スポーツに「恩返し」したい人へ
2回続けてスポーツの話題です。
先日、某プロバスケットボールチームの営業氏とお話しする機会がありました。実はあちらから私にアプローチがありまして、その目的は「スポンサー探し」。仕事の話をしているうちに話題はスポーツビジネス全般に広がり、スポーツ業界への就職を目指す方の参考になりそうな内容も多かったので、営業氏のお話の一部を(ご本人の口調を真似て)ここに公開します。
プロスポーツチームが求める人材
必要な人材ですか?それは「仕事ができる人」ですよ。営業であれ、経理であれ、マーケティングであれ、それぞれの仕事の「プロ」ということです。
スポーツだからって、特別な目で見る必要はないんですよ。選手が試合をする、その興行や会場で販売するグッズが僕らの商品です。それを通じてお客さんに楽しんでもらい、収益を得て、会社は選手やスタッフに給料を払う。あるいは資金を調達するために銀行からお金を借りたり、スポンサーを獲得したりする。スタッフは与えられた役割の中できちんと成果を出さないといけない。普通の会社と同じですよ。商品が興行だというだけで。
僕、前は広告代理店に勤務していたんです。今やってるスポンサー探しの仕事って、まんま広告営業なんですよね。スポーツに関心ありそうな地元の会社をリストアップして、片っ端から電話して、会ってくれる会社には足を運んでお願いします。メチャ泥臭い仕事ですよ。コートサイドに看板を出したスポンサーさんの認知度がどれだけ上がったか、みたいなデータをお見せしてスポンサーになるメリットを説明します。そういうことができるから、僕は雇われているわけです。
基本的に人手不足
ただ、これはどこのプロチームも同じだと思いますけど、人手は圧倒的に足りていない。だからって簡単に人を雇う訳にもいかない。なので最小限、じゃないか(笑)それ以下の人数で仕事を回しています。たとえば今、僕はこうやってスポンサー探しをしていますけど、広報や総務のスタッフもスポンサー獲得のために飛び回っています。コロナ以後、契約を打ち切るスポンサーさんがいくつかあって、新規スポンサー獲得が急務なんです。それで他部署のスタッフも動いてくれてる。みんなが何でも屋。だから「それは自分の仕事ではありません」みたいに仕事に線を引きたがる人には務まらない。仕事の境界が曖昧なカオスを楽しめるくらいの人がいいですね。あえてプロスポーツチームに求められる人材を言うならば。
プロスポーツチームに就職したいなら
もちろんバスケが好きに越したことはない。でも、バスケが好きなだけで何もできない人にしてもらう仕事はないです。うちに限らずスポーツのチームで働きたいと思ったら、先に何かのビジネスのプロになるといいと思う。スポンサー契約を取ってこれる、あるいはシーズンチケットを売ってこれる敏腕営業マンはどこのチームでも欲しいでしょうね。ほかには金融に詳しい財務のプロ、選手との契約をチェックできる法務担当者、そんな人もニーズはあります。プロスポーツチームは運営するスタッフもプロ。ファンじゃないんです。このことをまず念頭に置いてほしいですね。
「何でもしますから働かせてください、やる気はあります!」みたいな人、過去に何人か来ました。でもお引き取りいただいたみたいです。やる気だけでは、ちょっと。でも試合の日の場内整理なんかは人手もいるので、元気そうな子に「日雇いのバイトでよければ来てくれる?」とスタッフが声をかけておいたらしいんですが、来なかった(笑)。
実はそれ、チャンスなんですけどね。うちの現スタッフの一人は、頼まれもしないのに必ず会場に来て雑用を手伝ってくれた。ホームの全試合ですよ。そのうちスタッフ全員に顔を知られ、誰よりも仕事を覚えて正社員になってしまったという。やる気があるって、そういうことだと思うんですよね。
恩返しって、何をするんだろう?
求人はたまにかけますよ。誰かが退職する場合とか、欠員補充で。それで、僕も面接に同席することがあるんですが、ちょっと気になることがあって。元選手の応募者に多いんですが、志望動機で「自分を育ててくれたバスケに恩返しがしたい」なんて言うんですよ。
聞き流してもいいんですけど、同じことを言う人が妙に多い。誰かがそういうことを言って、カッコイイと思ったんでしょうかね。心に響いた言葉を引用するのはいいですけど、できればそれを噛み砕いて、自分の言葉で説明してほしい。一度「恩返しって、具体的に何をしたいんですか?」って聞いたら「えーと、何ですかね」って。自分でも何だか分からないフレーズを他人に使っちゃダメですよ。
一緒に働きたい人材って?
まあでも、人気業種ではあるんでしょうね。求人広告を出したらいつもたくさんの方からの応募があります。アメリカの大学に留学してNBAのチームでインターンしてた人とか、だれもが憧れる一流大学、一流企業の人から履歴書が届いてびっくりすることもありますよ。えっ?うらやましいですか?いやあ、どうですかね。いかに優秀な人がいようと、スポンサー探しにスタッフ全員が奔走しているのが現実です(笑)。すっごいマーケティングプランを作る人よりもチケットを手売りできる人に来てほしいですよ。
ところで、日本のプロバスケの選手で知っている人っていますか?いないでしょう。もっと認知を広げないと、ファンもお金を使ってくれませんよね。あれほどワールドカップで盛り上がったサッカーだって、Jリーグの試合で満員にはならない。バスケの集客力はそれに遠く及ばないですから。『SLAM DUNK』の映画はあれほどヒットしてるのに、なんでプロバスケの試合は観に来てくれないんだろう。これをどう打開したらいいか、日々頭を悩ませている現場の人間は「バスケに恩返ししたい」なんて考えてる余裕ないです。それよりお金を出してくれたスポンサーさんに恩返ししなきゃって(笑)。
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