消費生活相談員資格試験にチャレンジ2024(4)
2023年度消費生活相談員資格試験(独立行政法人国民生活センター実施)の問題・正解に簡単な解説等を付した記事シリーズ第四弾、今回は第7問と第8問をお送りします。
7. 次の各文章が、正しければ○、誤っていれば×を解答用紙の解答欄に記入(マーク)しなさい。
① 旅行業法では、旅行業協会に加入する旅行業者は、営業保証金の供託又は弁済業務保証金分担金の納付のいずれかを選択することができるとされている。
正解:×
〔コメント〕旅行業者が旅行業協会に加入する場合は、弁済業務保証金分担金の納付が必須となる。
〔参照条文〕旅行業法
(弁済業務保証金分担金の納付等)
第四十九条 次の各号に掲げる者は、当該各号に定める日までに、弁済業務保証金に充てるため、弁済業務規約で定める額の弁済業務保証金分担金を旅行業協会に納付しなければならない。
一 旅行業協会に加入しようとする旅行業者 その加入しようとする日
二 第四十一条第一項の指定の日に旅行業協会の社員である旅行業者 前条第一項の観光庁長官の指定する弁済業務開始日の一月前の日
2~4 (省略)
② 観光庁が策定する「オンライン旅行取引の表示等に関するガイドライン」では、オンライン旅行取引事業者等の名称について表示することが求められているが、通称、屋号又はサイト名だけの表示も適当とされている。
正解:×
〔コメント〕同ガイドラインでは、「OTA等の名称については、法人である場合には登記簿上の商号、個人事業者である場合には戸籍上の氏名又は商業登記簿に記載された商号を表示することが求められ、通称、屋号又はサイト名だけの表示は不適当である。」と記載。
〔参照URL〕【観光庁】オンライン旅行取引の表示等に関するガイドライン(OTAガイドライン)
https://www.mlit.go.jp/kankocho/content/810001387.pdf
③ 標準旅行業約款では、企画旅行契約については、旅行者がいつでも解除できるが、解除にあたり支払う取消料は、旅行開始前であれば不要であり、旅行開始後であれば必要であると規定されている。
正解:×
〔コメント〕同標準約款では。「旅行者は、いつでも別表第一に定める取消料を当社に支払って募集型企画旅行契約を解除することができます。」と記載(第16条)。また、別表第一では20日前から20%以内の取消料がかかりはじめる旨が記載。
〔参照URL〕【観光庁】標準旅行業約款
https://www.mlit.go.jp/kankocho/content/810001369.pdf
④ 標準宅配便運送約款によれば、消費者が荷物の損傷による損害賠償を請求するためには、宅配便事業者が荷物の受取り、運送、保管又は引渡しについて注意を怠ったことを消費者が証明しなければならない。
正解:×
〔コメント〕同標準約款では、「当店は、荷物の受取から引渡しまでの間にその荷物が滅失し若しくは損傷し、若しくはその滅失若しくは損傷の原因が生じ、又は荷物が延着したときは、これによって生じた損害を賠償する責任を負います。ただし、当店が、自己又は使用人その他運送のために使用した者が、荷物の受取、運送、保管及び引渡しについて注意を怠らなかったことを証明したときは、この限りではありません。」と記載(第21条)。立証責任は宅配便事業者側にある。
〔参照URL〕【国土交通省】標準宅配便運送約款
https://www.mlit.go.jp/jidosha/content/001732380.pdf
⑤ 標準引越運送約款によれば、引越運送業者は、美術品や骨董品等の特殊な管理を要するため他の荷物と同時に運送することに適さない荷物について、引越運送の引受けを拒絶することができる。
正解:○
〔参照URL〕【国土交通省】標準引越運送約款 (第4条を参照)
https://wwwtb.mlit.go.jp/kinki/content/000230209.pdf
⑥ 探偵業法によれば、都道府県公安委員会に所定の届出をした探偵業者は、本人からの依頼を前提に、他人の戸籍謄本等の交付の請求、他人の住居への立入り、依頼者の相手方との示談交渉、賠償金その他の金銭の取立てを行うことができる。
正解:×
〔コメント〕探偵業者が依頼を受け他人の戸籍謄本等の交付の請求を行うことは、正当な理由にはあたらない。許可なく他人の住居へ立入れば、住居侵入罪等が成立しうる。相手方との示談交渉や賠償金等の取立てを業として行えるのは、原則として弁護士のみ。
〔参照条文〕探偵業の業務の適正化に関する法律
(探偵業務の実施の原則)
第六条 探偵業者及び探偵業者の業務に従事する者(以下「探偵業者等」という。)は、探偵業務を行うに当たっては、この法律により他の法令において禁止又は制限されている行為を行うことができることとなるものではないことに留意するとともに、人の生活の平穏を害する等個人の権利利益を侵害することがないようにしなければならない。
⑦ 廃棄物処理法によれば、家庭の引越時に排出される廃棄物は「一般廃棄物」に該当するため、これらの収集や運搬を業として行おうとする者は、当該業を行おうとする区域の市町村長より一般廃棄物処理業の許可を受けなければならないとされている。
正解:○
〔参照条文〕廃棄物の処理及び清掃に関する法律
(一般廃棄物処理業)
第七条 一般廃棄物の収集又は運搬を業として行おうとする者は、当該業を行おうとする区域(運搬のみを業として行う場合にあつては、一般廃棄物の積卸しを行う区域に限る。)を管轄する市町村長の許可を受けなければならない。ただし、事業者(自らその一般廃棄物を運搬する場合に限る。)、専ら再生利用の目的となる一般廃棄物のみの収集又は運搬を業として行う者その他環境省令で定める者については、この限りでない。
2~16 (省略)
〔参照URL〕【東京都】産業廃棄物の種類
(「一般廃棄物」は、簡単に言うと、廃棄物のうち産業廃棄物以外のもの、とされている。)
⑧ チケット不正転売禁止法の「特定興行入場券」に該当するコンサートチケットを、コンサートを自ら観覧する目的で、転売サイトを通じて正規価格より高値で購入する行為は、同法に基づく罰則の対象とはならない。
正解:○
〔コメント〕同法による禁止行為は、「不正転売すること」及び「不正転売を目的として、特定興行入場券を譲り受けること」となっており、自ら観覧する目的で購入する場合は処罰の対象外である。
〔参照URL〕【政府広報オンライン】チケットの高額転売は禁止です!~チケット不正転売禁止法
⑨ 不動産の表示に関する公正競争規約によれば、マンションの取引について、物件から駅や商業施設等までの所要時間や道路距離を表示する場合、各住戸の玄関口を起点とするのではなく、「建物の出入口を起点」とすることとされている。
正解:○
〔参照URL〕不動産の表示に関する公正競争規約/不動産公正取引協議会連合会
https://www.rftc.jp/webkanri/kanri/wp-content/uploads/2018/08/h_kiyak.pdf
(同規約第15条(4)「各種施設までの距離又は所要時間」における施行規則を参照)
⑩ サプリメントとして販売されているが、もっぱら医薬品として使用される成分本質(原材料)を含有する物は、原則として医薬品医療機器等法上の「医薬品」に該当し、許可のない製造、販売が禁止される。
正解:○
〔参照条文〕医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律
(定義)
第二条 この法律で「医薬品」とは、次に掲げる物をいう。
一 日本薬局方に収められている物
二 人又は動物の疾病の診断、治療又は予防に使用されることが目的とされている物であつて、機械器具等(機械器具、歯科材料、医療用品、衛生用品並びにプログラム(電子計算機に対する指令であつて、一の結果を得ることができるように組み合わされたものをいう。以下同じ。)及びこれを記録した記録媒体をいう。以下同じ。)でないもの(医薬部外品及び再生医療等製品を除く。) 三 人又は動物の身体の構造又は機能に影響を及ぼすことが目的とされている物であつて、機械器具等でないもの(医薬部外品、化粧品及び再生医療等製品を除く。)
⑪ 厚生労働省通知「美容医療サービス等の自由診療におけるインフォームド・コンセントの取扱い等について」では、美容医療サービス等の施術に関し、即日施術の必要性が医学上認められない場合であっても、医師から施術内容について説明を受けた患者が即日施術を希望すれば、直ちに施術を実施することができるとされている。
正解:×
〔コメント〕同通知における該当部分の記述は以下のとおり。
「即日施術の必要性が医学上認められない場合には、即日施術を強要すること等の行為は厳に慎まれるべきであること。やむを得ず即日施術を受けることを希望する者については、十分に当該即日施術の説明を行うとともに、当該即日施術を受けるかどうか熟慮するために十分な時間を設けた上で、当該即日施術を実施しなければならないこと。」
〔参照URL〕【厚生労働省】美容医療サービス等の自由診療におけるインフォームド・コンセントの取扱い等について
8. 次の各文章が、正しければ○、誤っていれば×を解答用紙の解答欄に記入(マーク)しなさい。
① 製造物責任法において、「欠陥」とは、製造物が通常有すべき安全性を欠くことをいい、欠陥の有無は、被害が生じた時点を基準として判断される。
正解:×
〔コメント〕消費者庁の逐条解説では、「欠陥の判断基準となる時点は、製造業者等が当該製造物を引き渡した時点」と記述されている。
〔参照URL〕【消費者庁】製造物責任(PL)法の逐条解説
https://www.caa.go.jp/policies/policy/consumer_safety/other/product_liability_act_annotations/pdf/annotations_180907_0003.pdf
② 製造物の欠陥による発火で自宅が焼損した場合において、欠陥の存在を知りつつ隠していたなど製造業者等に悪質な点があったときは、被害者は製造物責任法に基づき、現実に生じた損害の範囲を超えた懲罰的損害賠償を請求することができる。
正解:×
〔コメント〕欧米での法体系では「懲罰的損害賠償」を規定している事例もあるようだが、日本の法体系では、製造物責任法に限らずそのような制度は置かれていない。
③ 最終製品の製造業者と部品の製造業者が異なる場合において、部品の欠陥により、他人の生命、身体又は財産を侵害したときは、部品の製造業者が製造物責任法に基づく賠償責任を免れるためには、部品の欠陥が専ら最終製品の製造業者が行った設計に関する指示に従ったことにより生じていること等を証明しなければならない。
正解:○
〔参照条文〕製造物責任法
(免責事由)
第四条 前条の場合において、製造業者等は、次の各号に掲げる事項を証明したときは、同条に規定する賠償の責めに任じない。
一 当該製造物をその製造業者等が引き渡した時における科学又は技術に関する知見によっては、当該製造物にその欠陥があることを認識することができなかったこと。
二 当該製造物が他の製造物の部品又は原材料として使用された場合において、その欠陥が専ら当該他の製造物の製造業者が行った設計に関する指示に従ったことにより生じ、かつ、その欠陥が生じたことにつき過失がないこと。
④ 消費生活用製品安全法における長期使用製品安全点検制度は、製品を購入した所有者に対して、メーカーや輸入業者から点検時期を知らせ、点検を受けることで、事故を防止するための制度である。
正解:○
〔参照URL〕【経済産業省】長期使用製品安全点検制度
https://www.meti.go.jp/product_safety/producer/shouan/07_tyouki.html
⑤ 消費生活用製品安全法によれば、「製品事故」には、一般消費者の生命又は身体に対する危害が発生するおそれのあるものも含まれるが、「重大製品事故」は、実際に危害が発生した事故に限定されている。
正解:×
〔参照条文〕消費生活用製品安全法
(定義)
第二条 この法律において「消費生活用製品」とは、主として一般消費者の生活の用に供される製品(別表に掲げるものを除く。)をいう。
2~5 (省略)
6 この法律において「重大製品事故」とは、製品事故のうち、発生し、又は発生するおそれがある危害が重大であるものとして、当該危害の内容又は事故の態様に関し政令で定める要件に該当するものをいう。
消費生活用製品安全法施行令
(重大製品事故の要件)
第五条 法第二条第六項の政令で定める要件は、次のいずれかとする。
一 一般消費者の生命又は身体に対し、次のいずれかの危害が発生したこと。
イ 死亡
ロ 負傷又は疾病であつて、これらの治療に要する期間が三十日以上であるもの又はこれらが治つたとき(その症状が固定したときを含む。)において内閣府令で定める身体の障害が存するもの
ハ 一酸化炭素による中毒
二 火災が発生したこと。
⑥ 消費生活用製品安全法において、「特定保守製品」とは、消費生活用製品のうち、経年劣化により安全上支障が生じ、一般消費者の生命又は身体に対して特に重大な危害を及ぼすおそれが多いと認められ、使用状況等からみてその適切な保守を促進することが適当であるものとして政令で指定されているものをいう。
正解:○
〔参照条文〕消費生活用製品安全法
(定義)
第二条
1~3 (省略)
4 この法律において「特定保守製品」とは、消費生活用製品のうち、長期間の使用に伴い生ずる劣化(以下「経年劣化」という。)により安全上支障が生じ、一般消費者の生命又は身体に対して特に重大な危害を及ぼすおそれが多いと認められる製品であつて、使用状況等からみてその適切な保守を促進することが適当なものとして政令で定めるものをいう。
⑦ 電気用品安全法では、電気用品の製造、輸入又は販売の事業を行う者は、国の定めた技術基準に適合している旨のPSE マーク表示がある製品でなければ、原則として販売できない。
正解:○
〔参照URL〕(一財)日本品質保証機構/電気用品安全法(PSEマーク)
⑧ フェイルセーフとは、部品の故障や破損、操作ミス、誤作動などが発生した際に、なるべく安全な状態に移行するような仕組みにしておくことであり、倒れると自動的に電源が切れる電気ストーブは、この例である。
正解:○
〔参照URL〕IT用語辞典 e-Words/フェイルセーフ
⑨ 道路運送車両法は、所定の装置が保安基準に適合しない自動車の運行を禁止しており、自動運転システム(自動運行装置)についても、保安基準が定められている。
正解:○
〔参照URL〕【国土交通省】自動運転車に関する安全基準を策定しました