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記憶を辿る38

『 甘え上手 』

日々運ぶスレートは1束が30kg、大型梯子は40kg。
メーカーから届いた雨樋の何本かを1束にした箱を肩に担いで納品する。
いづれも角が立っていて、肩や腹部に突き刺さるような痛みがあるのだが、半年もすれば慣れてきて2束3束を抱えて運べるようになる。会社の先輩は忙しさの余り、一気に5束を運ぶつわものがおられ、よくおちょくられた。

「 真平、お前まだ2束しか持てへんのけ 」

といった具合だ。こうなると負けじと多くを持とうと頑張る。
見る見るうちに腕や体は大きくなっていくのだが、無理が祟ってギックリを何度やった事か。このギックリ癖がついて以降、腰痛持ちになってしまい、百貨店での販売業務は近年まで相当に辛い日々だったが、現在では魔法の”腰痛施術師 TAHARA”がついてくれたおかげで、嘘のように腰痛は無くなった。

当時、父親も山城でバリバリだった頃。
悪道を突っ走っていた時でも月一は事務所に呼び出され説かれていた。

「 素直が1番や。何でもハイっ!ハイっ!で下っ端らしくや 」
「 すべてに”何で?”という疑問を持つようにしろ 」
「 分からん事に知ったかぶりはすんな 」

こういった事が相当に蓄積されていたのもあり、会社で最年少だった私は、いつも真平真平と顎で使ってパシらされ、時には怒られ、話を聞いてもらったりと本当に可愛がっていただいた。

私が先輩達の話を素直に聞けたことには、もう一つの理由がある。
それは若かりし頃、悪に覚えがある、いやそれ以上の方ばかりだったからだ。


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