消費生活相談員資格試験にチャレンジ2024(6)
2023年度消費生活相談員資格試験(独立行政法人国民生活センター実施)の問題・正解に簡単な解説等を付した記事シリーズ第六弾、第11問と第12問です。中間点を折り返して後半戦に入りました。
11.次の文章のうち、下線部が2ヵ所とも正しい場合は○を、下線部のうち誤っている箇所がある場合は、誤っている箇所(1ヵ所)の記号を解答用紙の解答欄に記入(マーク)しなさい。
※誤っている箇所がある場合は、1ヵ所である。
① 消費者契約法は、消費者と事業者との間に存在する㋐情報の質及び量並びに交渉力の格差に鑑み、契約の取消し、契約条項の無効等を認めることにより㋑消費者の利益の擁護を図ることを直接の目的としている。
正解:○
〔参照条文〕消費者契約法
(目的)
第一条 この法律は、消費者と事業者との間の情報の質及び量並びに交渉力の格差に鑑み、事業者の一定の行為により消費者が誤認し、又は困惑した場合等について契約の申込み又はその承諾の意思表示を取り消すことができることとするとともに、事業者の損害賠償の責任を免除する条項その他の消費者の利益を不当に害することとなる条項の全部又は一部を無効とするほか、消費者の被害の発生又は拡大を防止するため適格消費者団体が事業者等に対し差止請求をすることができることとすることにより、消費者の利益の擁護を図り、もって国民生活の安定向上と国民経済の健全な発展に寄与することを目的とする。
② 消費者契約法において、「事業者」とは、法人その他の団体及び事業として又は事業のために契約の当事者となる場合における個人をいう。事業とは、一定の目的をもってなされる㋐同種の行為の反復継続的遂行であり、㋑営利の目的をもってなされることが必要である。
正解:㋑
〔コメント〕消費者庁の逐条解説によれば、「事業」とは、「一定の目的をもってなされる同種の行為の反復継続的遂行」であるが、営利の要素は必要でなく、営利の目的をもってなされるかどうかを問わない、とされている。
〔参照URL〕【消費者庁】逐条解説(消費者契約法)https://www.caa.go.jp/policies/policy/consumer_system/consumer_contract_act/annotations/assets/consumer_system_cms203_230915_04.pdf
③ 消費者契約法は、消費者契約の締結につき勧誘をするに際して、不実告知がなされた場合の意思表示の取消しを認めている。不実告知の取消しにあたっては、事業者が事実と異なるという認識を有している㋐必要がある。最高裁判所の判例は、事業者等による働きかけが不特定多数の消費者に向けられたものであったとしても、㋑そのことから直ちにその働きかけが勧誘に当たらないということはできないとしている。
正解:㋐
〔コメント〕消費者庁の逐条解説によれば、「事実と異なること」とは、真実又は真正でないこと、としており、真実又は真正でないことにつき必ずしも主観的認識を有していることは必要なく、告知の内容が客観的に真実又は真正でないことで足りる、としている。
最高裁判例については、同逐条解説内の最三判平成29年1月24日(民集第71巻1号1頁)を参照。
ちなみに、当該判例において上告人となっている適格消費者団体は、京都府内に所在する「京都消費者契約ネットワーク(KCCN)」である。
〔参照URL〕【消費者庁】逐条解説(消費者契約法)
https://www.caa.go.jp/policies/policy/consumer_system/consumer_contract_act/annotations/assets/consumer_system_cms203_231219_01.pdf
④ 消費者契約法では、進学、就職、容姿や体型などの願望の実現に過大な不安を抱いている消費者の不安をあおり、それにより消費者が困惑して行った意思表示は取り消すことができるとされている。取消しの要件としては、㋐消費者が社会生活上の経験が乏しいこと、㋑消費者が過大な不安を抱いていることを事業者が知っていること、が必要である。
正解:○
〔参照条文〕消費者契約法
(消費者契約の申込み又はその承諾の意思表示の取消し)
第四条
1~2 (省略)
3 消費者は、事業者が消費者契約の締結について勧誘をするに際し、当該消費者に対して次に掲げる行為をしたことにより困惑し、それによって当該消費者契約の申込み又はその承諾の意思表示をしたときは、これを取り消すことができる。
一~四 (省略)
五 当該消費者が、社会生活上の経験が乏しいことから、次に掲げる事項に対する願望の実現に過大な不安を抱いていることを知りながら、その不安をあおり、裏付けとなる合理的な根拠がある場合その他の正当な理由がある場合でないのに、物品、権利、役務その他の当該消費者契約の目的となるものが当該願望を実現するために必要である旨を告げること。
イ 進学、就職、結婚、生計その他の社会生活上の重要な事項
ロ 容姿、体型その他の身体の特徴又は状況に関する重要な事項
六~十 (省略)
4~6 (省略)
⑤ 消費者契約法は、事業者が消費者契約の締結を勧誘した際に、当該消費者契約の目的となるものの分量、回数又は期間(以下「分量等」という。)が㋐当該消費者にとっての通常の分量等を著しく超えるものであって、そのことを事業者が㋑知らなかった場合でも、その勧誘により当該消費者契約の申込み又はその承諾の意思表示をしたときは、消費者はこれを取り消すことができるとしている。
正解:㋑
〔参照条文〕消費者契約法
(消費者契約の申込み又はその承諾の意思表示の取消し)
第四条
1~3 (省略)
4 消費者は、事業者が消費者契約の締結について勧誘をするに際し、物品、権利、役務その他の当該消費者契約の目的となるものの分量、回数又は期間(以下この項において「分量等」という。)が当該消費者にとっての通常の分量等(消費者契約の目的となるものの内容及び取引条件並びに事業者がその締結について勧誘をする際の消費者の生活の状況及びこれについての当該消費者の認識に照らして当該消費者契約の目的となるものの分量等として通常想定される分量等をいう。以下この項において同じ。)を著しく超えるものであることを知っていた場合において、その勧誘により当該消費者契約の申込み又はその承諾の意思表示をしたときは、これを取り消すことができる。事業者が消費者契約の締結について勧誘をするに際し、消費者が既に当該消費者契約の目的となるものと同種のものを目的とする消費者契約(以下この項において「同種契約」という。)を締結し、当該同種契約の目的となるものの分量等と当該消費者契約の目的となるものの分量等とを合算した分量等が当該消費者にとっての通常の分量等を著しく超えるものであることを知っていた場合において、その勧誘により当該消費者契約の申込み又はその承諾の意思表示をしたときも、同様とする。
5~6 (省略)
⑥ 消費者契約法は、不利益事実の不告知による取消権について規定しているが、事業者が重要事項について利益となる旨を告げ、かつ、当該重要事項について消費者の不利益となる事実を重過失により告げなかったことにより、消費者が誤認して契約を締結した場合、消費者は当該契約を㋐取り消すことができる。消費者が消費者契約法に基づき取消権を行使する場合において、債務の履行による給付を受けた当時その意思表示が取り消すことができるものであることを知らなかったときは、当該契約によって㋑現に利益を受けている限度において返還の義務を負う。
正解:○
〔参照条文〕消費者契約法
(消費者契約の申込み又はその承諾の意思表示の取消し)
第四条 (省略)
2 消費者は、事業者が消費者契約の締結について勧誘をするに際し、当該消費者に対してある重要事項又は当該重要事項に関連する事項について当該消費者の利益となる旨を告げ、かつ、当該重要事項について当該消費者の不利益となる事実(当該告知により当該事実が存在しないと消費者が通常考えるべきものに限る。)を故意又は重大な過失によって告げなかったことにより、当該事実が存在しないとの誤認をし、それによって当該消費者契約の申込み又はその承諾の意思表示をしたときは、これを取り消すことができる。ただし、当該事業者が当該消費者に対し当該事実を告げようとしたにもかかわらず、当該消費者がこれを拒んだときは、この限りでない。
3~6 (省略)
(取消権を行使した消費者の返還義務)
第六条の二 民法第百二十一条の二第一項の規定にかかわらず、消費者契約に基づく債務の履行として給付を受けた消費者は、第四条第一項から第四項までの規定により当該消費者契約の申込み又はその承諾の意思表示を取り消した場合において、給付を受けた当時その意思表示が取り消すことができるものであることを知らなかったときは、当該消費者契約によって現に利益を受けている限度において、返還の義務を負う。
⑦ 消費者契約法では、不実告知を理由とする取消権は、追認をすることができる時から㋐1年間行使しないときは、時効によって消滅する。当該消費者契約の締結の時から㋑5年を経過したときも同様である。
正解:○
〔参照条文〕消費者契約法
(取消権の行使期間等)
第七条 第四条第一項から第四項までの規定による取消権は、追認をすることができる時から一年間(同条第三項第八号に係る取消権については、三年間)行わないときは、時効によって消滅する。当該消費者契約の締結の時から五年(同号に係る取消権については、十年)を経過したときも、同様とする。
2 (省略)
⑧ 消費者契約法は、消費者契約の解除に伴う損害賠償の額を予定し、又は違約金を定める条項であって、これらを合算した額が、当該消費者契約と同種の消費者契約の解除に伴い当該事業者に生ずべき平均的な損害の額を超える条項について、㋐当該超える部分を無効とする。この平均的な損害の額は、㋑当該業種における業界の水準を基準とする。
正解:㋑
〔コメント〕消費者庁の逐条解説によれば、「平均的な損害の額」は、当該消費者契約の当事者たる個々の事業者に生ずべき損害の額について、契約の類型ごとに合理的な算出根拠に基づき算定された平均値であり、当該業種における業界の水準を指すものではない、としている。
〔参照URL〕【消費者庁】逐条解説(消費者契約法)
https://www.caa.go.jp/policies/policy/consumer_system/consumer_contract_act/annotations/assets/consumer_system_cms203_230915_16.pdf
⑨ 消費者契約法は、法令中の公の秩序に関しない規定(任意規定)の適用による場合に比して消費者の権利を制限し又は消費者の義務を加重する消費者契約の条項であって、㋐信義則に反して消費者の利益を一方的に害するものを無効としており、当該契約条項が無効となった場合には任意規定に則った取扱いがなされることとなる。「法令中の公の秩序に関しない規定」は、㋑一般的な法理等は含まないと解されている。
正解:㋑
〔コメント〕消費者庁の逐条解説によれば、法令中の公の秩序に関しない規定には、最高裁判例も踏まえ、法律の明文の規定のみならず一般的な法理等も含まれると解されている、としている。
〔参照URL〕【消費者庁】逐条解説(消費者契約法)
https://www.caa.go.jp/policies/policy/consumer_system/consumer_contract_act/annotations/assets/consumer_system_cms203_230915_17.pdf
⑩ 内閣総理大臣により認定された適格消費者団体は、消費者契約法に規定する不当勧誘行為などを行う事業者に対し、㋐差止請求をすることができる。適格消費者団体は、消費者が受けた集団的な被害について、損害賠償の請求に係る共通義務確認の訴えを提起することが㋑できる。
正解:㋑
〔コメント〕消費者が受けた集団的な被害について、損害賠償の請求に係る共通義務確認の訴えを提起することができるのは、「特定適格消費者団体」に限られる。
〔参照URL〕【政府広報オンライン】消費者団体訴訟制度 不当な勧誘や契約条項などによる消費者トラブルに遭ったら活用を!
12. 次の各文章が、正しければ○、誤っていれば×を解答用紙の解答欄に記入(マーク)しなさい。
※以下は、特定商取引法に関する問題である。
① 消費者が、事業者に商品の資料の送付を依頼したところ、「訪問して商品の説明をしたい」と言われたので、これを承諾した。その後、自宅に訪ねて来た当該事業者から、その商品の説明を受け、その場で消費者が売買契約を締結した場合には、クーリング・オフの規定は適用されない。
正解:×
〔コメント〕消費者庁の逐条解説によれば、商品等についての単なる問合せ又は資料の郵送の依頼等を行った際に、販売業者等より訪問して説明をしたい旨の申出があり、これを消費者が承諾した場合は、消費者から「請求」を行ったとはいえないため、特定商取引法第26条第6項に規定される、いわゆる「消費者からの来訪要請」による適用除外には該当しない、としている。
〔参照URL〕【消費者庁】特定商取引に関する法律の解説(逐条解説)
https://www.no-trouble.caa.go.jp/pdf/20240319la03_06.pdf.pdf
② 消費者が訪問販売によって商品を購入した場合、クーリング・オフの意思表示は、書面によるほか、事業者のウェブサイトに設けられたクーリング・オフ専用フォームや電子メールによっても行うことができる。
正解:○
〔コメント〕令和3年の特商法改正(施行は令和4年6月)により、電磁的記録によるクーリング・オフもできるようになった。
〔参照URL〕【国民生活センター】クーリング・オフ
③ 訪問販売、通信販売及び電話勧誘販売において、「社債その他の金銭債権」は、「特定権利」として規定されている。
正解:○
〔参照条文〕特定商取引に関する法律
第二条
1~3 (省略)
4 この章並びに第五十八条の十九第一号及び第六十七条第一項において「特定権利」とは、次に掲げる権利をいう。
一 施設を利用し又は役務の提供を受ける権利のうち国民の日常生活に係る取引において販売されるものであつて政令で定めるもの
二 社債その他の金銭債権
三 株式会社の株式、合同会社、合名会社若しくは合資会社の社員の持分若しくはその他の社団法人の社員権又は外国法人の社員権でこれらの権利の性質を有するもの
④ 通信販売において、商品の販売条件について広告をした販売業者が、申込みの撤回等についての特約を広告に表示していなかった場合、契約の申込みをした消費者は、商品の引渡しを受けた日から起算して8日を経過するまでの間は、当該契約の申込みの撤回等をすることができる。
正解:○
〔参照条文〕特定商取引に関する法律
(通信販売における契約の解除等)
第十五条の三 通信販売をする場合の商品又は特定権利の販売条件について広告をした販売業者が当該商品若しくは当該特定権利の売買契約の申込みを受けた場合におけるその申込みをした者又は売買契約を締結した場合におけるその購入者(次項において単に「購入者」という。)は、その売買契約に係る商品の引渡し又は特定権利の移転を受けた日から起算して八日を経過するまでの間は、その売買契約の申込みの撤回又はその売買契約の解除(以下この条において「申込みの撤回等」という。)を行うことができる。ただし、当該販売業者が申込みの撤回等についての特約を当該広告に表示していた場合(当該売買契約が電子消費者契約に関する民法の特例に関する法律(平成十三年法律第九十五号)第二条第一項に規定する電子消費者契約に該当する場合その他主務省令で定める場合にあつては、当該広告に表示し、かつ、広告に表示する方法以外の方法であつて主務省令で定める方法により表示していた場合)には、この限りでない。
2 (省略)
⑤ 電話勧誘販売において、虚偽又は誇大な広告をすることは禁止されている。
正解:×
〔コメント〕特商法において、虚偽又は誇大な広告をすることが禁止されているのは、「通信販売」「連鎖販売取引」「特定継続的役務提供」「業務提供誘引販売取引」の場合。電話勧誘販売では、再勧誘、不実告知、故意の事実不告知、威迫・困惑などが禁止事項として規定されているが、広告に係る記述はない。
〔参照URL〕【消費者庁】特定商取引法ガイド・電話勧誘販売
⑥ 特定継続的役務提供契約を締結した際に関連商品も購入していた場合、特定継続的役務提供契約のクーリング・オフをしていなくても、特定継続的役務提供契約についての特定商取引法の規定に基づき、関連商品の契約についてクーリング・オフをすることができる。
正解:×
〔コメント〕特定継続的役務提供契約のクーリング・オフがなされている場合に限り、関連商品の契約についてもクーリング・オフをすることができる建付けとなっている。
〔参照URL〕【消費者庁】特定商取引法ガイド・特定継続的役務提供
⑦ 連鎖販売取引において、電子メール広告の受取りを希望しない旨を申し出る方法及び申出先を、統括者が明示しているときは、当該統括者は、消費者の承諾がなくても、電子メール広告をすることができる。
正解:×
〔コメント〕消費者があらかじめ承諾しない限り、統括者、勧誘者又は一般連鎖販売業者が連鎖販売取引電子メール広告を送信することは、原則禁止されている(オプトイン規制)。
〔参照URL〕【消費者庁】特定商取引法ガイド・連鎖販売取引
⑧ 連鎖販売加入者が連鎖販売契約を中途解約した場合、当該連鎖販売契約の締結から1年を経過していても、当該連鎖販売加入者は、その連鎖販売業に係る商品の販売契約を解除することができる。
正解:×
〔コメント〕連鎖販売業に係る商品の販売契約を解除するためには、当該連鎖販売契約締結から1年以内であること、商品の引渡しを受けてから90日を経過していないこと、商品を再販売していないこと、商品を使用又は消費していないこと、自らの責任で商品を滅失又はき損していないこと が条件となる。
〔参照URL〕【消費者庁】特定商取引法ガイド・連鎖販売取引
⑨ 業務提供誘引販売契約においては、クーリング・オフ期間を経過した後も、中途解約をすることができる。
正解:×
〔コメント〕業務提供誘引販売契約においては、クーリング・オフ期間を経過した後であっても、事業者側の不実告知や威迫により消費者が誤認・困惑してクーリング・オフをしなかった場合には、クーリング・オフをすることができるという規定(特商法第58条)はあるが、「中途解約」に関する特段の規定はない。
なお、クーリング・オフ期間の経過後においても、将来に向かって契約解除(中途解約)ができるという規定があるのは、「特定継続的役務提供」の場合である。(特商法第49条)
⑩ 訪問購入において、購入業者が、クーリング・オフ期間中に、売買契約の相手方である消費者から引渡しを受けた物品を第三者に引き渡したときは、遅滞なく、当該消費者に、物品を引き渡した第三者の氏名や住所などを通知しなければならない。
正解:○
〔参照URL〕【消費者庁】特定商取引法ガイド・訪問購入
7.第三者への物品の引渡しについての契約の相手方に対する通知(法第58条の11)