洋酒コレクターが終活してわかったこと①
コレクターというものは何の因果なのだろうか。なにかしらのモノを大量に集めてしまうなんて。
本人にとって、コレクションは宝の山。しかし他の家族や同居人は必ずしも同じ趣味や価値観を持っているとは限らない。多くの場合はその逆だ。その場合悲しいかな、素晴らしいコレクションも全く価値のない、ただの「ゴミ溜め」となってしまう。
そしてコレクターもやがて歳をとる。いつかは死を迎える。
今も昔も死者は手ぶらである。金持ちも貧乏人も徹底平等主義、ワイロも通用しない。コレクションは全てこの世に置いていかねばならない。
死を意識した時、コレクターの多くは、はたと「私が死んだら私の命の次に大事な○○はどうなるのだろう?」と気づく。当然であろう。
いつもなら「いやいや、まだまだ先!」と強制的に意識外に飛ばしてしまうだろうが、いまどきの新型コロナのような、死が誰の身近にも感じられるご時世ならそうはいかない。面と向かって考えると、これはこれで悩ましいことである。
私は洋酒コレクターなので、同胞の諸先輩方によくお会いするが、コレクションの終活を始める先輩は、身近には意外とおられなかった。
皆、自分はまだまだ先と思っていらっしゃるのか。老いてなお物欲は燃え盛るのか。
そういえば「(年上コレクターは)もうたくさん持ってるじゃないですか。僕が買うから残しといてくださいよ、って言ったら、ワシの方が年上で先に死ぬから早く買っとくんじゃ、だって!」ってのも聞いたことあるなぁ。
そんなコレクターがお亡くなりになった時、コレクションはどうなるのか。人づてにいろいろ聞こえてくる話をまとめてみた。
1. 業者に売却する
一番よく聞くのは、残されたご家族がコレクションに全く興味がなく、またはむしろ鬱陶しく思っていて、古物商やお酒買取○○に二束三文で売り払った、という話だ。コレクター本人にはトホホな話だがこれが現実だ。まだ今ほどたくさんのお酒買取業者がなかった時代からちらほら聞いていたので、一番古典的で一般的なのだろう。
2. 遺品整理業者に依頼する
例えばコレクターがお一人でお住まいでお亡くなりになった時、離れて住むご家族が1軒丸ごと遺品整理業者に処分させるという場合である。裏ではお酒買取業者に流れているのだろうが、そこにはコレクターが注いだ情愛に対する尊敬は全くない。仕方ないことだが寂しい限りである。
3. 縁のあるコレクターが譲り受ける
うまくいけば一番理想的だと思う。コレクター同士だから値打ちもわかるし、情愛に対する尊敬も分かり合える。コレクションも一番生かされるだろう。ただ有名なコレクターの遺品を複数のコレクターがハイエナのように群がり奪い合ったとか、嫌な話を耳にしたこともある。よほどきちんと遺言しておかないと、かえって揉め事の種をつくってしまいそう。
こんな時「怖いのは幽霊よりも生きた人」というのをつくづく実感する。
じゃ、自分のコレクションはどうしよう?
少し長くなりそうなので、続きは次回に。
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