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京都の養蜂家が憂う農業の未来

先日、ある方の紹介で京都の上賀茂で養蜂をしている株式会社ORG(オルグ)/京都農販の木村ご夫妻を訪ねてきました。京都で養蜂をしているなんて珍しいな…最初はそのくらいの軽い気持ちで見学の申し込みをしたのですが(木村さん、すみません…)お話を聞いていく中でもっと深く奥行きのある社会課題に農環境デザイナーとして取り組まれているとのことで、養蜂をするに至った経緯や日本の農業が抱える課題やそこに対する取り組みなどをお伺いしました。

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ORG木村さん:以下 K
KyotoCraftMarket稲葉:以下 I

K:現在京都農販としては農家さんに対して
技術指導をして作ってもらい収量をあげてもらって、うちの肥料を買ってもらうという関係性でやってます。

I:ノウハウをお伝えして肥料を買ってもらうわけですね。

K:そうです。結局は肥料は調味料と一緒で、何も考えんと放り込んだら美味しくなくなるのと一緒で肥料も科学的根拠に基づいて適切な分量を与えることが大切なんです。そこの技術とあとは上物の技術ですよね。どのタイミングで剪定して、どのタイミングで花を咲かせて、どのタイミングで肥料を効かせたら花に実がいくのかとか…かなり奥が深くて。ヨーロッパでは「葉っぱひとつ掻くのにコンサルがいる」と言われるくらい。そういうものなんですよ、農業って。
でも日本って情報に対する価値ってものすごく低いんですよね。業者が農家に教えるなんて…って時代を経て少しずつ時代は変わってきましたけどね。最近では新規就農者も増えてきていて教えて欲しいという要望も増えてきて、もともと農家をずっとやってきた方々はもう高齢になっていますが「もっとよくなりたいし教えてくれ」って方も増えてきている。
そんなことで今では巡回指導をしたり勉強会をしながら全国を回っています。
で、日本の土壌の問題点ってのがだんだん見えてきて、結局は産業廃棄物が肥料になるんです。家畜の糞とか生ゴミとかが見栄えのいい袋に入って大きな商社さんとかJAさんとかから販売されると。それが何を意味するかっていうと何も考えずにそういうカロリーの高いものにどんどん土が侵されていくから「土壌がメタボリックになっていく」んですよ。

I:土壌がメタボリックってすごいですね…

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右から木村淳一さん、奥様の順子さん、KCMの稲葉、商品開発の橋田

K:日本の土壌ってダメダメになっていったんですよ。だから農薬の使用が増えていったんですよ。その影響でミツバチが減ったりとか。結局農薬を使い倒すから土壌環境が荒れていくんですよね。それでF1品種入ってきても止められない、それは技術がないから。新しい技術に頼らざるを得ない、ケミカルなものに頼らざるを得ない。そうやってどんどん負の連鎖に陥っているなってことに気づいたわけです。

※ちなみにF1品種の安全性やミツバチの減少と農薬使用の因果関係は諸説あり必ずしもどちらかのスタンスをとっているわけではありません。

でも、農家さんってこれまで勉強する機会が少なかったんですね、組合とか大きな団体とかに依存してものを下ろさないといけないから…出るくいは打たれるんです。

I:もう構造的な問題がそこにはあるわけですね。

K:もうピラミッドだから農家として生まれてから死ぬまで同じところ組織に依存していかねばならないという構造になっていて、今だに30〜40年前の論文ベースの科学的知見で現場は回っているんですよ。
僕らはそれじゃ解決できないことだらけだから一番先頭を追いかけていて、今やっと研究所や京大発のベンチャー企業と組んで改革を進めていこうということになってきているんですけどね。
とにかく、環境が悪くなってきていて、いい土を作ると言っても実際農家さんで「いい土って何か」をきちんと具体的に語れる人って少ないと思うんですよ。
でもいい土って作れるんです。
これとこれをこの分量で入れたらって。まぁその土地その土地に合わせて分量を変えていかないといけないですけども。うちは「肥料」という処方箋を使いながら農環境を浄化するということをしています。ひとつひとつの畑をきちんと浄化するということを続けていけばそこには農作物が茂るってことなんでCO2が削減するわけです。これが掛け算で広がっていけばもっともっと世の中変わっていくだろうなって。株式会社ORGの方では現場の点での活動よりも少し広い視点から活動を広めていきたいなと考えています。
海外含めてトータルで広がっていけばいいかなと思っています。

K:今から行く現場はもともと「すぐき」を作っていてやめてしまった耕作放棄地で、そこを借りてミツバチの巣箱をおいて周りの畑にうちのノウハウを使って土づくりをして良い蜜源になる植物を植えているんです。っていう環境づくりをするプロジェクトをしているんです。
そして実際採れた蜂蜜は他には負けない味わいになったんですね。
その要因としては養蜂は通常農業大産地で行われることが多いんですがそういうところでは単一植物でアブラナ科が多くそういった環境で採れる蜂蜜は糖分や酵素の構成割合などが低いんですね。一方京都は農業産地ではないので山の多様な植物からミツバチが必死で集めてくるんですね。蜜を。効率が悪い分採蜜量は少ないんだけど味がめちゃ濃い。そこは付加価値を感じてもらって販売していこうかなと。

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↑巣蜜をその場でカットし食す

I:植物の多様性が生み出す違いなんですか??

K:そうですね。多様性があってその比率によって香りが変わるし糖分の構成割合が全然違うんですよ。農業生産地と山では。育っている植物の持つ蜜が違うし、さらにそばで育てている健全な土で育った植物からもいい蜜ができますしね。
そしてこの近隣の農家さんに栽培指導をして土壌が良くなっていけば自ずと美味しい蜜が採れるようになるわけですよね。そこも積極的にやっていきたいなと思ってます。ここまで養蜂に関しては2年くらいですかね。
すでに有名ホテルさんにも使っていただいてます。

I:なるほど…。当社のオンラインショップはストーリーを伝えるってことが重要だと考えているんですね。そしてそうしたいわば顔の見えるものに囲まれた暮らしが「豊かな暮らし」なんじゃないかと。こうした商品に対するストーリーテリングには力を入れているんですか?土から作ってますもんね。

K:そうですね。ストーリーはあるますよね。環境デザイナーが作ってんるんだーみたいなね。
もっともっとやってかないといけないですよねぇ。最終的に僕がやりたいことは農環境デザイナーの方なんでもっと産地に行ったりだとか、勉強会をして土を浄化するノウハウを広げたりだとかをやっていってその過程で蜂蜜づくりもしていけたらと思ってます。

I:JAとかとはどう絡んでいるんですか??

K:都道府県によっては僕らがブレーンとなって組んでやっていたりしてますが本当に既得権益が強い県もありますし難しいところもあります。でも時代は変わってきていますし今はだいぶやりやすくなっていますよ。
全国規模で見たら同じような動きや想いをもった人たちが増えてきているので横のつながりは増えてきていますよね。

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↑典型的な防具をそーちゃくっ!!
これに分厚い手袋を。
「余計なことをしなければ刺されないから」と言われながらもびびる…。

K:とにかく目の前のことからやっていこうということで近くの耕作放棄地を使うとこらから始めています。そして技術指導というところでお声がけいただいているので全国の有志の方ともつながりプロジェクトが始動し始めてますかね。僕ら一次産業も始めたんでまずはモデルを自ら作るとこからです。
蜂蜜はこれ自体でひとを健康にしてくれますから。土地をよくすればできるものもよくなり、それを食べたひとも健康になるし、健全な身体には健全な精神が宿るし、健全な人間が増えれば良い行いをする人も増えるし、そういう循環になればいい社会になるんじゃないかなと考えてます。やっていかなあかんなーって…

I:いや、本当そうですよね。すばらしいですね。ありがとうございます。


旧態依然とした体制が残る農業界の中でこれからの農家の生きる道を模索しさらにより良い社会や暮らしを「土づくり」を通して実現したいという熱い思いが伝わるお話でした。

そして何より巣箱から取れた巣蜜がほんっとに美味しかったっ!!
思わず口からこぼれた感想
「幸せの味がします…🌼」

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KyotoCraftMarketでもこの京百花の蜂蜜を使った商品開発を考えています。
こうしたストーリーや想いののった商品をこれからもどんどん紹介していきたいと考えております。

お楽しみにっ!!







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