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「競争の番人」公正取引委員会    ~私たちが安くて良い商品を買えるワケ

  私達消費生活相談員は、相談業務の合間を縫って、研修に参加し、日々スキルアップに努めています、というお話は前回記事でも紹介しましたが、先日5月も「消費生活に関する研修会」に出席しました。今回はそこで学んだこと、感じたことを皆さんにもお伝えしたいと思います。
 今回の研修では、「公正取引委員会が消費社会において果たす役割 ~私たちが安くて良い商品を買えるワケ~」と題して、公正取引委員会事務総局近畿中国四国事務所取引課から講師をお迎えしました。

研修風景。会場でのリアル参加とWeb参加のどちらでも受講可能なハイブリッド形式です。

 「公正取引委員会」って、皆さんはご存じですか。「○○省」「○○庁」といった国の行政機関の一種ですが、他から指示を受けることなく独立して職務を行えるよう、行政委員会という合議制の機関になっています。
 所管している法律は、独占禁止法(正式名称は「私的独占の禁止および公正取引の確保に関する法律」だそうです。長いですね。)や下請法などです。以前は、景品表示法(これも正式名称は「不当景品類及び不当表示防止法」だそうです。)も所管していましたが、平成21年の消費者庁発足に伴い、同庁に移管されています。

Web参加の場合、受講中のパソコン画面はこんな感じになります。

 我が国の経済体制は、原則として自由市場となっていて、基本的に、誰でも自由にものを売ったり買ったりできます。その市場で誰がナンバーワンになるかは、国や、誰か偉い人が決めるわけではなく、市場での自由な競争によってその結果が生まれるという形になっています。そして、競争が行われることによって、私たち消費者は、より安く、より品質が高い商品やサービスを得ることにつながりやすい仕組みとなっています。
 ですが、もし、この競争がゆがめられたらどうなるでしょう。企業同士で示し合わせて高い価格を維持する密約を交わしたり、先行事業者が新規参入の事業者を排除するような形でものを売ったり、大企業がその優越的な立場を悪用して下請け企業をいじめるようなルールを押しつけたり。
 公正取引委員会は、こうした自由な競争を妨げる行為を取り締まる、「市場の番人」「競争の番人」の役割を担っているのです。
 詳しくは、同委員会の解説ページがありますので、よろしければそちらもご覧ください。
【絵で見る 私たちの暮らしと独占禁止法の関わり】
https://www.jftc.go.jp/ippan/index.html

消費者一人一人の消費選択の積み重ねが、消費社会のあり方を左右する

 さて、ここで、消費者の皆さんにも是非考えていただきたいことがあります。先ほどお伝えしたように、我が国の自由な市場経済でその結果を決めるのは、私たち消費者一人一人の選択にかかっています。もし、どの商品やサービスを選ぶかに際して、あやふやな、深く考えない判断をしていたら、どういうことになるでしょうか。
 例えば、単に「値段が安い」ことだけを条件にしていると、もしその値段が何らかの「ズル」をすることで示されていた場合、ズルした事業者を勝たせることにつながる選択になりかねません。他にも、みんなが買っているから、流行っていそうだから、盛んに宣伝しているから(しかも、その広告表示が、冷静に見ればうさんくさい内容であったとしても)、といった理由だけで、何となく選んだりしていませんでしょうか。
 日々のお買い物で、なかなかそこまで考える余裕はないかもしれません。ですが、ちょっとでも立ち止まって、これらの商品やサービスがこの値段で、このような形で売られているのは何でだろう、この広告の表示って何かちょっとおかしくないかしら、と考える機会があれば、この市場はもっと良くなるかもしれません。
 単に値段に限らず、まっとうなことで努力して頑張っている企業に、「あっぱれ」の一票を投じる、そうした消費選択も、もしよろしければ実践してみてください。その選択のヒントは、世の中で報じられる様々な経済関係のニュースや、消費者庁、国民生活センターや各地の消費生活センター、消費者団体など、消費者関係の各機関からの情報発信にも含まれています。

 最後に、研修終盤の景品表示法に関する解説の中で、日常生活で注意するポイントとして掲げられていた事項は、消費者の皆さんにも是非知っておいていただければいいなと思いましたので、以下にメモします。

景品表示法違反の可能性があるもの

●飲めばすごく痩せるなどの痩身効果をうたっているもの
…愛飲者のコメントは万人共通ではない。広告塔の有名人がコメントしていても、それは仕事の一環。含まれている成分に効果があっても、商品自体に効果があるとは限らない。
●セールでの比較対象価格は、セール前に見たことがない価格
●「期間限定」「数量増」などと表示されているが、いつ見ても同じ表示

思わぬ出費とならぬよう、広告内容でよく確認すべきこと

○広告で強調されている表示を見たときは、例外条件、制約条件がどこかに記載されていないかに注意を向ける。
○表示の一部だけで判断せず、全体の内容を把握した上で購入するかどうかを検討する。
○Web広告は、最後まで画面をスクロールせずにボタンをクリックすると、画面下部の注意事項に気づかず契約手続に進んでしまうことがあるので注意。

 もし、問題があると思われる表示を見つけた場合は、消費者庁のページからインターネット経由で提供できるほか、今回講義をいただいた公正取引委員会近畿中国四国事務所取引課や、私たち京都府消費生活安全センターあてに情報提供いただくのでも構いません(※ただし、ご提供いただいた情報について、調査の有無を含め個別の回答はしていませんので、予めご了承ください)。よろしくお願いします。