかった場合、借主は㋑貸主から請求があったとき、直ちに返還しなければならない。
正解:㋑
〔参照条文〕民法
(書面でする消費貸借等)
第五百八十七条の二 (省略)
2 書面でする消費貸借の借主は、貸主から金銭その他の物を受け取るまで、契約の解除をすることができる。この場合において、貸主は、その契約の解除によって損害を受けたときは、借主に対し、その賠償を請求することができる。
3~4 (省略)
(返還の時期)
第五百九十一条 当事者が返還の時期を定めなかったときは、貸主は、相当の期間を定めて返還の催告をすることができる。
2 借主は、返還の時期の定めの有無にかかわらず、いつでも返還をすることができる。
3 当事者が返還の時期を定めた場合において、貸主は、借主がその時期の前に返還をしたことによって損害を受けたときは、借主に対し、その賠償を請求することができる。
⑪ 示談交渉を弁護士に依頼するなど、法律行為を委託する契約を委任契約といい、業務の依頼を受けた者は、委任事務の処理に対して、㋐善管注意義務を負う。法律行為ではない事務を委託する契約は、㋑事務管理という。
正解:㋑
〔コメント〕法律行為ではない事務を委託する契約は、「準委任契約」。「事務管理」は、特に委託等はされておらず義務もないのに、他人のために事務の管理を行うこと。
⑫ ある会社の従業員が会社保有の顧客の個人情報を誤って漏えいしてしまい、顧客に損害を与えた場合、漏えいした従業員は、顧客に対して、㋐不法行為責任を負う。会社が従業員の選任と顧客の個人情報の管理体制の監督について相当の注意をしたとき、その会社は、当該従業員の使用者として、顧客に対する㋑不法行為責任を負わない。
正解:○
〔参照条文〕民法
(不法行為による損害賠償)
第七百九条 故意又は過失によって他人の権利又は法律上保護される利益を侵害した者は、これによって生じた損害を賠償する責任を負う。
(使用者等の責任)
第七百十五条 ある事業のために他人を使用する者は、被用者がその事業の執行について第三者に加えた損害を賠償する責任を負う。ただし、使用者が被用者の選任及びその事業の監督について相当の注意をしたとき、又は相当の注意をしても損害が生ずべきであったときは、この限りでない。
2~3 (省略)