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ディナーショーのキャスティングが保守的になる理由

ホテルのディナーショーのタレントキャスティングのお問合せが増えてきました。ようやくコロナも明けて日常が戻ってきたようで、呼び屋としては嬉しいかぎり。ところで、ホテルであろうと他のイベントであろうと、私の仕事はタレントを呼んでくることに変わりはありません。ですが、ホテルは苦労するポイントがやや独特です。
今回は愚痴っぽくならないように注意しつつ、そんな話を。

M-1優勝コンビにあやかって「あるなしクイズ」ふうに説明しましょうか。普通のイベントにあってホテルのディナーショーにないものといえば、「責任者クラスの芸能知識」ではないでしょうか。ホテルで意思決定権を持つ方々は、「ヒットしている曲」や「売れているタレント」についてあまりご存じではありません。「知る人ぞ知る」アーチストは間違いなく知りません。そして「自分が知らない」という理由で、こちらの提案をいとも簡単にボツにしてしまう。そうして最後は責任者の方の趣味にあわせた人選か「過去に呼んだ人」になってしまう。そういうことが結構多いんです。

先日も、某ホテルのディナーショーのキャスティング提案でボツを食らいました。このホテルのショーは、いつもは名の知れた(そしてちょっと懐かしい)歌手を呼ぶのが通例です。ところが今回は「たまには目先を変えてみようかな」という意向を企画担当者さんからうかがい、人気急上昇中の楽器演奏家を提案したのです。一般的な知名度はまだまだですが、そこそこ女性誌での露出もあり、ショーのターゲットである40~50代女性にぴったり。しかも「これから積極的に売り込みたい」ということで、事務所から格安での出演OKの内諾ももらっていたのです。その演奏家が取り上げられた雑誌も添えてプレゼンし、担当者さんからは「いいですね!」の反応でしたが、あえなく撃沈。

ホテル側の理屈も分からなくはありません。通常のコンサートやイベントと違い、ディナーショーのチケットの大部分はホテルの営業マンが得意先に売ります。だから、一般的に知られていないタレントだと営業から反発を食らうというわけです。売れなかったら自腹、などということもありますから、それはそれで分かります。が、だったら企画担当さんも「たまには目先を変えてみようかな」なんて言わないでくださいよ。

チケットを売る営業の事情を頭に入れ、新しい路線を試みたい企画担当者の気持ちを考慮し、最終的に決裁を下す責任者の好みを探る・・・。
こういう仕事の一番危険なところは、いつの間にかショーを見る「お客様」の存在を忘れてしまうことです。自信のあった提案を跳ね返されるたび、呼び屋としてできることは何なのかと考え込んでしまいます。

あ、やっぱり愚痴っぽくなってしまいました。


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