退職される先生にインタビュー(ストーリーマンガコース おがわさとし先生)
こんにちは。
広報グループUです。
先日、2023年度末をもって退職されるストーリーマンガコースの都留先生のインタビュー記事を公開しましたが、今回は、同じくこの3月で退職をされる、おがわさとし先生をご紹介したいと思います。
おがわ先生はマンガ学部ストーリーマンガコースの先生。
漫画家業の傍ら、2001年から23年間、精華で先生をされてきました。
私は2014年に入職した当時、同じ会議に出席する機会が多く、学生への優しい視点をもつ素敵な先生だなあと思っていました。
ひさしぶりにじっくりお話しを聞かせてもらいたいと思います。
――京都精華大学で教えることになった経緯を教えてください
2000年より少し前、京都に住みながら漫画家をしていました。
京都精華大学ではその頃、マンガ学科の立ち上げにあたって、Webサイトをつくっていたんですね。そのWebサイト用にマンガを依頼されていました。その繋がりで、当時ストーリーマンガコース教員だった、竹宮惠子先生と知り合ったのです。
「授業の見学をさせてほしい」とお願いして、覗いたりしているうちに、気がついたら教員になっていました。
――どんな授業を担当されていたのでしょうか?
1年生のマンガクロッキーやパース(遠近感を表現するための描画技法)の授業をずっと担当していましたね。漫画家になるための基礎画力を育てる授業でした。
3・4年生のゼミでは個別指導形式で、マンガを教えてきました。
――先生になられたばかりの頃、京都精華大学はどんな大学でしたか?
年中、お祭りをしているような大学でしたね。
学園祭は年に2回開催されて、とても賑やかでした。
マンガ学科では、マンガの同人誌をつくって学園祭で販売していました。いま読み返すと、卒業後にプロになっている作家がたくさん掲載されているので、実は貴重書かもしれません。
――同人誌! 読んでみたいです。
ほかに印象的なことはありますか?
卒業制作展はどの年度も思い出深いですね。
学科開設当時は、京都市美術館で展示をしていました。
漫画家は展示に慣れていないので、芸術学部の他のコースと並んで展示をすることに正直冷や汗をかきました。大きな作品の迫力に負けないよう、学生たちと一緒に試行錯誤したことをよく覚えています。いまでも校舎のなかに飾っている作品たちは、当時の卒業制作ですよ。
――この作品たちは卒業制作の作品だったんですね!
そうです。彫刻や絵画に負けないインパクトを残したい!と、当時の学生たちが頑張ってつくったものです。
――ここからは、漫画家としてのお話しを聞かせてください。
私は先生のマンガ「クッポの小さな冒険」や「水窓」などの世界観や言葉、もちろん絵もとても好きなのですが、どんな漫画家に影響をうけて、作品をつくるようになったのでしょうか
子どもの頃、マンガの世界の入り口となったのは、藤子不二雄先生や、赤塚不二夫先生でした。それから石ノ森章太郎先生、手塚治虫先生と数々の名作に触れるようになります。
漫画家として影響を受けたのは、大友克洋先生や、ますむらひろし先生。同世代の漫画家で、影響を受けていない人はほとんどいないでしょう。
大学では臨床心理学を専攻していたので、マンガを教えてもらった経験はありません。ただ、ストーリーやセリフを考える際に、心理学の学びは大きく影響しているなと思います。
――先生の作品は、お話によって絵柄が大きく異なりますよね。絵柄はどうやって決めているんでしょうか
マンガをつくるときは、世界観から考えることが多いです。そうしてその世界観に合ったキャラクター、そして絵柄を考えていきます。
絵は独学で身につけました。ちなみに初めてペン入れまでしてマンガを描いたのは、大学生のときです。
――退職後は、マンガ制作をされる予定ですか
そうですね。現在は、三栄書房から出版されている、クトゥルフ電子雑誌『ZONE of CTHULHU』で連載しているので、それを継続していきます。
それだけでなく、絵本の塾に通おうと思っているんですよね。
――えっ、絵本の塾? 教えるのではなく、通うんですか?
はい。これからは生徒になります。
これまでパースを教えていたので、かっちりした構図を描いてきましたが、それに捉われない、自由な絵を描いてみたいんですよね。ミロコマチコさん(本学卒業生の絵本作家)のライブペイントが好きで、のびのびとした表現に憧れを持っています。
――まさか今から新しく勉強をされるとは、頭が下がります。
他に楽しみなことはありますか?
近々、卒業生たちが集まって、退職のお祝いをしてくれるそうです。
それがまずは一番の楽しみ。
(この記事が公開されるときには、お祝いの会は終了し、次にお会いしたときはその場でプレゼントされた赤いベレー帽を被っていらっしゃいました)
最近いろいろな偶然から、懐かしい縁や新しい縁など、人の縁がつながっています。たとえば学生のご家族とのご縁から、小学生時代を過ごした仙台の片平丁小学校とつながって、小学生に向けて講演会を行ったりもしました。マンガはもちろん、新しいつながりや、場所にふみだしていくことも楽しみです。
1時間以上にわたる取材にも、快くお話ししてくださったおがわ先生。
10年近く同じ職場で働いていたのに、全然知らないお話しがたくさんありました。詩的で美しい物語たちは、魅力的な人柄から生み出されたものなんだなあと、じーんとしてしまいました。
退職されるのは寂しいですが、2024年度も非常勤講師として週に1回は授業をされるとのこと。マンガ学部の学生はもちろん、他学部の学生もぜひ、お話を聞いてみてください。その深い知識や教養、視点にきっと魅了されるはず。
おがわ先生、ありがとうございました!