卒展2023レポート(人文学)
こんにちは。
広報グループUです。
15日から開催している「京都精華大学展2023(卒展)」も、もう3日目。
あと2日で終了してしまいます。早い!
今日はキャンパスの中心地「明窓館」より、人文学部の展覧会についてご紹介します。
京都精華大学の卒展の面白いところは、芸術やデザイン、マンガといった制作物だけでなく、卒業論文の展示もしているところ。文学や歴史、社会の研究に取り組む人文学部の学生たちが書いた卒論を、お手にとってお読みいただけるのです。なかなか珍しい機会でしょ。
とはいえ、論文を全部読み切るのって結構時間がかかってしまう。
ただでさえ時間が限られている展覧会のなかで、文章を読むのは苦手で…と避けてしまっている人、いませんか?
今日は、学生時代授業をさぼりまくっていた、へっぽこ人文卒業生の私が、いかに効率よくたくさんの卒業論文に触れるか、その方法を伝授したいと思います。(先生、未だにこんなことをしていてすみません)
ただ、読み方の紹介の前に、そもそも「卒業論文ってどうやって書くの?」の大原則を知っておきましょう。
卒業論文とはすごく雑に言うと、以下のような流れで書きます。
📝 卒業論文の書き方
(1)テーマを決める
(2)調べる(先行研究の調査、実地調査、史料を読み解くなど)
(3)調査結果をもとに、自分の意見で新たな視点を提唱する
自分のテーマと近い分野で、過去にどんな研究がされているのかを調べたり、当時の時代の公文書などを探しだして何が記載されているかを紐解いたり、論文の長い文章のなかには、その記録がびっしり詰まっているのです。
何も調べずに書いたものは、論文ではありません。
📕 効率よく卒業論文を読む裏技
それでは、私の論文の読み方を紹介します。
(1)目次を集中して読む。「何が書かれているのか」、概要を知る。
(2)序文を読む。「なぜ書いたのか」、目的を知る。
(3)終章を読む。「調査の結果どこに辿り着いたのか」、結論を知る。
(4)目次に戻って気になる調査データの章を読む。
ポイントは「1ページ目から順番に読まない」です。
みなさん、本や論文って1ページ目から順番に、通読しないといけないと思っていませんか? そして読み始めて、途中で疲れたり、諦めたりしていませんか? 通読の良さももちろんあるけれど、卒展みたいにいろいろ手に取りたいときは、まずは目次をしっかり読むことをお薦めします。
目次、序文、終章を読んで、面白いなと思ったら、それぞれの章の調査内容やデータ分析もじっくり読んでみてください。論文の主旨と結論が事前に分かっていると、各章の中身も頭に入りやすい気がしますよ。
前置きが長くなりましたが、人文学部の展示会場には読みたくなる論文がたくさん設置されています。
全部で82点。これだけの論文が並ぶ景色は壮観です。まるで本屋さんのように設置された紹介ポップも楽しく、あれもこれも読みたくなってしまいます。
ちなみに、今回私が面白い!と思った論文は、歴史専攻のおふたりのもの。
『金子文子の思想――自分自身を生きるための革命』橋本思織さん
大正時代に無戸籍者として生まれ、アナキスト(無政府主義者)として社会運動家になり、最期は23歳の若さにして獄中で亡くなった女性、金子文子を論じた橋本さん。過去の金子文子研究を丁寧に辿り、「恋愛と革命に生きるヒロイン」像として描かれていることに疑問を呈しました。
誰かの恋人としてではなく一人の人間として、金子文子が考えていたことは何だったのか、手記や裁判記録からすくい上げていきます。 文章が簡潔で美しく、とても読みやすい! 胸が熱くなる論文でした。
『明治初頭の京都府政と遊所』篠原七彩さん
明治初頭における京都府の遊所に関する政策について、膨大な史料から調査し、その方針や展開過程、府政と遊所の関係性などを明らかにしていった篠原さん。
会場には調査資料も置かれていました。当時の公文書を複製したものに、篠原さんがたくさんメモ書きをした跡が残っています。漢文訓読体の文章から一つ一つ単語の意味を読み解いていった、篠原さんの綿密な研究の軌跡が垣間見える資料、そして論文です。歴史好きは必読。
卒業論文だけ見ると、国際文化学部1・2年生や、受験生のみなさんは、「調査なんてできるのかな」「こんなに文章を書けるだろうか…」と不安に感じるかもしれません。
そんな人は、春秋館で同時開催している「人文学部フィールドプログラム報告展」にも足を運んでみてください。国際文化学部の最も特徴的なカリキュラム、3年生全員が現地研究を行う「フィールドプログラム」の調査報告をパネル形式で展示しています。
論文執筆の基本となる「テーマを設定すること」、「調査をすること」、この二つを自分の足を使って体験できるフィールドプログラム。この経験を得たからこそ、自分ならではの視点を持った卒業論文が書けるようになるのだと思います。
「この物語にこんな一面があったなんて!」「今まで知らなかったけど、こんな暮らしや価値観を持つ人たちがいたんだ」「いままで言語化できなかった辛い気持ちを救ってもらえたような気がする」、などなど、知らなかったことを知るのは本当に面白いこと。勉強って楽しい!ということを教えてくれるのが人文学部の展覧会です。
芸術学部やデザイン学部、マンガ学部のみなさんにとっても、制作の刺激を与えてくれる研究成果が揃っているはず。気軽な気持ちで手に取って、目次から読んでみてくださいね。
(おまけ)
ときどき紛れてる和綴じの卒論は、文学専攻中古文学ゼミの学生たちが自ら綴じたもの。テーマに合わせて選ばれた和紙がきれいです!
それでは。
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